近年、国内産業では国を挙げてDXの実現が推進されていて、製造業もデジタル技術の活用による経営改革が求められています。しかし、推進されているものの、国内の製造業はデジタル化が遅れており、コーポレートサイトさえ所有していない企業もまだまだ見られます。そこで本記事では、デジタル化の第一歩となるWebサイト制作において、一般的な流れから製造業だからこそ意識すべきポイントまでを解説します。
製造業におけるWebサイトの重要性
ドイツ政府主導のもとで、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などによる、「第4次産業革命」という意味を持つ「インダストリー4.0」が提唱され、現在の製造業は大きな転換期を迎えています。このような背景の中で、製造業が新たな市場価値を創出していくためには、国が推奨しているとおりデジタル技術の活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が不可欠です。中小企業を含めてDXの波に乗らなければ、ビジネスで不利になる状況となっています。
ただ、いきなりDXを求められても対応できない企業が多いのは当然のことです。今までデジタル化を進めてこなかった状況において、いきなりDXにチャレンジするのは現実的ではありません。
しかし、今や当たり前となっているコーポレートサイトの構築ならば、比較的低いハードルでチャレンジできます。「製造業にデジタル化は関係ない」などと考えず、デジタル化を進める第一歩としてWebサイトの構築を検討していきましょう。
一般的なWebサイト制作の流れ
デジタル化が遅れているとされる製造業ですが、近年ではWebサイトの重要性が認識されつつあり、コーポレートサイトを構築する企業が増加傾向にあります。しかし、中には「Webサイト制作を依頼したいが、何から始めればよいのかわからない」という企業も多いようです。そこで、コーポレートサイトの構築を検討している企業のために、まずはWebサイト制作における、基本的な流れについて解説していきます。
企画・設計
Webサイトの作成を制作会社に依頼する場合、まずは「企画・設計」から始まります。企画・設計は、製作会社との綿密な打ち合わせによって、Webサイトの要件を定義する作業です。具体的には、コンセプトの明確化やスケジュールの調整、デザインや配色の方向性、ページ数やメインキーワードの設定、ワイヤーフレームやサイトマップの作成など、Webサイトの構造やプロジェクトの流れを明確に定義することを指します。企画・設計は、最初のステップであると同時に、プロジェクトの方向性を左右するステップでもあるため、時間をかけてでも丁寧に対応するようにしましょう。
自社の求めるWebサイトを構築するためには、制作会社に対して、具体的な要件や要求を的確に伝えなくてはなりません。そのため、この企画・設計のフェーズで発注者は仕様書を作成し、製作会社に提出する必要があります。仕様書とは「Webサイト制作におけるプロジェクトの要点や詳細」を記した資料です。Webサイトのコンセプトやペルソナ、全体の構成、デザインの方向性などを整理して資料に落とし込み、情報の整理整頓とイメージの認識・共有をします。
仕様書の作成は、頭の中に思い描く抽象的なWebサイトのイメージを、具体的な言葉や数値、またはビジュアルに置き換える必要があり、簡単な作業ではありません。しかし、仕様書が曖昧では製作会社との意思疎通にズレが生じるため、できるだけ厳密に作成する必要があります。
仕様書の内容にヌケモレがあり、手戻りが発生すれば納期の遅れを招き、追加料金が発生する可能性も否定できません。このような事態を防ぐためにも、製作会社との綿密な打ち合わせを繰り返し、仕様書の作成やスケジュール管理といった企画・設計を進めていくことが重要です。
制作
企画・設計のフェーズでスケジュールや要件定義が定まれば、Webサイトの制作に移行します。制作フェーズの第一ステップは、Webデザイナーによるデザインの作成です。
これは、企画・設計の段階で作成された仕様書の定義に沿って、PhotoshopやIllustratorなどのデザインを作成するソフトウェアを用いて、Webサイトのデザインを作成する作業が該当します。製作会社によって方向性は異なりますが、この段階でトップページと下層ページのデザインを作成するのが一般的です。そして、デザインの完成後は、コーダーがHTMLとCSSを用いてコーディング作業に入り、その後にテスト環境で要件に応じて、各種確認を実施します。
なお、このコーディング作業に入るまでに、WordPressのようなCMSで作成するのか、それともHTMLとCSSによる手打ちで構築するのか、といった点を明確化しておく必要があります。また、WordPressで作成するのであれば、テンプレートを利用するのか、それともゼロからデザインを描き起こすのかなども検討しなければなりません。決定内容によってWebサイトを作成する期間や費用が大きく変化してしまいます。
なお、これらは仕様書を作成する時点で、明確に定義しておくべき内容で、あらかじめ製作会社に伝えておくようにします。後から条件を追加するとトラブルに発展する原因となるため、要望は最初にすべて伝えるようにしましょう。
公開・運用
制作が完了すれば、ブラウザチェックや原稿の校正、リンク先への遷移などの各種項目を仕様書に基づいてテストをします。そして、問題がなければWebサーバーにHTMLファイルなどをアップロードします。
発注者は制作会社にすべてを任せるのではなく、各種チェック作業を担当しなければなりません。アップロード前に各種項目をチェックするのはもちろん、公開後に要件を満たしているかどうかも確認していきます。たとえば、SNSとの連携やアクセス解析が正常に機能しているかなど、公開後でなければ把握できない項目は公開後にチェックを行います。
また、公開後の運用に関しても、仕様書を作成する時点で定義しておくようにしましょう。Webサイトを自社で運用する場合は、Webサーバーとドメインの管理が必須であり、それらに関する知見を備えた人材が必須です。製作会社に保守・管理を依頼する場合は、後々のトラブルを避けるためにも、月々の管理費用やドメインの所有権、セキュリティインシデント発生時における責任の所在などを明確化しておきましょう。
製造業のWebサイトに必要な4つのコンテンツ
Webサイトには、ECサイトやリクルートサイト、ランディングページやプロモーションサイトなど、さまざまな形態があり、それによって必要なコンテンツが異なります。製造業を営む企業がコーポレートサイトを構築する場合、必須となるのは「企業情報」「製品情報」「導入・製造事例」「お問い合わせフォーム」の4つです。
企業情報
企業情報はコーポレートサイトを構築する上で、欠かせないコンテンツです。コーポレートサイトの役割は、企業理念や経営ビジョンを伝えることや自社製品の認知度を高めることで、ステークホルダー(利害関係者)との接点を強化することであるため、企業情報は必須といえます。
事業内容や資本状況、企業理念、代表挨拶、所在地や代表者名といった企業情報は、ユーザーが企業の信頼性を推測する上で、最も重要な情報です。掲載の仕方によって信頼度が大きく左右されるため、可能な限り詳細かつオープンに掲載するべきコンテンツといえます。
製品情報
Webサイトにはさまざまな形態があり、それによって役割や目的が異なります。しかし、製造業におけるWebサイトの本質的な存在意義は、「自社製品の認知度向上や技術への興味、販促機会の最大化などです。製造業といっても、さまざまな業種や企業があり、どんな製品を扱っているのかを明確化することは、企業情報と同様に重要といえるでしょう。
単に製品のカタログスペックだけを掲載してもWebサイトとして成り立ちます。ただ、それだけではWebサイトの効果を活かせているとは言い切れません。自社製品ならではの具体的な効果やメリットまでを伝えるのが理想的です。また、Webサイト上で製造工程や生産設備を体験できる「バーチャル工場見学」など、工場の状況や技術を閲覧する機会などを取り入れている企業も存在しています。
導入・製造事例
製造業のWebサイトにおいて、導入・製造事例の掲載は企業の高い技術と深い知識を裏付ける実績です。具体的な製造工程や生産設備などが掲載されていれば、強いセールスポイントになり、依頼を検討しているユーザーにとって、プラスの参考材料になります。
反対に、導入・製造事例が乏しければ、ユーザーは企業の専門性や独自性を把握できません。競合他社にはない自社の強みをアピールするためにも、導入・製造事例は必須コンテンツだと考えましょう。可能な限り他社と差別化できる部分を明確にできるコンテンツを作成します。
加えて、お客様の声や取引先へのインタビュー記事などを写真付きで掲載できると理想的です。これら「生の声」は製品を購入するかどうか検討している人に大きな影響を与えます。
お問い合わせフォーム
Webサイトを運営する上で、販促機会の最大化は非常に重要な要素であり、「いかにして顧客接点を強化するか」を考えることが重要です。そのように考えると、問い合わせフォームの設置は、顧客接点を生み出し、販促機会の最大化につながります。お問い合わせフォームは企業と顧客をつなぐ架け橋となるため、必ず設置すべきコンテンツに該当します。
また、問い合わせフォームの効果を最大化するためにも、グローバルメニューやフッターメニュー、サイドバーなど、ユーザーの目を引くスペースにリンクを設置することが重要です。また、視認性に優れるデザインを心がけ、自然とクリックしたくなるような状況を生み出しましょう。
製造業のWebサイトを作成する4つのポイント
製造業でWebサイトを作成するにあたって、ポイントは4つあります。それぞれについて以下ではご説明します。
高品質な画像の採用
製造業のWebサイトは「質の高い製品を提供できること」を伝えなければなりません。多くの人はWebサイト経由で「高い品質が期待できるかどうか」を感じ取ります。
この「高い品質」と言うイメージを左右するのが、高品質な画像です。Webサイトのポイントポイントに高品質な画像を採用すると、それだけで「美しい」「品質が高い」とのイメージを与えられるのです。
ただ、製品に関係のない写真を採用しても意味はありません。自社の製品や技術を高品質に伝えられるようにしましょう。
理解しやすいページ階層
多くの製品を製造していると、Webサイトに掲載する情報が多くなりがちです。大量の情報を階層化してうまく伝えなければ、情報過多によりページからの離脱を招きかねません。
ポイントになるのは、1ページにまとめるのではなく階層化することです。階層が多すぎるとユーザビリティが下がってしまうため、1ページあたりの情報量と利便性を両面から評価して決定する方法をおすすめします。
関連コンテンツの充実
製造業は製品や技術などの商材があるため、Webサイトではこれらをアピールします。この方針はなんら間違いではないものの、これだけではコンテンツに偏りがあります。ユーザが知りたい最低限度の情報は手に入りますが、プラスアルファの情報はありません。
ユーザの満足度を高めるためには、さらなるコンテンツの充実がポイントです。例えば、写真と文字だけで説明されている部分を動画にしてみると良いでしょう。情報に連続性が生まれるため、理解しやすくなり満足度の向上につながる可能性があります。
ユーザーに行動を促すメッセージ
ユーザーは後押しされることで行動を起こしやすくなります。そのため、Webサイトにはユーザーがやるべき行動を記載してみましょう。
例えば、商品の購入を促すならば「購入はこちら」「いますぐ購入」などのメッセージが有効です。これらを明記することで、ユーザーが「今何をするべきか」を自然と考えてくれます。
また、資料請求などを促すならば「ダウンロード」「お問い合わせ」などが有効です。まずはユーザーに行動してもらい、そこからアクションしていくのです。
サイト運営を成功に導く「SAP Commerce Cloud」
Webサイトをマーケティング戦略に取り入れようと検討している企業は、「SAP Commerce Cloud」の導入をおすすめします。「SAP Commerce Cloud」は、ERP分野のリーディングカンパニーであるSAP社が開発・販売を手掛ける、eコマースプラットフォームです。デバイス問わず質の高いUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供し、顧客満足度やコンバージョン率の向上、在庫の最適化などに貢献します。
加えて、オムニチャネルの構築や顧客サポートにも対応可能なため、販売経路の最適化に寄与するソリューションです。「SAP Commerce Cloud」について、詳しい情報を知りたい方は下記URLを参考にしてみてください。
まとめ
Webサイトは、企業にとって「インターネット上の名刺」ともいえる存在です。今の時代、ステークホルダーとの接点を強化するために、なくてはならないメディアといえます。
しかし、製造業にはコーポレートサイトさえ所有していない企業は非常に多く、国内の製造業はデジタル化が遅れているという現状です。デジタル化が加速する現代市場で、製造業が生き残っていくために、Webサイトを活用したマーケティング戦略は必須の施策といえるでしょう。ぜひ、本記事を参考にして、Webサイトの構築に役立ててください。