“営業力”とは、「売る力」や「自社製品・サービスを訴求する力」などと解釈されることが多い言葉ですが、果たして“営業力”は営業だけに関係する言葉でしょうか?
2008年のリーマンショック以降、企業の購買プロセスは年々長期化しインターネットやPCに加えスマートフォン・タブレットが普及したことで、オンライン上での意思決定が当たり前になっています。
つまり、従来の足を使った営業スタイルでは顧客のニーズを捉え切ることができず、ビジネスチャンスを逃す機会が多くなっているのです。こういったビジネス上の課題から“営業力”とは、既に営業だけが関わるものではないことが分かりますね。
ここで自社の“営業力”を高めるために必要なのがマーケティングです。現代ビジネスにおいては営業とマーケティングが柔軟な連携のもと、一つの目標を持ってセールスに取り組むことで営業力強化につながります。
しかし、現状として営業とマーケティング間で適切なコミュニケーションを取れている企業は少なく、十分な営業力を発揮できていない状態です。
そこで今回は、営業とマーケティングの連携が上手くいかない原因を考えていくと共に、課題解決と営業力強化に向けたヒントを導き出していきます。
“マーケティング力”という言葉
“営業力”という言葉に対し“マーケティング力”という言葉が存在します。営業には営業の、マーケティングにはマーケティングの課題が存在するのでこのように二分して考えることも重要でしょう。しかし今回は“マーケティング力”という言葉は使用せず、“営業力”で統一したいと思います。
これは、現代ビジネスにおける営業力強化は営業とマーケティング双方の連携と協力が何より重要であることと、二分することで混乱を避けるためです。
“マーケティング力”という言葉自体を否定しているわけではないので、予めご了承ください。
それぞれが抱える現状課題
営業とマーケティングの連携と強力による営業力強化以前に、どちらも各々の現状課題を抱えています。
営業もマーケティングも自分達の課題しか見えていないのが実情で、むしろ相手の課題には興味がないといったところですね。
もちろん、自分自身や所属部署の課題が最優先なので咎められるようなものでもなく、これが自然とであると言えます。しかし、実はそれぞれが抱える現状課題を把握すると見えてくるものもあるのです。
それでは営業とマーケティングそれぞれの課題とは何でしょうか?
営業の課題
- 日報やその他の業務に追われ、見込み客とのタッチポイントや商談の進捗具体を適切に管理できていない
- 営業活動が属人化してしまい部署全体での共有ができていない
- 顧客行動がオンライン化しているため、見込み客の購買意欲を把握できずに最適なアプローチができていない
- 営業リソース不足で従来のような足を使ったスタイルでは営業活動以外の業務に集中できない
- もっと効率的に見込み客を育てていきたいが、部署内にノウハウが構築されていない
まずは営業の主な課題を挙げてみましたが、営業力強化の必要性を感じている企業では大方上記のような課題を抱えているのではないかと思います。
いずれの課題もよく見て頂くと「解決への糸口はマーケティングにあるのではないか?」を感じるのではないでしょうか。
見込み客とのタッチポイントや商談の進捗具体など、マーケティングにフィードバックして管理することで最適なタイミングでのアプローチを分析することができます。また、オンライン化している顧客行動や購買意欲のステージの把握などはマーケティングの土俵とも言えますね。
その他の課題に関しても、マーケティングが積極的に絡むことで解決できる課題が非常に多いんです。
では次に、マーケティングが抱える現状課題を紹介していきましょう。
マーケティングの課題
- 営業に渡した見込み客に対するフィードバックがないので、適切なリード管理ができていない
- オフラインでの顧客行動を把握し切ることができないため、見込み客のステージを完全に把握できていない
- 見込み客を育てるノウハウはあるが、それを活かす場がない
- メールマーケティングを検討しているが、マーケティング独自ではなく営業と連携を取った上で展開したい
- もっと幅広いデジタルマーケティングを展開したいが、営業スタイルが古く踏み込めない
以上がマーケティングが抱える主な課題です。もちろん企業により課題は多種多様ですが、このような課題を抱えている企業が多いと思います
いずれの課題も営業との連携が取れていれば解決できるものであることが分かりますね。
つまりそれぞれの課題を統合すると、営業力強化のためには互いが互いを必要としているにも関わらず、適切な連携や協力が取れていない状態だと言えます。
なぜ営業とマーケティングは対立するのか
前述したように、営業とマーケティングは連携し協力することで各々の課題をほとんど解決することができます。にも関わらず、営業とマーケティングが対立してしまっていることは珍しくありません。
理由としては、双方のビジネスに対する目的が違うということが挙げられます。
営業がビジネス上で持つ目的とは、組織が持つノルマをクリアするために「成約を一件でも多く取る」ということです。対してマーケティングでは、市場や顧客との継続的な接点を持ち利益を最大化するという目的があるため、長期的な目線で考えます。
つまり営業は“現在“を見ているのに対しマーケティングは“未来”を見ているのです。そもそも違う部署なのでこういった違いは当たり前で、むしろ互いの見る方向が別だからこそ機能する面もあります。
しかしこうした目的の違いから「マーケティングは現場のことを分かっていない」、「営業は古いスタイルにしがみついて変化に対応できていない」といった不満を生み、対立し合ってしまっているのです。
営業力強化ために実施したい5つのこと
ここまでの解説をもとに、営業力強化のために営業とマーケティングが実施したい5つのことを紹介していきます。
1.情報共有を怠らない
顧客情報や商談状況など、営業とマーケティングの情報共有は基本中の基本ですが、どちらも徹底できていないのが現状です。しかし実は、情報共有さえしっかりとしていれば解決できる課題はかなり多いんです。
互いが情報共有することで営業は適切なアプローチのタイミングを知ることができ、マーケティングではデータベースが整理されていきます。
また、情報共有をすることで自然と営業とマーケティングの接触回数が増えるので、対立関係を改善に向かわせることが可能です。
2.営業・マーケティング共通のKGIを持つ
これまでは当然営業は営業の、マーケティングはマーケティングのKGI(重要目標達成指標)を持っていたかと思います。しかしKGIを別々に持つことでさらなる摩擦を生み、対立を大きくすることになりかねません。
このため営業とマーケティングの間で共通のKGIを持つことが大切です。もちろんそれぞれのKGIを持つことも大切ですが、共通のKGIを大元にすることで摩擦を生むこともなくなります。
3.マーケティングによる接触回数を増やす
営業活動を効率化するために、そしてマーケティングのノウハウを最大限活用するためにマーケティングによる見込み客との接触回数を増やすことは大切です。特に中小企業では営業リソースが不足していることもあり、毎月定期的に見込み客のもとへ足を運ぶのは難しいのが現状です。
そこでメールマーケティングなどを活用した接触回数を増やすことで、営業が足を運ばなくても顧客との関係を維持することができます。事実、米国の研究では営業が足を運ばなくてもマーケティングによる接触効果はあると実証されているのです。
4.営業とマーケティングの定例会議を設ける
営業とマーケティングで情報共有をするために、あるいはコミュニケーションを増やし互いを理解するために定例会議を設けるのが効果的です。
互いが互いに求めることや、それぞれの目標などを常に共有することで業務上の摩擦をゼロにすることができます。
5.統合マーケティングプラットフォームの導入
統合マーケティングプラットフォームとは、Hubspotのような顧客分析から管理までをワンストップで行えるマーケティングツールです。
営業とマーケティングの徹底した情報共有が大切であったり、定例会議を設けると効果的と紹介しましたが「正直そんな時間もないくらい忙しい…」といった企業が多いと思います。それでもやはり、営業とマーケティングの情報共有やコミュニケーションは欠かせません。
そこで統合マーケティングプラットフォームを導入することで、営業とマーケティングの情報共有をかなり効率化することができます。また、自然と情報共有がなされるのでコミュニケーションの一貫にもなり、連携と協力の意識が芽生えていきます。
それぞれの業務をこなしつつ全てを実施するのは決して簡単ではありませんが、営業力強化のためは欠かせないことなので是非参考にしてください。
まとめ
営業とマーケティングが対立していることで、頭を抱えている経営者の方も多いと思います。ここで経営者として考えるべきことは「営業とマーケティングがそれぞれの業務をこなしつつ、連携と協力の取れる環境を提供すること」ではないでしょか。
これは、前述した統合マーケティングプラットフォームを導入することで双方の業務を効率化することができ、連携と協力の取れる環境を構築することができます。また、定例会議には場をまとめるために経営者自身や役員が出席してもいいかもしれません。
皆さんの企業では営業とマーケティングがしっかりと連携・協力していますか?もしもしていないと言うのであれば、ここで紹介したことを参考に営業力強化を図って頂ければと思います。