One to Oneマーケティングとは、一人ひとりのニーズや購買履歴などに合わせてパーソナライズした個別のマーケティングを展開する方法です。ここ数年でOne to Oneマーケティングの重要度は一気に増しました。その最たる要因は「ニーズの多様化」でしょう。
インターネットやパソコン、スマートフォンが徐々に普及していく中で「ユーザー自ら情報を取得する時代」が形成されてきました。テレビCMや新聞広告がマーケティングの中心だった時代とは違い、ユーザーは自身が所持するデバイスで商品・サービスの情報や口コミを調査した上で意思決定を行います。さらにユーザーの思考が「自分だけのオリジナルが良い」にシフトしてきたことで、ニーズは急激に多様化しました。
こうした時代の変化に対し、果たして従来通りのマーケティング戦略でよいのでしょうか?答えは当然「NO」です。ニーズが多様化したことに合わせて、マーケティング戦略にも多様化が必要です。
今回は、時代に即したマーケティング戦略としてOne to Oneマーケティングをご紹介します。
なぜ「One to One」が可能なのか?
One to Oneマーケティングはユーザーごとのニーズや購買履歴を把握して、それに応じたマーケティングを展開します。それはつまり、顧客一人ひとりを認識するための技術を用いるということです。そこで活用される技術がブラウザの「Cookie情報」です。
Cookie情報とはユーザーのインターネット上の行動に応じて、ユーザーのブラウザに一時的に保存される情報です。例えば皆さんは特定のWEBページを訪問した際に、初めて訪問した時と2度目に訪問したときで別々のページが表示されたという経験はないでしょうか?これは皆さんのブラウザに保存されたCookie情報により、WEBページが2度目以降の訪問と認識して別のページを表示しているためです。
ユーザー個々に合わせたマーケティング戦略と聞くと「まずは会員制WEBページを作って個人情報を入力してもらって…」とイメージされる方が多いかと思います。しかしCookie情報を利用すれば、個人情報が無くとも個別のマーケティング戦略を展開でき、マーケティング効果をより高められるのです。
One to Oneマーケティングの種類
One to Oneマーケティングの実現方法として最もポピュラーなのがECサイトにおける「レコメンド機能」でしょう。ショッピングサイトにて商品を閲覧したり購入したりすると、「あなたへのおすすめ商品」として別の商品が紹介されるような機能です。
これはECサイトに組み込んだ「レコメンドエンジン」という技術が、ユーザーの行動や趣向を分析して購入率の高そうな商品をおすすめするという機能です。ちなみにレコメンドエンジンには次のような複数の種類があります。
- ルールベース:
決められたルールに従って商品を紹介する(Aを購入した人にはBもおすすめするなど) - コンテンツベース:
計算されたコンテンツ間の関連性をもとに、類似度が高いコンテンツを紹介する(サプリメントAを購入した人に対し相乗効果を持つサプリメントBをおすすめするなど) - 協調フィルタリング:
ECサイト内での行動や購買履歴をもとに分析を行い、類似したユーザーが購入した商品を紹介する(「この商品を購入した方はこちらも購入しています」など) - ベイジアンネットワーク:
ユーザーの属性・行動・購買履歴や商品の属性など複数の情報をもとに高度な分析を行い、購入率の高そうな商品を紹介する
レコメンド機能はOne to Oneマーケティングを実現する上で最も簡易的なものです。初期コストも比較的安価なため、気軽に導入できる利点があります。ただし、その効果はECサイトに限定されているため、BtoBでは活用できないケースが多いでしょう。
BtoBにおいてOne to Oneマーケティングを実現したいのであればマーケティングオートメーション(MA)が既に一般化しています。MAはその名の通り「マーケティングを自動化するためのツール」でありOne to Oneマーケティングにおいても大いに活躍します。
たとえばMAには「シナリオ設定」という機能が備わっています。見込み客が起こしたアクションに応じていくつかのシナリオを設定しておき、都度適切な内容のメッセージを送信するといったものです。
見込み客のアクションを常に追跡して、それに応じたマーケティング戦略を展開するということは本来不可能です。人手で行うには限界があり、資源がいくらあっても足りません。
そこでMAというITツールを活用することで見込み客のアクションの追跡や個別のマーケティング戦略を実現することで、BtoBにおけるOne to Oneマーケティングを実現しています。
例えばHubSpotでは、あらゆるユーザーイベントに対して自動でナーチャリングを行ったり、Webサイト訪問時にユーザーの状態に合わせてコンテンツを変えたりすることができます。
One to Oneマーケティングのメリット
One to Oneマーケティングのメリットは、ユーザーや見込み客ごとにカスタマイズされたマーケティング戦略を展開するため、「嫌われない」「コストがかからない」「購買率が高い」の3つに集約されます。
たとえば皆さんがマーケティング戦略の一環としてデジタル広告を出稿したとします。しかし、ユーザーの多くは広告を嫌うため、クリックには至らない場合がほとんどです。一方でOne to Oneマーケティングを展開している場合、ユーザーの嗜好に合わせた広告のみを表示することになるため嫌われない傾向にあり、むしろクリック率がグンと上がります。
One to Oneマーケティングは従来のマスマーケティングと違い、適切なユーザーにのみメッセージを発信します。そのため、不特定多数を相手にしたマーケティングを違いコストがかからないというメリットもあります。正確にはレコメンド機能やMAの導入などによってコストはかかりますが、従来のマーケティング戦略に比べて圧倒的安価なコストで新規顧客を獲得できるでしょう。
これら2つのメリットによりユーザーや見込み客の購買率は確実に高まります。もちろん、そのためには綿密なマーケティング戦略設計が必要です。ただしノウハウがあれば、そう難しいことではないでしょう。
インバウンドマーケティングとの関係
インバウンドマーケティングとは「ユーザーや見込み客を引き込むマーケティング」です。主に企業のWebサイトや企業ブログ、SNSを運用し、設定したターゲットに向けてコンテンツを発信することで、ユーザーや見込み客自らにアクションを起こさせるマーケティング戦略になります。
このインバウンドマーケティングでもOne to Oneマーケティングは実現できます。というよりもインバウンドマーケティングの本質はOne to Oneマーケティングと言っても過言ではないくらい密接な関係といえます。
たとえばユーザーや見込み客のCookie情報に応じて表示するWEBページを変えたり、メッセージをポップアップすることで個々に応じたマーケティング戦略を展開できます。
インバウンドマーケティングとOne to Oneマーケティングはセットで考え、相乗効果を狙うのがセオリーです。どちらもデジタルを活用し、時代に即したマーケティング戦略なので高い効果が期待できます。
One to Oneマーケティングの展開を検討する際は、レコメンド機能やMAの導入に合わせてインバウンドマーケティングを検討しましょう。これらを総合的に展開することで相乗効果が高まり、効率良く売上向上へ繋げていけるはずです。