近年、デジタルマーケティングにおいて、顧客IDを企業内で一元管理することを意味する「顧客IDの統合」が重要視されています。本記事では、顧客IDを統合して業務効率化を図りたい企業向けに、顧客ID統合のアプローチ方法や、統合に不可欠なCDPについて解説します。これらを参考に、顧客IDの実現化を目指しましょう。
デジタルマーケティングに欠かせない顧客ID統合
「顧客IDの統合」とは、事業やサービスごとにマネジメントされていた、顧客IDを一元管理することを指します。デジタルマーケティングでは、実店舗の顧客とオンラインの顧客を合わせた、企業全体の顧客IDを把握する必要があります。
企業がマネジメントしている顧客データは、毎日追加されていきます。オンラインの顧客とオフラインの顧客を分けてマネジメントしている場合、オンラインの顧客のみに対して、フォローアップメールやセールを通知するメルマガなどを配信しているケースもあるかもしれません。顧客IDが統合されていると、実店舗である商品を探している顧客に対して、ECサイトで残っている在庫を紹介できます。
顧客IDが統合されていない場合には、同じ商品をオンラインとオフラインのどちらかで、購入している顧客へのフォローやアプローチが難しくなり、販売機会を逃してしまうおそれがあります。ECサイトで気軽に購入する顧客が増加し、オンラインとオフラインをシームレスにつなげる「オムニチャネル化」が広がる今、企業全体を通した顧客IDの統合は、欠かせないものになっています。
顧客ID統合のアプローチ
「企業による一括名寄せ」と「ユーザーによる随時名寄せ」の2種類のアプローチがあります。顧客IDの統合方法はそれぞれ異なるため、その特徴から自社に適した方法を選ぶことが大切です。
企業による一括名寄せ
企業がすでに保有している顧客IDを名寄せして、新しいIDを作成するアプローチです。複数の顧客IDから、氏名やメールアドレス、電話番号などが一致する顧客を判別して統合する「決定論的マッチング」や、AIを利用して同一顧客の可能性があるデータを照合する「確率的マッチング」で、名寄せの処理を行います。
企業が内部で行う処理方法なので、自社内のデータだけで名寄せにすぐ取り掛かれる点や、多くの顧客データを新しいデータに移行できる点がメリットです。しかし、逆に大きなコストがかかる、今後の利用が見込めない顧客データがそのまま残ってしまう、などのデメリットもあります。
ユーザーによる随時名寄せ
既存の顧客IDを事業やサービスごとにマネジメントするために残し、統合用の新しいIDを作成するアプローチです。新規顧客には、原則として新しいIDで登録してもらい、顧客IDの保有者には、新しいIDの作成から既存IDへの紐づけを依頼します。
企業側は名寄せ作業が必要なく、新しい顧客データを新しいIDに移行できるなどのメリットがあります。ただし、既存データの保管が必要、統合後の新規顧客IDが大幅に減少するおそれがある、新しいデータが得られるまでに時間がかかる、といったデメリットに注意しましょう。
顧客ID統合のポイント
ポイントサービスやスマホアプリの活用が非常に重要で、実店舗とECサイトでの買い物では、それぞれの強みを活かした方法で行うことが大切といえます。
顧客にアクションを起こしてもらう必要がある場合には、ポイントサービスを活用する方法が有効です。顧客に不満を感じさせずに、IDの統合に協力してもらうためには、顧客のアクションに対して、ポイントを付与するサービスが適しています。
スマホアプリを実店舗の顧客IDの統合に活用すると、さまざまなメリットが得られます。スマホアプリのQRコードには、顧客IDを特定する仕組みがあるため、来店回数や購入内容などを簡単に計測できます。また、顧客の来店・購入履歴が蓄積されることで、適した時期にメールクーポンの配信やクローズドキャンペーンの実施を行えます。オフラインの買い物でも、データの保存が可能なため、オンラインと統合した後のID管理がしやすくなるでしょう。
顧客IDが統合されると、実店舗とECサイトで顧客情報がシームレスになり、実店舗では直接商品を見てから購入できる、ECサイトではいつでもどこからでも注文できる、などのメリットによって、顧客に最適なサービスの提供が可能なのです。
顧客ID統合に不可欠なCDP
「CDP」は「Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム)」の略で、日本語では「顧客管理システム」や「プライベートDMP」と呼ばれています。自社の顧客データに、氏名や年齢、性別、購入履歴などの一般的なデータだけではなく、自社サイトのアクセスログや広告データ、アンケートデータなどの多様なデータを、収集・統合・蓄積・分析を行うデータプラットフォームです。さらには、収集したデータを顧客IDに関連づけて統合する機能も備わっているため、自社の顧客IDを一元管理していく際に不可欠なシステムといえます。
CDPは、既存の会員情報や購入情報、自社サイトの閲覧情報など、収集したさまざまなデータを統合し、顧客のプライバシーに関する情報を除去した後に、分析・マネジメントします。分析したデータは、企画やシステム連携、広告など、マーケティングに欠かせない施策に活用されます。
CDPを利用するメリット
データの一元管理ができるようになり、チャネルを限定せずに、データの分析・可視化も可能です。マーケティング業務においては、データ分析やレポート作成などの業務を手動で行う必要がなくなるため、業務効率化にもつながります。
一元管理
CDPでは、氏名や連絡先といった顧客の基本情報、商品の購入情報、購入後のサポート情報など、さまざまな収集データを一元管理できます。これまでは自社サイトやSNS、スマホアプリなど、異なるチャネルで別々に顧客データがマネジメントされていた状態でしたが、CDPを利用した場合には、すべてのデータをリアルタイムでの確認が可能です。
データが一元管理されているため、顧客一人ひとりの情報を詳細に把握したうえで、的確な分析を行えます。メールマガジンを配信する際に、顧客に対して不要な情報を何度も配信するのではなく、興味や関心のある商品を絞り込んで、効果的に配信される仕組みになっています。
業務効率化
マーケティングでは、顧客の購入履歴や商品の売上などのデータを分析し、その結果をもとに売上の向上を目指して、営業施策を行います。日々のデータを収集して統合、必要なデータを抽出して分析する業務は、スタッフにとって店舗での日常的な業務と並行しているため、大きな負担がかかります。CDPを導入して顧客IDが統合されることにより、必要なデータの確認・抽出・分析の業務に関する負担の軽減が期待できます。
CDPの活用は、最適なマーケティング対策を行いながら、業務効率を高められるなど、さまざまなメリットにつながります。
次世代のCDP「SAP Customer Data Platform」で顧客IDを統合
「SAP Customer Data Platform」は、統合した顧客IDから顧客インサイトを集約できるほか、必要な顧客情報や分析データをリアルタイムで確認できる、カスタマーデータソリューションです。
マーケティングやコマース、セールス、サービスなど、あらゆるシーンで生じるデータを統合したうえで、オンラインデータとオフラインデータのすべてをマネジメントし、顧客の情報を詳細に分析します。顧客データの統合により、隠れたビジネスチャンスを見つけ出し、売上の向上を目指せるでしょう。
データの収集・統合は、顧客のプライバシーを尊重して行われるため、顧客からの信頼を築き、コンプライアンスのリスクがなくなります。目的に基づいた適切な顧客データのマネジメントにより、顧客に対して興味のある商品・サービスを絞り込んだ、適切なアプローチの実現化、さらには不要なメールの削減が叶います。
SAPソリューションを快適に運用し続けるために、導入後にはIT専門家、長期計画、組み込みチームなど、各専門チームのサポートを受けられるプランも準備されています。クラウドとオンプレミスのどちらのデータも、高いセキュリティによる安全性が確保されているので、重要なデータを効率よく活用できるでしょう。
まとめ
顧客ID統合とは、事業やサービスごとに分けてマネジメントしていた、顧客IDをすべて一元管理することを表します。オンラインとオフラインで分けてマネジメントされていた顧客も、同様に統合できるため、企業全体で顧客データを共有し、顧客に対して最適なサービスやアプローチが行える環境を整えられます。顧客IDの統合に欠かせないソリューションである、CDPを活用したデータマーケティングでは、業務効率化を図りながら、簡単に必要なデータの抽出・分析が可能です。