皆さんは顧客データ管理においてどのような課題をお持ちでしょうか?恐らく、多くの方が「重複した顧客データ」に悩まされているのではないかと思います。
顧客データが重複しているとどんな問題が起きるのか?そもそもなぜ重複するのか?これを解決するデータクレンジングと名寄せとは?
今回は顧客データ管理における問題点の解決についてご紹介します。
重複した顧客データによって起きる問題
取り扱う顧客データは会社によって様々です。ただし共通して言えることは、多くの場合重複した顧客データ、つまり一人の顧客に対して複数のデータレコードが存在することが多く発生しているでしょう。このような重複が発生していると想像以上に大きな問題が起きてしまう可能性があります。問題1.正確な顧客管理や分析ができない
マーケティング部門にとって、顧客データはすべての活動の源泉であり、評価のための基礎でもあります。しかしながら、そのデータ自体が不正確であったり重複しているようであっては、そもそも効果的なマーケティング活動すらおぼつかないでしょう。たとえば、セミナーに参加した潜在顧客がWebページで資料のダウンロードも行いました。この場合にはかなり顧客になる可能性が高く、場合によっては営業にフォローしてもらってもよいでしょう。しかし、それぞれが別の人と認識されてしまったとしたら、ひとつひとつの行動はそれほど顧客になる可能性がまだ小さいため、せっかくに機会を見逃してしまうかもしれません。これはマーケティング担当者にとっては致命的なことになってしまいます。
現在ではマーケティングオートメーションやCRMといったツールが整ってきていますが、顧客データが実際の顧客の姿を正しく反映していなければ、当然その活用も限られてしまいます。顧客データの重複は効果的なマーケティングを阻害する大きな要因といってもよいでしょう。
問題2.コストの増大
同じ人のデータが複数あるということは、同じ人に対して複数のマーケティング施策を行ってしまう可能性があるということです。たとえばマーケティング目的で送付するキャンペーンメールやDMもコストがかかります。メール配信システムに応じた料金や、DM送付料が発生します。そのため、顧客データが重複していると無駄なコストがかさみ、当然それに比例して効果が上がるわけではないのでマーケティングのROI(投資対効果)も大きく低下します。また、マーケティングオートメーションツールやCRMでの顧客データの保管コストもかかります。製品によっては保有している個人情報データの数で課金するものもあります。効果が薄れるだけでなく、無駄なコストも発生するのです。
問題3.社会的な信用の低下
ひとりの人に対する重複したマーケティング活動は、単に無駄なコストが発生するだけではなく、社会的な信用を低下させる可能性もあります。マーケティング目的でキャンペーンメールやDMを送付することは多々あるかと思います。その際、キャンペーンメールならメール配信システムを利用したり、DMなら顧客管理システムを利用して効率良く大量のメールやDMを送付することになります。顧客データが重複している環境では、キャンペーンメールやDMを同じ顧客に複数送付してしまう場合があります。「別に顧客が損をするわけじゃないんだから」と楽観視してはいけません。
セキュリティ強化やコンプライアンス維持が叫ばれる現代、顧客は他社の情報取り扱いについて敏感です。キャンペーンメールやDMを2通3通と受け取った顧客は送付した会社に対し「顧客データ管理がなっていない」と思うでしょう。思うだけでなく、同時にその会社への信頼は低下します。
その結果、マーケティング効果は激減し十分な成果は得られないでしょう。マーケティングでの損失だけならまだしも、「顧客データ管理がなっていない」と口コミが広がってしまえば、それこそ大きな損失を生むことになります
この他にも、顧客データが重複していることで営業が間違ったアプローチをしてしまったり、多数の問題が発生します。
顧客データはなぜ重複するのか?
この答えはいたってシンプルです。それは「データベースに同一顧客の情報が別々の個人として記録されるから」です。ひとりの顧客または潜在顧客との接点は意外と多いものです。イベントやセミナー、ホームページでの資料ダウンロードや外部メディア記事の閲覧、そして営業現場での名刺交換などです。それぞれデータを保存するシステムにもよりますが、よくあるケースが入力データの「ゆらぎ」です。
たとえば同じ人が、セミナーの申し込み時には「A株式会社」、資料のダウンロード時には「A(株)」と入力してしまうと、同じ会社であってもデータ上は別の会社とみなされてしまいます。このような場合に、人の名前が同じでも会社が違うので別の人とシステムは認識してしまい、別の顧客データのレコードを作成してしまいます。そのほかにも、会社名の略称を使う、合併などで社名が変わってしまう、極端なケースでは入力間違えなどによっても、同じ人が別の人と認識されてしまい、データ上重複してしまうケースが多いのです。
また最近多いのが、会社の合併などにともなって、それぞれ管理している顧客データを統合する場合などです。それぞれの管理している項目や粒度などが異なり、うまくマージできずに重複データが大量に発生してしまうということもよくあります。これでは、せっかく合併した効果も発揮できないことはお分かりいただけるでしょう。
このように、顧客データの重複は特にマーケティング担当者にとっては死活問題であるにもかかわらず、様々な発生要因があり、これらを完全に防ぐことは非常に困難です。こうした状況で、どのような対応が可能なのかを考えてみましょう。
データクレンジングと名寄せとは?
顧客データ重複による問題を低減するための手段が「データクレンジング」と「名寄せ」です。≪ データクレンジング≫
そのままの意味で「データをクレンジング(洗浄、浄化)する作業」です。顧客データのデータの揺らぎや不整合を発見し、削除や修正を行います。
≪ 名寄せ≫
重複している顧客データを改めて一つの顧客データとしての統合する作業です。
このように顧客データ重複問題を解決するには2つのステップがあり、多くの場合データクレンジングと名寄せを併用して問題を解決します。ただ、データクレンジングと名寄せをマニュアルで行うことは現実的ではありません。顧客データが100件程度ならまだしも、1,000件や10,000件となるとあまりに膨大な手間がかかってしまいます。
そこで、データクレンジングと名寄せを行うためのツールを利用するのが一般的です。
データクレンジングツールと名寄せツール
多くの場合、データクレンジングと名寄せは同時に行われます。そのため、データクレンジングツールと題している製品も、名寄せツールと題している製品も同じ機能を備えていることが多いでしょう。基本的な方法としてはデークレンジングや名寄せのキーとなる項目を設定し、それに合わせて顧客データを統合したり削除したりします。キーとして一意になりそうな項目としては以下のようなものがあります。
- 氏名
- ふりがな
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 自宅電話番号
- 携帯電話番号
- Emailアドレス
しかしながら、氏名では同姓同名の人がいますし、生年月日や性別では一意になりません。住所や電話番号も会社であれば同じ人が何人もいますので適当ではないでしょう。また携帯番号は取得するのにハードルが高いと思います。
ということで、多くの場合はEmailアドレスをキーにすることが多いです。事務所の移転等でも変更されにくく、また確認メール等で入力ミスを防ぐことも可能です。しかしながら、金融機関などの一部の業種ではその業務の性質上個人にメールアドレスを割り当てていないケースもあるので、会社名や氏名と複合的に確認するのがよいでしょう。
「きれいな」顧客データはマーケティング活動の起点
顧客データベースを重複のない最適なものにするためには、まずは入力時点で先述した表記ゆれを可能な限り少なくするということが大切です。たとえば登録のフォームを可能な限り選択式にし、フリーの入力を防ぐのです。
例えば、自社管理用の会社名のデータベースを用意しておき、フォームの会社名を入力する際に入力された名前から正式な会社名の候補リストを表示して選択してもらうということなどです。これによって、多くのデータのゆらぎを防ぐことができます。また、顧客会社名のマスターはCRMなどで管理されていることが多いので、それを会社名選択用のマスターとすることで、システム間の不整合も排除することができます。
また、外資系企業や一部のシステムでは、会社名などを英語表記でも管理している場合があります。この場合にも、マスター化して顧客からのフリーテキスト入力を防ぐことにより、整合性の取れたデータとすることができるでしょう。
以上のような入力時のフォームの工夫などでデータの重複は改善することができますが、しかし完全に防ぐことはできません。たとえば外部メディアからリードを取得する場合などは、このようなコントロールをすることは難しいでしょう。
そのため、できるだけデータ重複を防ぐ工夫をしながらも、定期的なデータクレンジングや名寄せは必要になります。これによって常に最適な顧客データベースを整えることがマーケティング活動にとっては非常に大切です。
まとめ
現在、顧客データの重複や不整合などに悩まされている方は、この機会にデータクレンジングツールや名寄せツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか?適切なマーケティング活動は「きれいな」顧客データベースがあってこそであり、それがないとマーケティングオートメーションもCRMも期待される効果は出ないでしょう。
いまいちど原点との言える顧客データをチェックし、効率的かつ効果的なマーケティング活動と営業活動との連携を図ってみてはいかがでしょうか。