米国で爆発的な話題となっているのが、「グロースドリブンデザイン(Growth Driven Design)」というWebサイトの制作手法です。
そして、このグロースドリブンデザインは、多くのサイト担当者を悩ます「サイトリニューアルを失敗しないためには、どうすれば良いか」という答えになります。
ここでそのグロースドリブンデザインについて、全容をご紹介していきます。
グロースドリブンデザインの注目度
グロースドリブンデザイン(Growth Driven Design)という言葉をこれまで聞いた事がない、という人も多いはずです。
まずはGoogle トレンドを使って、アメリカでの注目度を見てみましょう。
2016年に入り、明らかに高い注目が集まっています。
同じ期間、日本の注目度を見てみましょう。
ほとんど知られていない事が分かります。
実際にまだインターネット上にも、それほど多くの情報は掲載されていません。
米国のトレンドは、いずれ日本に上陸してくるのが常です。加えてグロースドリブンデザインは、これまでのWebサイト制作が抱える大きな問題を解消するパワーを持った考え方なので、日本でも早晩話題になっていくでしょう。
ここでグロースドリブンデザインにいち早く取り組んでおくのは、サイトリニューアルを成功させるというミニマムな成果以上に、今後のビジネスを大きく向上させていくポイントとなるはずです。
問題の多いWebサイト構築
Webサイトが多くのビジネスに取り入れられ始めて、もうすぐ20年です。進歩が速い分野ですから、その倍以上に成熟していてもおかしくありません。
ところが実態は・・・ありがちなシーンを、架空の物語を使って見ていきましょう。
サイトリニューアルでよく見られる光景
とあるBtoBビジネスを展開する日本企業。そこでは役員の川上から直々に、Web担当者の大城が呼び出されていた。
川上「うちのWebサイトだけど、前回のリニューアルはいつだったかな?」
大城「2013年の春です」
即答できた事に、内心胸を張る大城。
そして次に出る言葉も、予想はついていた・・・。
川上「もう4年が過ぎているのか。そろそろ変えないとマズイだろ」
やっぱり。大城の予感は的中した。そしてまた忙しくなるな、と感じた。
川上「それでな、上の連中がもっと成果の出るWebサイトにしろ、と言っているんだよ」
ざっくりとした経営陣からの要求。それを現実のものにするのは、いつだって難易度の高いものだ。
しかし成果を出せ、という指示は理解できる。なぜなら前回のリニューアルでも最初は喜ばれたものの、しばらく経ったら「リニューアルしても、業績は全然伸びないな、と経営陣が言っている」という噂が、チラホラ耳に入って来たからだ。
プライドの問題だけでなく、自分の待遇やWeb部門が全く改善されないといった原因もあのリニューアルにあるのではないか。大城はそう考えている。
そこに追い打ちをかけるように、川上が口を開いた。
川上「今度リニューアルしたら、大丈夫だよな?」
大城は返事に窮した。リニューアルするのは新しいシャツを着て出社するようなもので、それだけでは気分をリフレッシュしたり、周囲が少しだけ注目してくれる事はあっても、決して仕事の能率や評価を上げる事はないからだ。
しかしそれを川上に向かって説明するほどの理論は無い。よしんば理解してもらえたとしても、「じゃあ、どうすれば良い?」、という対案への答えは持っていなかったからだ。
大城は途方に暮れた。
そして心の中で叫ぶのだ。
(リニューアルなんて、リニューアルなんて・・・)と。
合格点の取り組み方も・・・
これは、(他の会社も同じさ。Web担当者は辛いよ)なんて愚痴を言わせるために紹介した物語では、もちろんありません。
担当者である大城さんは成果を出すために、リニューアルにあたっての「コンセプト出し」「現在のサイトから問題点の抽出」「改善のアイデア」、などを考えていくでしょう。
上流が固まれば「情報設計」や「UI」、そして「ビジュアルデザイン」や「使用技術」といった実装に近いものまで、きちんと取り組んでいくはずです。
日々の業務を円滑にする視点から、効率の良い運営方法や属人化しないためのドキュメント類の整理も、一緒に行うかもしれません。
リニューアルに向かう担当者としては、かなり理想的な働きです。
しかしそれでもなお、足らないのです。いや不足しているのではなく、ベースの考え方が違っているのです。
サイトリニューアルはギャンブル
サイトリニューアルを行う際に行う、大きな調整事は何でしょうか?
多くの方は、「リニューアル予算」と回答するはずです。
予算はサイトの規模やリニューアルの内容によって違って来ますが、かなりまとまった金額が動くのは間違いないはずです。
この光景は、一度の競馬に、「10万」「30万」、時には「100万」かけるのと似ています。
「仕事とギャンブルを一緒にするな!」と一喝されそうですが、サイトリニューアルと大金を一度にかけるギャンブルは、良く似ています。
「あれだけ使ったのに、儲かったのはたったこれだけ」というのはマシな方で、「全部すってしまっとよ」という、嘆きの声も多く聞かれるものです。
従来のサイトリニューアルでも多くの人が、不安や疑問を抱いていました。しかしそれを指摘したり改めようとしなかったのは、対案が無かったからです。
そこに颯爽と現れたのが、これから紹介するグロースドリブンデザインなのです。
ポイント
ここではグロースドリブンデザインをスピーディーに理解するために、最小限の要点に絞ってに紹介していきます。
そもそもの間違い?
前提として、グロースドリブンデザインとはその名の通り「成長を起点としたWebサイト制作の手法」です。日々成果を上げるために変化するサイトづくり、と言えるでしょう。
一方リニューアルは、「サイトが公開されれば完了」するものです。もちろんコンテンツや部分的な機能は追加されていきますが、UI/UXを含めたベースのデザインは変わりません。
稀にここから大胆な変更を加えるサイトがありますが、何らかの重大な問題や非論理的な理由がほとんどのため、改善というよりも崩れていくのが常です。
グロースドリブンデザインを知れば、そもそもリニューアルという考えが間違っていたような気持ちになるかもしれません。
リアル店舗は確かに「リニューアルオープン」で一定の効果はありますが、そこからは効力を失っていき、また何年か後のリニューアルに向かっていくものです。
サイトリニューアルも、このイメージで取り組まれていた節があります。だからこそ、リニューアルという言葉が使われてきたのでしょう。
グロースドリブンデザインと従来の(リアル店舗の)リニューアルを模したサイト制作の違いは、下記の図によく表れています。
インターネットの世界で、リアル店舗と同じ理屈でサイト改善に取り組む必要はありません。グロースドリブンデザインが定着すれば、サイトリニューアルという言葉そのものが無くなってしまうのかもしれません。
それでは、具体的な中身を見ていきましょう。
二つのフェーズ
グロースドリブンデザインには、大きく二つのフェーズがあります。
フェーズ1:ローンチパッドサイト
これまでのサイトリニューアルは、できたものを公開したら終わり、というやり方でした。しかしグロースドリブンデザインでは、ここからが出発となります。
シンプルに説明すると、「ベースとなるWebサイトを制作し、公開する」というまでが、最初の段階になります。そして極端な表現を使えば、これが次のフェーズを行うための「実験場」となります。この実験場が、「ローンチパッドサイト」というものです。
フェーズ2:育てる
ローンチパッドサイトを公開するまでの流れは、従来のサイトリニューアルに共通した内容が多くあります。
しかしこれを使ったフェーズ2の取り組みでは、少し戸惑う人もいるかもしれません。かみ砕いて言うと、「公開したWebサイトでさまざまな実験を繰り返し、検証をしながら最適なWebサイトを導いていく」、取り組みになります。
より具体的に「A/Bテスト」「アクセス解析」という個々の方法を示せば、理解しやすいでしょうか。
二つのフェーズをもとにした大まかな流れは、「ベースサイトの制作→そこで日々の実験を繰り返していく」というものになります。
中心に据えるもの
グロースドリブンデザインで重要なのは、「ユーザーを中心に考えていく」という事です。
ローンチパッドサイト立ち上げ後の、「計画」「開発」「学習」「転用」というサイクルの中心には、常にユーザーがあります。
このユーザー像が、「ペルソナ」です。
コンテンツマーケティングやマーケティングオートメーションの広がりもあってか、Web担当者からも多く聞かれるようになった用語です。
しかし残念な事に、多くの場合でその使い方を理解していない、「お飾りペルソナ」が横行しています。
グロースドリブンデザインでは、このペルソナの作り方や使い方もきちんと設定されています。さらにフェーズ1のローンチパッドサイト制作のノウハウ、フェーズ2のサイクルの回し方についても体系があります。
これらを熟知したパートナーと組む事で、実務としてのグロースドリブンデザインを理解できるようになるはずです。
まとめ
ここではグロースドリブンデザインを最速で理解できるように、その必要性と概要についてのみを大まかに紹介していきました。
ほとんどのWebサイトリニューアルプロジェクトはデザインを重視しすぎて、目的を見失いがちです。本当にうまくいくかどうかは、誰もわからずそこには「度胸」という言葉が最もしっくりきます。そんな「度胸」は、3塁コーチにゆだねるとして、私たちはインバウンドな時代にしっかりと成果を出す必要があるのです。そして、それを実現するのがグロースドリブンデザインということになります。
今回、時折触れたように、実際には概念だけでなくきちんとした方法論も確立されています。リードプラスでは、サイトのリニューアルの際にこのグロースドリブンデザインを採用しお客様にサービスとして提供しています。B2B企業向けにローンチパッドサイトのテンプレートもご用意しています。
「もうリニューアルを失敗したくない」「でもうまくいかない」「もっと見込み客が欲しい」という悩みをお持ちの担当者は、気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
(参考)その効果は、既に多くのサイトで実証されていた
ここまで読み進めても、グロースドリブンデザインにまだ懐疑的な方も多くいるでしょう。
Webの世界で多く見られる、「バズワード」ではないかという批判もあるでしょう。
しかし実は、こうした制作手法は既に多くの成功企業で取り入れられています。
一つはGoogleです。
「永遠のベータ版」、という言葉を覚えているWeb担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
Googleにはベータ版、つまり完成していないWebサービスを一般に公開し、ユーザーの要望に沿ったアップデートや機能追加、ユーザビリティの改良などを行い、メジャーなサービスに育てていくものが多くあります。
今やスタンダードな地図とも言えるGoogleマップも、この手法で成長していったWebサービスです。また現在でもGoogleアナリティクスが頻繁に変わっていくのを目の当たりにしている担当者も、多くいるでしょう。
このようにGoogleが行っているのは、「進化のための公開」なのです。
Googleは特別だろう、とまだ批判的な方もいるでしょう。しかし実は、日本の大手サイトでもグロースドリブンデザインに似た取り組みをしている所はあります。
ローンチパッドサイトとして既存サイトをそのまま使い、実験を繰り返していくのもやり方です。あの大手企業も実は、見慣れたサイト上でユーザーが気づかないうちにさまざまな実験を繰り返しているのかもしれません。もちろんユーザーに迷惑をかける事無く、ビジネスに支障を来さない事が大前提です。
ただしこうしたやり方をするのにあたり、理解の高いWebマスターや社内チームが必要とされていたのも事実です。
しかしグロースドリブンデザインには、それを可能にする具体的なノウハウが複数示されています。
優れたパートナーと共にこれに取り組めば、きっとグロースドリブンデザインの恩恵を受けられるはずです。