感染症の影響もあり、顧客の購買行動は近年ますますオンラインへ移行しています。こうした顧客ニーズに合わせてECサイトの強化を図ることが、企業価値向上の大きなポイントになります。本記事では、国内で大きなシェアを獲得している5つのECサイト(モール)を例に、成功につながるECサイト戦略について解説します。
国内大手ECサイトトップ5
まずは、国内で多数のユーザーを獲得しているECサイト(モール)を5つご紹介します。
1. 楽天
国内で圧倒的な知名度を誇り、2021年現在で約5.5万店舗が出店しているのが「楽天市場」です。楽天市場をはじめ楽天カード・楽天トラベル・楽天証券・楽天モバイル・楽天西友ネットスーパーなど、「楽天経済圏」で使える「楽天ポイント」が最大の強みといえるでしょう。
また楽天市場では、店舗・ユーザー双方の声を聞きながら店舗の多様性を損なわないレベルで、ある程度の統一性を持たせることによって、ユーザーが不便なく買い物を楽しめるプラットフォームとしての価値を提供しています。
2. Amazon
世界的な知名度がある「Amazon」は、大規模な物流システムを自社で抱えていることが最大の強みです。それにより、商品・エリアによっては注文当日に届くシステムを実現しました。テクノロジーを目的ではなく手段として使い、「ユーザーが何を求めているか」を分析し、その結果を行動まで落とし込むのは、大企業でなくても行えるECサイト運営のポイントといえます。
2021年11月には、ECサイト上に「JAPAN STORE」という日本製品の特集ページもオープンされる予定です。日本ならではの食品やファッション、伝統工芸品などを扱う企業にとっては、Amazonに出店するメリットになるでしょう。
3. Yahoo!ショッピング
楽天市場とAmazonの2強に次ぐECモールが、「Yahoo!ショッピング」です。
ヤフーは2020年代の前半に首位をめざすと宣言しており、ヤマト運輸と連携を深めることで、「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」で購入された商品を、ほぼ全国で翌日配送できる体制を整えています。さらに、LINEを通してギフトを贈り合える「LINEギフト」との連携も開始し、2019年は「ZOZOTOWN」を運営する「ZOZO」を傘下に収め、さらなる販路拡大を図っています。
ヤフーとソフトバンクが出資するPayPayのサービスや、ヤフーのサービスから得られるビッグデータを活用し、顧客満足度向上につなげているのも強みのひとつです。
4. ZOZOTOWN
「ZOZOTOWN」は、アパレル専門のECモールです。上述の通り、2019年にZOZOはヤフーに買収されましたが、PayPay決済への対応やPayPayモールへの出店などを通し、新規顧客を増やしています。2021年前期は最高益を更新し、同年3月には化粧品ECモール、9月には靴専門のECモールも開設しました。
スマートフォンを足にかざすことで靴のリアルな疑似試着ができる、AR(拡張現実)を駆使したサービスも期間限定で提供しています。これが実用化すれば、今後のファッションECサイトにおいて大きな動きがあることでしょう。
5. au PAYマーケット
KDDIとauコマース&ライフが運営する「au PAYマーケット」は、auユーザーはもちろん、auユーザー以外にもオープンにしたECモールです。
「au経済圏」のサービスとして、「auでんき」「Ponta」なども連携しています。さらに、ライブコマース分野で強みがあるエブリー社との協力により、LIVE形式で商品を配信できるのも大きなポイントでしょう。
また、中国ユーザーに向けたショッピングアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」に同時登録できるのも特徴です。翻訳~顧客対応までの全工程をアウトソーシングできるため、簡単に後述する「越境EC」をスタートすることが可能です。
ECサイトを成功させる秘訣とは
続いては、ECサイトを成功させる秘訣についてご紹介します。
複数のモール展開
ECサイトの成功のポイントとしては、さまざまなユーザー層との接点を持つために、国内上位の楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonといった複数のモールに出店することがまず挙げられます。各モールはユーザー層が異なるので、「楽天市場では売れなかった商品が、Amazonでは売れ筋になっている」ということもあるでしょう。
なお、在庫管理・受注処理はモールごとに行うと非常に手間がかかるので、一元管理システムを導入するのがおすすめです。また、複数モールに出店すると、モールごとに初期費用・月額費用・決算手数料がかかるので、知名度を上げて安定的な運営をしながらユーザー層などを分析し、少しずつ出店先を増やしていくのもよいでしょう。
オムニチャネル戦略
「オムニチャネル戦略」とは、リアル店舗・ECサイト・SNS・アプリ・DMなど、あらゆる販売経路の統合により利便性を高め、顧客のエンゲージメント向上につなげる手法です。具体例としては、「ネットで買った商品を24時間以内に実店舗で受け取れるサービス」などのシームレスな買い物体験を提供することが挙げられます。
また、リアル店舗の商品バーコードを活用することも有効です。バーコードの読み取りからECサイトの商品紹介ページに誘導したり、読み込んだバーコードをWebサイトやアプリで欲しいものリストとして一覧化し、ネット上で購入できるようにしたりするなど、顧客の利便性を上げる取り組みが可能になるでしょう。
ECサイトアプリ化
スマートフォンが広く普及した今なら、開発コストはかかるものの、自社の公式アプリをリリースするのもひとつの手です。
ただし、そもそもアプリをダウンロードしてもらうことにハードルがあり、それをクリアしたとしても「ダウンロードしただけで、そのまま一度も使わない」「1回だけ使って終わり」というユーザーも少なくありません。それを防ぐためには、アプリの目的を明確にしたうえで、継続的に使ってもらうための戦略を立てることが重要です。たとえば、リアル店舗とECサイト共通のポイントカードとして使ってもらう方法が挙げられます。
また、タイムセールやクーポンの情報を、開封率の高いプッシュ通知でお知らせするのも有効です。ただし、プッシュ通知が邪魔だと感じられたら、通知をオフにされたり、アプリをアンインストールされたりする可能性が高まるので、通知のタイミング・頻度・対象ユーザー・タイトルをよく検討しましょう。
コンテンツマーケティング
SEOを意識したコンテンツマーケティングも大切です。コンテンツマーケティングとは、顧客に価値のあるコンテンツを提供することで、売上につなげる戦略です。
ただし、SEO対策により上位表示できたからといって、必ずしも売上につながるわけではありません。SEO対策をしただけの低品質なコンテンツを量産すると、かえって企業ブランドの低下につながります。顧客が求めている有益なコンテンツを分析・発信し、その結果をさらに分析して、精度を上げていきましょう。
コンテンツマーケティングはSNSと相性がよく、作成したコンテンツが良質であれば、SNSを通して幅広いユーザー層まで拡散されるため、自社の宣伝として非常に有効です。その反面、不適切な発信は簡単に炎上してしまい、自社のブランド価値を大きく損なうおそれがあります。特に、従来のジェンダー感に縛られた発信などは注意が必要です。過去の炎上案件を研究し、同じ轍を踏まないようにしてください。
越境ECによる海外展開
国境を越えてECサイトで商品を販売する戦略が「越境EC」です。コロナ禍で失われたインバウンド消費を補うために、ここ数年で日本においても越境ECサイトへの注目が集まっています。直近では、日本政府観光局(JNTO)が2021年9月、インフルエンサーによるバーチャルライブツアーとeコマースの連携により、ライブ配信画面から越境ECプラットフォームでお土産を買えるという観光プロモーションを実施し、話題となりました。
中国の大型ECモールである「天猫」「京東」や、成長が見込める東南アジアにおいて多数のユーザーを誇る「Shopee」など、越境ECに向いているモールは多数あります。たとえば抹茶味の焼き菓子など、日本ならではの特徴を活かした魅力的な製品を越境ECで販売すれば、海外ユーザーがスマートフォンなどで簡単に購入できるので、販路の拡大につながっていくでしょう。
無論、越境ECの実践に際しては言語の壁や決済方法など、課題も少なくありません。しかし近年では、それらを解決できる専門のサービスも増えてきているため、ぜひ活用してみてください。
優れたeコマースを提供する「SAP Customer Experience」
ここまで見てきたように、ECサイトは近年急速に成長し、企業の販路拡大に欠かせないものとなりつつあります。しかし、その運用にはコストがかかるため、スモールスタートで様子を見ながら、リソースを割くべきECモールを決めるのがよいでしょう。
また、ECサイトをカスタマーエクスペリエンス向上に直結させたい場合は、SAP社が提供する「SAP Customer Experience(SAP C/4 HANA)」の導入もおすすめです。これは顧客データを一元管理できるCRMサービスです。1つのプラットフォームで顧客の全体像を把握できるため、データ管理のコスト削減にもつながります。商品検索~販売までがスムーズになる「eコマースソリューション」も、さまざまな市場に対応した実績豊富なシステムです。
まとめ
近年、顧客の行動基盤が急速にオンラインへ移行しつつあるため、ECサイトを強化する重要性が増しています。楽天やAmazonなどの大手ECモールに複数出店することを検討し、それぞれのECサイトで顧客がスムーズに買い物を楽しめるよう、オムニチャネル戦略を取るのが有効でしょう。その際は、ECサイトをカスタマーエクスペリエンスの向上に直結させるために、SAP Customer Experience(SAP C/4 HANA)などのCRMシステムの導入もおすすめです。それと同時に、企業の公式SNSの運用やコンテンツマーケティング、アプリの開発などを進めると、より企業の価値向上につながります。