2016年に入り頻繁に耳にするようになった「デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation」という言葉をご存知でしょうか?あまり馴染みのない言葉かもしれませんが既にバズワードになりつつあり、今後全ての企業や組織にとって課題となる概念です。
今回はそんなデジタルトランスフォーメーションについて解説していきます。
また、現在Webマーケティングの展開が課題とされている企業にとっては非常に重要なワードとなるので、これを機に理解を深めて頂ければと思います。
デジタルトランスフォーメーションの定義
20年程前の時代に比べると、人々の周囲を取り巻く環境は劇的に変化しています。特にインターネットやPCの普及、スマートフォンやタブレットの登場によりデジタル機器やそれに伴ったサービス展開が著しく成長していますね。
各企業のシステム環境においても「メインフレームと端末」から「クライアント/サーバシステム」への変革がもたらした影響は絶大です。
そして現在、ユーザーや企業を取り巻くデジタル環境はさらなるステージへの発展が求められており、その発展こそが「デジタルトランスフォーメーション」というビジネス概念です。
デジタルへの変革
「デジタルトランスフォーメーション」という言葉をそのまま日本語にすれば「デジタルへの変革」です。
では一体何を“変革”するのか?
それは、ビジネスモデルやビジネスプロセスであったり、または各企業が提供するサービスや製品などビジネスに関わる全てに対する変革です。
なぜデジタルフォーメーションが求められているのか
デジタルトランスフォーメーションが求めらている理由としての割合を多く占めているのが、デジタル化されたユーザーの購買行動です。
十数年前まで主流であったマスマーケティング時代では、テレビCM・新聞広告・雑誌などの媒体を介して得た情報をもとに実店舗へ足を運び、サービスを利用したり商品を購入していました。
これがインターネットとPCの普及により「ユーザー自ら情報を取りにく時代」となり、購買行動は徐々にオンライン化していきましたね。このような背景から今ではインバウンドマーケティングが主流になってきました。
しかしここで浮上するのが「ユーザーの購買行動のオンライン化への対応なら、コーポレートサイト・Webサイトの運営などで既に完了しているはず」という一つの疑問です。
確かに、最近では多くの企業で自社ブログといったオウンドメディアや、ECサイトなどの運営によりオンライン化した購買行動に対応しています。それなのになぜ、デジタルトランスフォーメーションという概念が今になって提唱されているのか?と疑問になるのも当然ですね
この疑問に答えるのが、時代と共に変化した企業とユーザーとの関係性です。
ユーザーとのコミュニケーションが企業成長を支える時代
現代ビジネスにおけるマーケティングは広報・宣伝用のような「購入までの施策」だけではなく、ユーザーとのコミュニケーションを重視した「購入後の施策」までを考えなければなりなりません。
これはユーザー自身が利用するサービス・製品に対する信頼性を重視していて、企業とのコミュニケーションを求めているからに他なりません。
この点に関して、マーケターの皆さんは「ユーザーとどのようにしてコミュニケーションを取っていくか?」を日々熟考しているかと思います。
つまり時代と共に変化したのはユーザーの購買行動だけではなく、企業とユーザーの関係性も変化したということです。
そしてこの変化に対応すべく重要視されているのが、デジタルトランスフォーメーションなのです。
重要度高まる第3のプラットフォーム
デジタルトランスフォーメーションへの対応が迫られると同時に、重要度が高まりつつあるのが“第3のプラットフォーム”です。
第3のプラットフォームとは米調査会社であるIDCが提唱するICT(※1)時代を支える新しいビジネス基盤であり、モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4つの要素で構成されています。また、これと類似した概念に同じく米調査会社であるガートナーが提唱する「Nexus of Forces」とIBMが提唱する「SMAC」が存在しますが、いずれも上記4つの要素を重要視した概念です。
日々ビジネスに身を置いている方であれば、これら4つの要素の活用が今後いかに重要であるかを直感的に感じているのではないかと思います。
ちなみに第1のプラットフォームは「メインフレームと端末」、そして第2のプラットフォームは「クライアント/サーバシステム」です。
※1:ICTとは「Informaition and Communication Technology」の略語であり、従来一般的とされていたIT(Information Technology)に「Communication」が追加された先進的なデジタル概念です。
モバイル
モバイルとは当然スマートフォンのことであり、2015年までのデータでは世界19億1,460万人に利用されています。国内での普及率は全体で39%、年代別で見ると20~30代では82~94%と非常に高い数字をマークしています。全体に関しては体感的にもっと多いように感じますが、約2人に1人が使用していることを考えれば高い普及率だと言えますね。
しかし普及率よりも重要なのが、スマートフォンの使用率です。
インターネット調査会社のニールセンによると、ユーザー数が500万人を超えるWebサイト数はPCが42サイトであるのに対し、スマートフォンでは104サイトと2.5倍にも跳ね上がります。また、昨年は検索サービスYahoo!の流入数においてスマートフォンがPCを上回りました。
このように、スマートフォンの普及率ばかりか使用率も徐々に上昇しており、マーケティングを展開するにおいてモバイルを意識した展開は無視できない存在なのです。
ソーシャル
2004年にはFacebook、2006年にはTwitterのサービス提供が開始され、2016年現在においてはFacebookが世界16億人(国内2,400万人)、Twitterが世界3億人(3,500万人)と巨大プラットフォームへと成長しています。ちなみにSNS人口全体で言えば世界21億人と、世界の約3人に1人が利用しています。
近年企業によるソーシャルメディア運用を頻繁に目にしますが、今やユーザーとのコミュニケーションを図る上では欠かせない施策の一つですね。
また、マーケティングの観点から見てもFacebook広告やTwitter広告など、ソーシャルメディアが提供する広告配信プラットフォームを活用している企業も多いと思います。
ビッグデータ
2014~2015年のバズワードとなり、多くのメディアでも取り上げられたことで一般にも広く浸透したのがビッグデータです。
「企業内外で日々蓄積されていく、膨大かつ事業に役立つ知見を導き出すデータ群」という定義があるように、ビッグデータを活用したサービス・テクノロジー・ソリューションが徐々に提供され始めています。
その中でも特に注目を集めているのが「全てのモノとインターネットを繋げて、ユーザーの利便性を高めよう」といった概念であるIoT(Internet of Things)ですね。
スペインのバルセロナ市が様々な取り組みによりIoT先進都市と言われているように、企業だけでなく自治体における注目度も徐々に高まっています。
そんなIoTを支えるビッグデータは、現在各企業で「どのようにして取り組んでいくか?」が試されているものでもあります。
クラウド
クラウドとは「ユーザーの手元にはシステム環境の一切を置かず、インターネットを経由してサービスを提供する」といったビジネスモデルです。オンラインストレージなどが代表的であり、現在様々なシステムやサービスがクラウドによって提供されています。
そしてクラウドは既に現代ビジネスを支える大きな基盤として成長していますね。
デジタルトランスフォーメーションは、これら4つの要素で構成された「第3のプラットフォーム」への対応が重要視されています。
もちろん、皆さんも「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」「クラウド」の重要性は既に実感していることかと思いますが、国内では対応に遅れが発生しているのが実情です。
理由としてはそれぞれの要素への理解が未だ足りていないということなので、まずは4つの概要を深く理解することが重要となるでしょう。
まとめ
今回デジタルトランスフォーメーションについて解説しましたが、今後企業が取るべき行動とは何か?それはデジタライズされている時代において、自社の存在意義やビジネスモデルを変革していく中で適切なソリューションを取捨選択していくことではないでしょうか。
近年様々なサービスがリリースされていく中で、流行りに乗ったソリューション導入だけでは現代ビジネスの変化に付いていくことはできません。
大切なのは「今後どのようにして存続・成長してくか?」を考え、スピーディーかつ正しい変革を起こしていくことです。
そしてこの変革をもたらすために、デジタルトランスフォーメーションという概念を意識することが欠かせません。
「変化への対応が完了したらまた次の変化が求められる」といったように、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変わっていきますが、この変化に対応することこそが10年後も100年後も生き残る企業へと成長していきます。
今回の解説で皆さんがデジタルトランスフォーメーションへの理解を深め、今後の企業戦略やマーケティングを考える上での参考になれば幸いです。