2015年におけるマーケティング分野は、マーケティングオートメーション(MA)ツールが台頭した年でもありました。データを基にパーソナライズされたコンテンツを作成・配信してリードを獲得していく。そしてマーケティングの自動化こそがMAツールの中核でもあります。
しかし、MAツールと聞くとB2B向けのものが多くB2Cには弱いイメージを抱いている方が多いと思います。確かにスコアリングでホットリードを抽出する機能などは、明らかにB2B向けに設計されたものです。
実はB2C向けのMAツールというのは以前から提供されているものがあります。それこそが今回の本題であるCCCM(クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント)です。
既にマーケティング手法として一般化されているものでもありますが、改めて解説していきたいと思います。
横断的なキャンペーン展開でユーザーにより強く訴求する
さっそくですがCCCMの本質について説明すると、オンラインやオフラインを問わずユーザーとのあらゆるチャネル(接点)を横断的に活用し、これまでのマーケティングでは実現することのできなかったキャンペーンを展開することにあります。
チャネルとはWebサイトであったりメールレスポンスであったり、あるいは実店舗であったりユーザーとのすべての接点です。
複数のチャネルを横断的に活用しサービスを提供することで、ユーザーは新たな購買体験を得ることができます。従って、ユーザーのより深いニーズにアプローチをかけたり幅広いユーザー層へキャンペーンを展開することができるのです。
CCCMの具体的な活用例
Aさんはとある旅行代理店(B代理店)のWebサイトにて、北海道旅行のツアーを検討していました。閲覧から2日後、B代理店から「A様は現在3,000ポイントを所持していますので、3,000円分のツアー割引券を獲得することができます」といったメールが届きました。
しかしAさんはこのとき仕事中であったため、メールはいったん閉じ後ほど再確認することに。終業後、街を歩いているとスマートフォンに「最寄りのB代理店にて北海道ツアーに関する詳しいご説明が可能です。是非お立ち寄りください」とプッシュ通知が届きました。
ちょうど定時であがれたこともあり、AさんはB代理店へ足を運ぶことに。B代理店のスタッフは手元にAさんに関するデータ(個人情報保護を守った範囲で)が既にあるので、Aさんが来店するとスムーズに北海道ツアーの詳しい説明を始めました。
途中3,000円割引が可能であることをやんわりとプッシュされましたが、Aさんは再度検討することにして店を出ます。B代理店での説明を受けてから3日後、「北海道ツアーの残席数が残り3つとなりました」というメールを受け、Aさんはツアーへの申し込みを行いました。
この活用例では、AさんのWebサイト閲覧データとメールレスポンスデータ、実店舗のデータを活用しネットをリアルをまたいだサービスを提供しています。あらゆるチャネルがAさんのリアルタイムな行動に紐づいているので、オンラインとオフラインをまたいだサービス展開を行っていますね。
特にこうした店頭へ足を運んでもらうことで強く訴求できる商材では、チャネルを横断的に活用したマーケティングが強力に作用するでしょう。
もちろんこれ以外にもCCCMはあらゆるマーケティングに活用することができるツールです。
マーケティングをすべて手動で行うのは不可能
先程の活用例ですが、数十人ならまだしもB2Cでは対象ユーザーが数万にも数十万にもなります。はっきり言ってすべてのユーザーに対して手動でマーケティングを展開していくことは不可能です。
だからこそCCCMが必要であり、マーケティングの自動化でROIを最大限に高めていくことが必要なのです。
CCCMの仕組み
CCCMとB2B向けMAツールの仕組みというのは本質的に変わりません。まず重要なのはユーザーデータです。
Webサイト閲覧データ、メールレスポンスデータ、購買履歴データ、広告配信データ、ユーザー属性データ、位置情報、実店舗での行動データ。あらゆるデータをかき集めることでユーザーをセグメントしていきます。
次に重要なのはパーソナライズされたコンテンツです。
セグメントごとにコンテンツを最適化しOne2Oneマーケケティングを実現することこそ、CCCMのフィールドでもあります。大多数のユーザーにメール配信をするだけならば従来通りのメール配信システムを活用すれば事足りるでしょう。
そしてパーソナライズされたコンテンツは、最適なタイミングでユーザーに届ける必要があります。行動喚起をするコンテンツならユーザーが潜在ニーズを抱えているタイミングで。そしてコンバージョンへのCTAを配信するのであればユーザーニーズが顕在化した段階でといった具合に、必ず適切なタイミングがあるのです。
これを実現するのがシナリオ設定です。ユーザーが起こした行動によってコンテンツが配信されるよう、予めシナリオを決めておくことでマーケティングの大部分を自動化していくことができます。
そしてタイミングだけでなく適切なチャネルを定めサービスを展開していく。これこそがCCMの仕組みとなります。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)の普及でさらに強力に
DMPとは自社が保有するユーザーデータに関するすべてに加え、オーディエンスデータといった外部データを加えたデータベースシステムのようなものです。
つまりWebサイト閲覧データや購買データなど自社独自に取得できるデータと他Webサイトでの行動履歴などを融合した、まさにデータマネジメントのためのプラットフォームになります。
そしてDMPはマーケティング活用に最適化されたデータベースシステムですので、CCCMと掛け合わせることがより強力なマーケティングを展開することができるようになります。
現在では広告配信への活用がほとんどであり、なおかつ大企業を中心に導入さているDMPですが、今後コモディティ化やシステム面の強化が進むにつれ中小・ベンチャー企業でも普及が進んでいくのは間違いありません。
そしてDMPに蓄積されるデータをいかにCCCMで活用するかが、マーケティングビジネスを生き残るための手段となるでしょう。
ですのでB2C企業におけるマーケターの皆さんは、今のうちからCCCMに関するスキルやノウハウを身に付け来る「マーケティング戦国時代」へと備える必要があるのです。
まとめ
B2B向けMAツールの活用が難しいようにCCCMでも運用は簡単ではありません。大切なのは、たゆまぬPDCAサイクルを繰り返し、より価値の高いパーソナライズコンテンツをより適切なタイミングで配信していくことです。
今回の解説で素晴らしいツールであると感じていただけたかもしれませんが、導入さえすればROIが高まるという「打ち出の小づち」的な存在ではないのです。マーケターの皆さんはこの点を誤解しないよう注意し、CCCMに関する深い理解をしていければ確実に貴社のマーケティングは成長していくでしょう。
まずは本記事でCCCMの概要を掴めていただけたのであれば幸いです。