2009年、米Googleチーフエコノミストのハル・バリアン氏が「今後10年で最も魅力的な職業はデータサイエンティストだろう」と語ったことから、データ分析に対する注目度が着実に上昇してきました。
そして今、この言葉をなぞるかのように“データドリブンマーケティング”が注目されています。
いわゆるデータ分析を起点としたマーケティング手法であり、今後マーケティング効果を最大化していくためのキーワードでもあります。しかし、このデータドリブンマーケティングについていまいちピンとこないという方が多いのではないでしょうか?
今回解説するのはそんなデータドリブンマーケティングについてです。
データドリブンマーケティングは「作成、収集、見える化、活用」
データドリブンマーケティングの基本はまずデータを「作成して収集し、見える化してから活用する」ことです。
まず、データ分析というものはベースとなるデータがなければ分析のしようがないのは当たり前ですね。ただデータというものは至るところに溢れているものなので、作成も収集も同義と捉えることができます。
一番身近なもので言えばWebサイトから得られるデータでしょう。ただしデータドリブンマーケティングではこうしたデジタルデータだけでなく、リアルから取得できるデータも含まれています。
そして作成・収集したデータを活用できるようにするため見える化(ビジュアライズ)する必要があります。Webサイトを例に上げるならばGoogleアナリティクスなどのアクセス解析がこの役割を果たしていますね。PV数やユーザー属性などのデータを分かりやすく見える化してくれるからこそ、初めてデータ分析に活用することができるのです。
最後にデータを活用するというのは、単にデータ分析を行うだけでなく実際に施策へと活用することを指します。たとえばDMP(データマネジメントプラットフォーム)で広告配信に活かすように、しっかりマーケティング施策へと展開することが重要です。
優れたCX を実現する「顧客データ」活用のあり方を探る
顧客接点の多様化を味方につけて差別化が難しいデジタル時代を生き抜く
顧客接点のオムニチャネル化が進む今、顧客エンゲージメントの強化やロイヤルカスタマーの育成は、あらゆる企業にとって共通の重要課題です。多くの企業は以前からCRM などのIT ソリューションを活用することで顧客対応の最適化を進めてきました。
しかし、デジタル化がさらに加速する現在では、顧客対応においてどのようにデータと向き合い、どのように顧客体験を向上させていけばよいのでしょうか。オイシックス・ラ・大地株式会社 奥谷孝司氏とSAP ジャパン株式会社 富田裕史氏の対談から、その方向性を探ります。
データドリブンマーケティングをアンケート収集に活用する事例
ここで一つ、データドリブンマーケティングの分かりやすい事例を紹介しておきたいと思います。
全国にチェーン展開するスーパーマーケットのA支店は近隣住民に対し、自店舗に関するアンケート調査を実行しました。しかし結果は十分なアンケート数が集まらず有効的な回答を得ることができませんでした。なぜか?それは、アンケート調査対象の選定方法が非効率的だからです。近隣住民全てがA支店を利用しいてると誰が決めたのでしょう?よほど田舎でもない限り、半径1km以内に必ず競合がいるのは今や当たり前です。
そこでデータドリブンマーケティングを取り入れてアンケート調査対象を選定していきます。具体的にはA支店に来店するユーザーのロケーションログを収集し、ユーザーの分布図を作成するのです。こうすることでA支店には近隣住民だけでなく、少し離れた住宅街や市外からのユーザーも多いということに気が付きます。分析したデータをもとにアンケート調査対象を選定すれば、効率的により多くの回答を得ることができるでしょう。
これこそがデータドリブンマーケティングです。そして当然、デジタルやリアルに関わらず全てのマーケティングにおいて通用する手法でもあります。
データの信頼性を確保することが重要
データドリブンマーケティングにおいて注意しなければならないのは「データは嘘をつく」ということです。よく「データは正直」という言葉を耳にしますがデータを真正面から信じてしまっては必ず痛い目を見ます。
というのも先ほどのアンケート調査の例で考えると、アンケートにてユーザーから得た情報は必ずしも正しいとは限らないのです。例えば年代・性別欄などに嘘の情報を書き込んでいる可能性は十分にあります。これを真正面から信じてデータ分析を行っていても、まったく検討違いの分析を行っている可能性があるのです。
しかし、どんなデータも信じるなというわけではありません。重要なのはデータの信頼性を確保するということです。そしてこれはデータドリブンマーケティングを実践していく上での大前提でもあります。
そうしなければ間違ったマーケティングを延々と展開していくことになってしまうでしょう。
仮説なきデータ分析は意味がない
もう一つ注意したいことは、信頼に足るデータであったとしても様々な解釈ができるということです。例えばWebサイトにおける特定のコンテンツで、直帰率が高いものがあったとします。
皆さんならこのコンテンツに対しどのような分析を行いますか?
おそらく「コンテンツの質が悪かったから離脱してしまった」あるいは「このコンテンツだけで求める情報を入手できたので満足して離脱した」のどちらかではないかと思います。このように1つのデータに対してまったく対極の解釈をすることもできるのです。
従ってデータドリブンマーケティングではデータ分析の際に仮説を立て、活用していくことが重要です。具体的にどうしていくかというと、様々なデータを組み合わせることで仮説の精度を上げていくのです。
先ほどの直帰率の例で言えば、同コンテンツでの滞在時間やPV数などを合わせてみていきます。こうすることで質が悪くて離脱してしまったのか、はたまた満足して離脱したのかといった分析をより正確に行っていくことができるでしょう。
データを見える化するプラットフォームの重要性
データドリブンマーケティングという手法をシステム面から見てみると、データを見える化するためのプラットフォームが非常に重要になってきます。なぜなら前述したようにデジタルだけでなくリアルのデータも統合し、あらゆるマーケティングへと活用する基盤が必要になるためです。
Webサイトを始め広告配信、ソーシャルネットワーク、アンケート、イベント、セミナー、メール、DMなどなど、すべてのデータを統括して見える化することでデータドリブンマーケティングとしての力を最大限に引き出すことができます。
例えばHubspotのようなマーケティングプラットフォームでは、あらゆるマーケティングから生成されるデータを統合・分析し見える化することができます。プラットフォームとしてのシステム開発依頼やアドオン開発よりもコストダウンを狙えるといったメリットもあるでしょう。
例えば以下の関連記事ではHubSpotが提供しているCMSでどのような分析ができるのかをご紹介しています。
データドリブンマーケティングではこうしたマーケティングプラットフォームが鍵を握ることは間違いないのです。
まとめ
冒頭で「今後10年で最も魅力的な職業はデータサイエンティストだろう」という言葉を紹介しましたが、10年後にはデータサイエンティストという職業がなくなっている可能性があります。
なぜなら、あらゆるシーンにおいてデータ分析が求められるようになり、今まで分析に携わったことのない方もデータ分析を行うようになる時代が必ずくるからです。
つまり、データドリブンマーケティングの重要性が高まっていくことで、全てのマーケターに対しデータ分析スキルが求められていくということでもあります。
そしてデータドリブンマーケティングやマーケティングプラットフォームを取り扱うパートナーと接する機会も多くなっていくことでしょう。
時代はやはりデータ分析。データを制した者がマーケティングを制すと言っても過言ではないと思います。