テクノロジーの発展に比例して加速する市場変化に対応するためには、定量的なデータ分析によるマーケティング戦略が欠かせません。そこで重要となるのが、経営データを一元管理する「データ統合」です。本記事では、データ統合ツールの概要や種類について解説するとともに、具体的な活用方法やおすすめのソリューションをご紹介します。
データ統合の必要性
「データ統合」とは、組織内に分散しているさまざまなソースからデータを取り込み、一元的に管理する手法を指します。組織体系によって異なりますが、企業の業務データは各部門の情報システムに保管され、その部署に最適化された形式で管理されているのが一般的です。このような情報管理体制は、一見すると部門ごとに個別最適されているため、各部署の業務効率は高まるかもしれません。しかし、全社横断的な情報共有や業務連携には不向きな情報管理体制といえます。
現代市場はテクノロジーの進歩・発展によって加速度的に変化しており、企業を取り巻く環境も常に移り変わっています。このような時代のなかで競争優位性を確立するためには、市場変化への柔軟な対応力と迅速な意思決定が不可欠です。そして、常に変化していく市場に順応し、的確な意思決定を下すためには、定量的なデータ分析に基づく経営戦略の立案が欠かせません。
各部門で個別管理されている業務データを統合的に管理できれば、経営状況が可視化され、スピーディーな意思決定や経営リソース配分の最適化につながります。全社横断的な情報共有が可能になることで、部門を跨いだ業務連携や業務の標準化に寄与する点も大きなメリットです。また、データの統合的な管理体制を構築し、データガバナンスを整備することで、セキュリティの強化にもつながります。市場や顧客の潜在需要を捉えるデータ分析基盤を整備するためにも、データ統合は不可欠な施策といえるでしょう。
データ統合ツールとは
「データ統合ツール」とは、組織内に点在する膨大な業務データを統合的に管理し、システム間のデータ連携を効率化するためのソリューションです。20世紀後半に起きたIT革命によって、情報通信技術は驚異的な速度で進歩し、さまざまな産業に発展をもたらしました。しかし、その裏で企業が取り扱うデータ量は増加の一途を辿っており、どのようにして膨大な経営データを管理していくかが重要な課題となっています。
ビッグデータ分析の基本的なプロセスは、あらゆる形式の生データを格納する「データレイク」や、定義された構造化データを保管する「データウェアハウス」に蓄積された情報を、BIツールを用いて分析・可視化するという流れが一般的です。データ統合ツールは、各部門によって個別最適されているさまざまな情報を集約し、ビッグデータ分析基盤と連携することで戦略的なデータ活用を可能にします。
詳しくは後述しますが、データの抽出・変換・格納に特化した「ETLツール」が、データ統合ツールの代表的なソリューションとして知られています。そのほか、企業の基幹業務を一元的に管理する統合基幹業務システム「ERP」や、顧客データを集約する顧客データ基盤「CDP」なども、データ統合ツールの一種といえるでしょう。
データ統合ツールの種類
ここからは、データ統合ツールの種類について見ていきましょう。代表的なソリューションとしては、先述した「ETLツール」「ERP」「CDP」の3つが挙げられます。
ETLツール
ETLとは「Extract(抽出)」「Transform(変換)」「Load(格納)」の頭文字を取った略称で、その名の通り膨大なデータの収集や加工に特化したソリューションです。主なユースケースとしては、アプリケーション間のデータマイグレーション、主要な情報システムの同期、オンプレミス環境からクラウド環境へのアプリケーション移行、データの複製によるバックアップなどが挙げられます。
ETLツールは、膨大なデータの収集や書き出しに必要な機能が網羅されており、データウェアハウスへのデータ統合やBIツールの分析精度向上に欠かせないソリューションといえます。
ERP(Enterprise Resource Planning)
ERPシステムは、財務・会計・生産・物流・販売といった企業の基幹業務を統合管理するソリューションです。本来ERPは、企業の経営資源を効率的に運用するマネジメント手法を示す用語ですが、近年では統合基幹業務システムをERPと呼称する傾向にあります。
世界市場で高いシェアを誇るERP製品としては、SAP社の「SAP S/4HANA」やOracle社の「Oracle ERP」などが挙げられます。国内企業のソリューションとしては、オービック社の「OBIC7」や、オロ社の「ZAC」などが代表的なERP製品です。
CDP(Customer Data Platform)
CDPは「Customer Data Platform」の略称で、日本語では「顧客データ基盤」と訳されるソリューションです。購買履歴や行動履歴といった顧客データを1つのプラットフォームに集約するという特性から、「プライベートDMP」とも呼ばれています。
ビジネスの土台にあるのは人間関係であり、企業が発展していくためには、優れた顧客体験の提供が欠かせません。CDPは顧客理解の深化や、顧客データをデジタルマーケティングに活用するうえで不可欠なソリューションといえるでしょう。
ビジネスにおけるデータ統合ツールの活用法
情報爆発時代と呼ばれる現代市場で企業が新たな市場価値を創出するためには、指数関数的に増大しつつあるビッグデータの戦略的活用が不可欠です。ビッグデータ分析を経営戦略に用いるためには、データウェアハウスのような膨大な情報を管理するリポジトリが欠かせません。そして、データウェアハウスに情報を蓄積するために必要となるのが、データ統合ツールです。
たとえば、ELTツールを活用することで、各部門の情報システムに保管されている業務データを抽出・変換し、データウェアハウスに蓄積できます。データウェアハウスは、ETLツールが収集・構造化したデータを保管し、その膨大な情報をBIツールと連携することで、的確な市場予測や需要変動の把握といった高度なビッグデータ分析が実現します。
また、データ統合ツールを導入するもうひとつのメリットが、情報セキュリティの強化です。セキュリティ体制の最適化は、企業にとって最も重要な経営課題のひとつといえます。各部門の情報システムによってセキュリティ機能やセキュリティポリシーが異なっていては、年々巧妙化する不正アクセスやマルウェアなどの脅威から企業の情報資産を保護することは困難です。データ統合ツールによって企業の情報を一元管理し、セキュリティ要件やセキュリティポリシーを統合することで、サイバーリスクの軽減に寄与します。
スムーズなデータ統合を実現する「SAP Customer Experience」
データ統合ツールの導入を検討している企業におすすめしたいのが、「SAP Customer Experience」です。SAP Customer Experienceは、ERPシステムの分野で世界トップシェアを誇るSAP社が提供するCRMシステムです。
CRMシステムは、顧客情報を1つのプラットフォームで統合管理することで顧客理解を深め、優れた顧客体験の提供に寄与します。本製品はSAP社のERPシステムとの連携が可能であり、顧客情報と基幹業務データを一元管理することで、市場変化への柔軟な対応や迅速な意思決定につながるでしょう。
まとめ
変化の加速する現代市場において、顧客の潜在需要を的確に捉えるためには、経営データの統合的な分析が必要です。各部門の情報システムで個別管理されている業務データを統合管理することで、顧客情報や経営状況などが可視化され、定量的な分析に基づく事業戦略の策定につながります。また、データの統合的な管理体制を構築できれば、部門を横断した情報共有や業務連携が可能になり、組織力を強化する一助となるでしょう。ぜひ、本記事を参考にして自社のデータ統合に取り組んでみてください。