マーケティング

コンテンツマーケティング戦略 | コンテンツ飽和時代にとるべき戦略をトレンドからも学ぶ

どちらかといえばWeb制作側の言葉だった、「コンテンツ」。

それがマーケティングで頻繁に使われるようになったのは、「コンテンツマーケティング」が、Webマーケティングの主役となったからです。

ただ最近は、この言葉も一時期よりも使われなくなりました。

試しにGoogleトレンドで見ると、こんな感じです。

Googleトレンド

やはり2015年の方が多く、2016年は少し減少しています。

コンテンツマーケティングは安定期に入り、特別に話題にするまでもない手法として定着したのか。それとも単なるバズワードに過ぎなかったのか。

コンテンツマーケティングの現在とこれから。そしてどう取り組めば成果に繋がるのかについて、考えていきましょう。

コンテンツを巡る3つの言葉

Webマーケティングの用語は定義が曖昧です。

そのまま使っていると、人によって全然違うものをイメージしていた・・・という事にもなりかねません。

それを避けるために、コンテンツに関する3つの言葉について初めに整理しておきましょう。

コンテンツマーケティング

ユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供していく事で、ビジネスを成功へと導いていくマーケティング施策です。

ビジネスの成功とは、具体的には成果(コンバージョン)と捉えておくと良いでしょう。

自社サイト内、あるいはオウンドメディアなどのサブサイトを使ってコンテンツを提供する手法がよく知られています。

しかしそれだけではなく、メルマガやプレスリリースといった自社からの情報発信方法もこの範囲です。あるいはソーシャルメディアといった外部サイトの利用、またカタログやパンフレットといった紙媒体も、コンテンツとなります。

コンテンツSEO

質の高いコンテンツを掲載していく事で、検索エンジンの評価を高め、自然検索での上位表示を目指していくSEO手法です。

ペンギンアップデートとパンダアップデートが実施され、それまでのSEO手法が排除されていく中で注目が高まりました。

とにかく上位表示のためにはコンテンツを増やす事だ、という闇雲な量産も見られましたが、最近はそれは減って来ています。質の高いコンテンツでなければ検索エンジンからは評価を得られない、という意識が浸透しているようです。

コンテンツSEOとコンテンツマーケティングを比較すると、二つ大きな違いが見えてきます。

対象

・コンテンツマーケティング:ユーザー

↑↓

・コンテンツSEO:検索エンジン(Google)

目的

・コンテンツマーケティング:成果(コンバージョン)

↑↓

・コンテンツSEO:自然検索での上位表示

この違いは大切ですので、よく覚えておいてください。

なおコンテンツSEOというのは、検索順位だけを意識した日本のガラパゴス的な思想なので、あまりこの言葉に捉われる必要はないでしょう。

コンテンツストラテジー(コンテンツ戦略)

特に曖昧な用語です。

戦略部分を司るコンテンツマーケティングの上位概念という意見もあれば、インターネットの普及期に生まれたコンテンツづくりを示す言葉で、それを戦略的に展開させる事でコンテンツマーケティングが成り立つといったものもあります。さらに、この二つは同じものを指している、といった考えも多くあります。

これから日本でも、コンテンツストラテジーという言葉が多く使われていく兆しも見えます。

ここで無理に定義すると、後々違った使われ方が広まった場合にミスリードしてしまう危険性があります。現時点ではこうした用語もある、といった認識で良いでしょう。

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調査から見る実態

次に、実際の調査データを基に、コンテンツマーケティングの実態に迫っていきましょう。

全体像に関する調査

2015年の暮れに行われた、コンテンツマーケティングに関するヤフー株式会社の自主調査データです(掲載はWeb担当者Forum)。コンテンツマーケティングの実態が、俯瞰できます。

「コンテンツマーケティング1,000人実態調査」 他社の予算は? 人員は? 外注は?

(ヤフー株式会社自主調査 出典:Web担当者Forum  2016/2/24)

http://web-tan.forum.impressrd.jp/yahooads/2016/02/24/22140

この中から、特に注目したい設問をピックアップしていきましょう。

コンテンツマーケティングの実施期間

最も多いのは「3年以上」で、28.3%となっています。しかし1年未満の選択肢の値を合計すると、47.8%とほぼ半数の割合になります。

コンテンツマーケティングの実施目的

「顧客獲得」が51.8%で、半数を超えています。次が「売り上げ」で41.4%あり、トップの二つはハッキリとした成果を追っているのがわかります。

3位は「ブランド認知」、4位は「見込客育成」、5位は「顧客ロイヤリティ向上」となり、いずれも3割を超える値になっています。

コンテンツマーケティングの実施内容

この設問は、具体的にはどういった商品やサービスを扱っているかというものです。

「無形財」が42.7%で、「有形財」の28.2%を大きく上回りました。

コンテンツマーケティングの実施方法

「ソーシャルメディア」が66.6%で断トツでした。次が「自社ブログ」で49.1%、以下「メルマガ」「調査リサーチ」と続きますが、値は30%台になり、上位の二つに大きく引き離されます。

コンテンツマーケティングの効果指標

「ウェブサイトのトラフィック」が53.4%で半数以上を占めます。次が大きく離れ、「ブランド認知向上」で32.8%となります。「コンバージョン」は30.7%、「SEOの順位」は29.1%、「売り上げ」は28.3%です。

コンテンツマーケティングの非実施理由

この調査は、コンテンツマーケティングを取り入れていない企業の担当者にも行われています。非実施の理由としては「売上効果が期待できない」が27.0%、「効果測定が不透明」が25.0%で、トップ2となります。

考察

この調査データを、より深く見ていきましょう。

まずは重要ポイントを整理しておきます。

  • 「顧客獲得」や「売り上げ」といった、実際のコンバージョンを追う意識がきちんとある。
  • 一方で実際の効果指標は、「ウェブサイトのトラフィック」が圧倒的で、「コンバージョン」とはあまり設定されていない。
  • (コンテンツマーケティングを未実施企業では)実施しない理由として、「売り上げ効果が期待できない」や「効果測定の不明瞭さ」が挙げられる。

気になるのが、「コンバージョンへの意識が高いにも関わらず、実際の効果指標ではトラフィックが圧倒的に使われている」という点です。

通常の広告出稿であれば効果測定は提供されますし、SEOであれば検索での上位表示からの流入、そこからコンバージョン率を見ていけば成果の目安になります。

しかしコンテンツマーケティングの場合は、それがどれだけ成果に貢献したかを明らかにするのが難しくなります。

コンテンツマーケティングを行っていない企業が、効果測定の不明瞭さを実施しない理由に多く挙げるのも、この解決策が見えないからでしょう。

成果(コンバージョン)を追いつつも、それが測れない、測る方法がわからない、結果成果が出ているかどうかの判断が実はできていないという、いわば「理想と現実のギャップ」というジレンマに苦悩する担当者の姿が浮かびます。

有力な仮説

2で紹介した調査データの考察からは、やや脆弱に取り組まれているコンテンツマーケティングの実態が見えてきました。

ここからはコンテンツマーケティングの先進国、アメリカの話題も交えつつ、コンテンツマーケティングに関する「有力な仮説」を紹介していきます。

3.1 コンテンツは滅びる?

日本に先んじてコンテンツマーケティングが広がったアメリカでは、次のような話題が出ています。

  • コンテンツの爆発的な増加により、需要と供給のバランスは崩れている。
  • 多くのコンテンツマーケティングがこれから淘汰されていき、より厳しい競争の時代へと入っていく。

前者は「Content Shock」という投稿記事が有名です。後者は世界最大規模のコンテンツマーケティングイベントである、「Content Marketing World」で発せられた言葉です。

それぞれについては発言者の主観も入るので紹介しませんが、共通して言えるのは「コンテンツの飽和状態」です。

既に日本でも、専門家からはこうした状態が指摘されています。

コンテンツの世界は既にブルーオーシャンでは無くなっている、という訳です。

しかしそれをコンテンツはもう価値がない、効かないとするのはあまりにも短絡的です。

どう取り組んでいけば良いのか

それでは、コンテンツ飽和時代にどう取り組んでいけば良いかを考えていきましょう。

コンテンツは必要か?

まずは、激戦となっているコンテンツに取り組んでいくべきか否かです。

これは明確に、「Yes」です。

一つは、Googleが良質なコンテンツの提供を推奨しているからです。

ただしこれは、クローラー対策という小さな意味ではありません。

Googleは常に、「ユーザーファースト」を念頭に置いています。そのGoogleが力を入れているのが、「コンテンツ」です。つまりは、質の良いコンテンツの提供は「ユーザーのためになる」という証なのです。

またGoogleを抜きに考えても、コンテンツの提供は必須です。そもそもユーザーは、エンジニアの技術力や値札が付いた商品の羅列を見たいわけではありません。そこで何らかの、「体験」を得たいと考えています。

そうした体験をもたらすものが、コンテンツと理解する必要があります。

大切なのは何か?

しかしコンテンツをただ提供しているだけでは、激戦の中に単騎で乗り込んでいく、蛮勇に過ぎません。

そこで重要になるのが、「戦略」です。

残念なことに日本では、この戦略がおざなりです。

ですからコンテンツマーケティングで追うのは成果だ、という知識はあっても、実際には効果測定もできなくなるのです。

そして行き着く先は、「コンテンツマーケティングは成果が出ない」という結論です。

しかし単なるバズワードと違い、Googleが推奨し、ユーザーへの提供は不可欠なものですから、コンテンツの供給は続けていく必要があります。

成果の怪しいものを作り続けるのは、非常にストレスのかかる行動でしょう。

解決の鍵になるのは、冒頭で紹介をした「コンテンツマーケティング本来の目的」を進めていくうえでの、「戦略づくり」を徹底的に行うことです。

ペルソナやシナリオ、あるいはカスタマージャーニーマップといったものは、戦略の中のパーツだと認識してください。

戦略をきちんと組み立てればそれに必要なコンテンツづくり、それをどう展開させていくか、また何を基準に評価をしていけば良いかの指標が予め決まってくるはずです。そうすると、現状抱えているコンテンツマーケティングへのぼんやりとした不安は、大きく晴れていくでしょう。

事例から考える

最後に、ここまでで紹介した概念を実践する上でのヒントとなる、一つの事例を紹介していきましょう。

デジタルの話ではありません。

ANAの機内誌、「翼の王国」についてです。航空機内の座席ポケットに入った、冊子です。

これを取り上げるキッカケになったのは、あるイベントでインターネット以前からコンテンツマーケティングは存在する、その事例が「翼の王国」だ、という話を聞いたからです。

なるほどと思っていた矢先、久しぶりに飛行機に乗る機会がありました。

「翼の王国」をめくっていくと、すっかり出不精となった私も、旅行への欲求が高まっていくのが確かに実感できました。

良いコンテンツを提供する事で、ユーザーの感動体験を高め購買へと誘導する。

当たり前の基本が、ここには凝縮されていました。

さまざまな情報が押し寄せてくるデジタルマーケティングの世界では見失いがちですが、ユーザー視点となり、こうした原点とも言える形を思い出すのも大切な作業です。

またマーケターならば、ユーザーの高まった気持ちをどう購買に結びつける「仕掛け」がされているか。さらにはそこに、どういった戦略があるかも考えていくと、一段高いステージへと昇れるはずです。

まとめ

日本で行われているコンテンツマーケティングの多くが、「知識は豊富。実践はできていない」状態にありそうです。

従来から戦略面はあまり大切にされず、広告出稿や営業のマンパワーでそれなりの形にするのが、日本のマーケティングの欠点でもありました。

しかしコンテンツマーケティングでは、多くの部分をコンテンツが担う事になります。

いわばソースをたっぷりかけてそれなりの味にしていた料理を、素材の良さと味付けでの勝負にするようなものです。素材の良さがコンテンツ、また味付けが戦略という事になります。

それだけに難しいですが、これがはまった時の効果と達成感は計り知れないものがあります。

コンテンツを使いながらぜひ、「戦略的」なマーケティングの取り組みを実践してみてください。

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