インターネットの普及により、顧客の購買プロセスはリアルからネット上へと移行してきたのは誰もが認めるところでしょう。これに伴い、多くの企業がリードジェネレーション(見込み客獲得)やリードナーチャリング(見込み客育成)をメールやWebサイトなどのインターネットを活用したコンテンツを中心に行っていると思います。
しかしそんなネット時代だからこそ、マーケティングオートメーションの活用はリアルとの連携こそが成功のカギと知っていましたか?
実はマーケティングの世界ではリアルで力を発揮する施策が数多く存在するのです。そして、マーケティングオートメーションと連携することで、最大限の力を発揮することができます。
なぜネット上での施策が強化されている今、リアルでのマーケティングが必要なのか?マーケティングオートメーションを活用している、または今後導入しようと考えているみなさまにぜひ知っていただきたいと思います。
リアルでのハウスリスト獲得は確度が高い
ハウスリストとは言わば自社独自に保有するリードにつながる個人情報であり、様々な獲得方法が存在します。ネット社会の現代において主流となっているのは、Webサイト経由での資料ダウンロードやメルマガ登録による個人情報の取得などです。
海外の一部の国ではビジネスを目的とした個人情報の売買が認められている場合がありますが、日本国内では個人情報保護法により有償、無償を問わず本人の同意のない個人情報の第三者提供は禁止されています。
従って個人情報を組織独自に収集する必要があるのですが、その方法としてリアルでの施策はやはり効果的なのです。
リアルでのハウスリスト獲得方法と言えば展示会やイベント、セミナーなどですね。
ここでの個人情報の獲得手段は名刺の収集などが主であるため、ネット上で獲得するよりも比較的確度が高く、早期の段階で案件化することができます。(当然そうでないリードもいます)
ネットであれば、たとえば資料をダウンロードするだけであれば、適当な入力やGmailなどの個人のメールアドレスが入力されているケースも散見されます。また、ネットでは気軽にアクセスできるため、単なる情報収集というケースも多いでしょう。コンタクトの裾野を広げるという観点では悪いことではないですが、入力された情報の精度という意味では高くないのも事実です。
対して展示会やイベントにて獲得したリードでは、特に対象を絞ったセミナーなどでは検討の中盤~終盤にさしかかっているケースが多く、比較的短中期で案件化することができることが多い傾向にあります。また、名刺情報をもとに個人情報を収集できるため、内容の精度が非常に高いものになります。加えて対面で会話ができるため、リードが抱えている課題やニーズを把握しやすいというメリットがあるのです。
もちろん、大規模な展示会やイベントでは、情報収集や興味本位で立ち寄る人も多いため、案件化の割合はぐんと下がりますが、名刺をベースにしたリードの獲得を行えば、相手先の正確な役職・メールアドレス・電話番号といった情報を得ることができます。資料ダウンロードやメルマガ登録ではこれらの情報入力を求めはするものの、それが正確な情報である保証はありません。
総じて、リアルで獲得するハウスリストはネット上で獲得したものに比べて確度が高いのです。もちろん獲得したハウスリストを活かすも殺すもマーケティング次第なので、リアルの活動によって質が異なるため、それに合わせた活用が必要でしょう。
アウトバウンドコールによるフォロー
イベントやセミナーで取得したリードはみなさんどうされていますでしょうか?多くの場合はアンケートの内容を見て、案件化できそうであればアウトバンドのフォローコール、そうでなければメルマガや案内メールの送信先として登録するということが多いのではないでしょうか。
リアルで取得したハウスリストの利点はフォローがしやすい点にあります。展示会やイベントにて獲得したリードに対しは、アウトバウンドコールをかけても不自然ではありません。連絡先の情報の精度が高いうえに、「先日はご来場ありがとうございました」というあいさつの名目でかけることができるのです。
やり方次第ではアウトバウンドコールでプロジェクトが立ち上がっているかや決裁者の確認などもできるので、非常に強力な武器と言えます。
しかしながら、このような経路で入手したリードには昨今大きな課題が指摘されています。それはリードの質です。特にイベントなどではノベルティなどと引き換えにアンケートや名刺を獲得することが多いでしょう。いくら対面といっても、名刺情報こそ正しいものの、アンケート内容などの精度は何とも言えません。そのため、いざフォローコールをしてみるとニュアンスが異なるという経験もあるのではないでしょうか。
マーケティング部と営業部での連携
多くの企業が抱える課題の一つとして「マーケティング部と営業部の連携不足」が上げられるのではないでしょうか?本来協力する必要があるはずの両部署が反発し合っているというのは珍しくない光景かと思います。
上述のようなイベントなどで大量に取得したリード情報をもとに営業に回してゆくと何が起こるでしょうか。
マーケティング部の主張
目標リード獲得数は達成しているし、スコアリングによって確度の高いリードを流しているのに売上げが向上しないのは営業スキルがないからではないか?
営業部の主張
マーケティング部から流されるリードは確度が低く、現状商談化している案件より優先度は低い。もっと確度の高いリードを獲得できないのか?
案件を増やしてビジネスを成長させたいという最終的なゴールはマーケティングも営業も同じはずです。しかしながらこのような対立は残念ながら多くの企業で見られます。ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか。
それは求めるものが異なるからです。マーケティングはいかに多くのリードを営業に渡すかという指標で考えます。それに対し、営業は案件になるリードだけが欲しいのです。そのため、特に大規模なイベントや展示会では多くのテーマを扱うため、自社の製品やソリューションに興味を持っている人に接触できる確率は相対的に低くなります。リアルの世界においても、展示会の自社のブースにめがけてくる人は、すでに自社に興味がある人ではないでしょうか。
最終的にはインバウンドマーケティング
ネットで取得したリードでも、リアルで取得したリードでも、いまではマーケティングオートメーションを活用してナーチャリングを行い、最終的には見込み客から自ら問い合わせをしてくるという流れを作るのが質を重視したマーケティングの手法として定着しつつあります。実際にいくつかのマーケティングオートメーションはネット上の行動だけでなく、リアルでの行動をスコアリングすることができます。そしてリアルをしっかりと絡めることで正確なスコアリングが可能になり、今アプローチすべきリードの優先順位を付けることができるのです。
例えば、Hubspot(ハブスポット)では、イベントやセミナーで取得したリードをオフラインソースとして取り込み、スコアリングやナーチャリングの対象とすることが可能です。マーケティングオートメーションの活用はリアルな活動と連携して行うことで、よりその効果を発揮します。リアルで取得したリード情報は、相対的にネットで取得するよりも精度が高いからです。
リアルなイベントも入り口の一つとして位置づけてマーケティングオートメーションを活用することで、マーケティング活動やリードの一元管理が実現でき、さらに営業が求める確度の高いリードを生成することが可能になるでしょう。
マーケティング部門にとって、イベントや展示会で取得できるリードの数はたしかに魅力的ですが、それをそのまま営業に渡しても思うような結果につながらないことが多いのも事実でしょう。それらをマーケティングオートメーションで見込み客としてナーチャリングした結果を営業に渡すことで、マーケティングと営業の両方のニーズを満たせるのではないでしょうか。
まとめ
いまでは従来のイベントや展示会などのアウトバウンドマーケティング手法よりも、インバウンドマーケティングが注目される時代になりましたが、それでもリアルでのマーケティング活動がすべて否定されるわけではありません。
しかしながら、リアルで獲得したリードをそのまま従来の手法でフォローしてもなかなか期待した成果は上がらないことが多いでしょう。インバウンドマーケティングは、見込み客が自分の意思で自社のソリューションにたどり着き、確度の高いリードを見出します。
さまざまな事情で従来のアウトバウンド型のマーケティング活動も継続して行う必要もあると思います。その場合も、マーケティングオートメーションに統合することでリアルでのリード獲得の活動は無駄にはなりません。
最終的に案件を増やし、ビジネスを成長させるというゴールを達成するために、ネットとリアルをうまく融合し、有意義な活動になるように検討してみてはいかがでしょうか。