インバウンドマーケティングを実践していくと、サブスクライバーが増え、リード、MQLへと顧客が購買ステージを進んでいきます。そして、オートメーション化された状態を見ているのは楽しいものです。
しかし、これら購買ステージの変換を見ていても売上につながらなくては意味がないことは言うまでもありません。すでにマーケティングは自動化されているのだから、リードがMQLに達したらインサイドセールスがフォローすれば良いというわけではありません。
ユーザーは、常に購入シグナル(バイヤーシグナル)を発しています。購入シグナルとは購買を前提とした行動のことです。マーケッターは、それらをキャッチし適切な対応をすることも仕事の一つといえるでしょう。
今回は、ステージアップを加速させるためのタイミングとして最適な購入シグナルに関してご紹介します。
購入シグナルをビジネスプロセスに組み込む理由
例えば、あなたがアパレル店で販売業務を行っていたとしましょう。
来店中のお客様が2つの服を並べて悩んでいたら購買する可能性が高いと思いませんか?また、服を試着している人も買う可能性が高いと言えるのではないでしょうか?
そんな時に店員であるあなたが、気の利いた声をかけることで購買へと直結することはよくあることです。それとは反対に全く声をかけずにそっぽを向いていたら、お客様の購買意欲は減退して店を出て行ってしまう可能性もあります。
お客様は、購買前の特徴的な動作購入シグナルを常に発しているものです。この購入シグナルはB2Bマーケッターにおいても意識する重要ポイントであり、インバウンドマーケティングではいかにWebなどを通じてユーザーの購入シグナルをキャッチし、適切な行動を起こすかがゴールに直結すると言っても過言ではありません。
一般的にこの購入シグナルは突然やってくるものです。前述したアパレル店が広告を掲載して、Web上から10%オフ券を提供し、お客様を来店させ、というようにマーケッターが立案したストーリー仕立てのマーケティングキャンペーンとは別の購買行動である可能性も高いことを理解しておく必要もあるでしょう。
企業は、この購買行動を予測して業務プロセスに組み込んでおくことで、「ほったらかし」ではなく、「おもてなし」を実現できるようになります。
購入シグナルの代表的なパターン
それではB2B企業における代表的な購入シグナルをご紹介します。
1. 短期間に複数回サイトに訪問するユーザー
製品やサービスを検討する際に、多くのユーザーはWebに公開されている情報をしっかりとリサーチするものです。もちろん、そのリサーチはあなたのWebサイト以外でも行われていることでしょう。
もし1日の間に複数回あなたのWebサイトに訪問しているのであれば、おそらくそのユーザーは、あなたの販売したい製品やサービスを選定していると考えても良いでしょう。上司に起案するために情報を集めている可能性もありますし、より具体的な情報を精査して競合との違いを探している場合もあるでしょう。いずれしてもユーザーは情報を欲している状況であり購入シグナルであると言えるでしょう。
このような場合には、インサイドセールスや営業部門へとアラートを自動的にレポートし、即座にコンタクトすることでユーザーの手助けができるようになります。
2. 短期間に同じ企業のユーザーが複数回サイトに訪問
B2B企業の場合、製品の選定を複数人(もちろん一人の場合もあります)で行うことが一般的です。製品やサービスを選定している時というのは、その会社で何かが起こっておりチームが情報を共有しています。そしてなんらかの形であなたの会社に行き着き、メールや社内SNSなどを通じてあなたのWebサイトのURLが共有されていると言えるのではないでしょうか。
このような時というのは、一人のユーザーが資料ダウンロードなどを通じてコンバージョンしていますが(一人の起点に情報共有されている)、他のユーザーはコンバージョンしていない場合が多いものです。また、複数人はアクセスしているけれども誰もコンバージョンしていない場合も考えられるでしょう。
最近では、ほとんどのMAツールにはリバースIP検索機能が付いておりIPアドレスから会社名が判明するため既知のリードだけでなく、どのような会社があなたのWebサイトに訪問しているかを追跡することが可能です。たとえばHubSpotでは、毎日プロスペクトレポートとして関係者に興味を示しているであろう会社名をメールで通知してくれたりします。
もし短期間に同じ会社から複数回Webサイトへの訪問がある場合には、なんらかの形であなたの製品やサービスに興味を示している状態ですので、営業部門やインサイドセールスにアラートを発することが重要です。
3. 価格ページを訪問
ユーザーが、価格ページを訪問する時は一般的に2つのパターンが考えられます。
一つは、ユーザーが検討段階の初期である場合に、単純にあなたの製品やサービスの価格が予算にあうかどうかの判断を行っている場合です。そしてもう一つは、すでに営業部門がアプローチしていて真剣に検討してもらっている時に価格ページに再訪問する時です。
前者の場合には、Eメールを通じて相談に乗ってあげたり、無料トライアルやセミナーの案内などをすると効果的です。また、価格がボトルネックになっている場合には、自社製品やサービスの価値をしっかりと伝えたり、キャンペーンの案内をすることも有効でしょう。後者のすでに営業がアプローチしている場合には、その担当営業に価格ページに再訪問していることを知らせてあげるようにしましょう。つまり、契約締結の一歩手前であることを教えてあげるのです。
4. 導入事例ページを訪問
多くのB2B企業は、他の企業がその製品やサービスを利用してどのような効果を得たのかを知りたいものです。B2Cと違い失敗したら個人の責任ではなく会社の責任になるため、成功事例を知りたいのは言うまでもありません。また、いくつかの製品候補を選定する前のショートリスト作成時に導入実績がものを言う場合もあるでしょう。
一般的なユーザーは、製品やサービスが需要を満たすかどうかを決定するために、同じような課題を抱えているケースを探します。このような場合に、あなたの導入事例ページにトリガーを設置し、導入事例集の案内や追加でより詳しい事例のご紹介などをお知らせすることが有効かもしれません。
5. 無料トライアルに申し込んだ場合
あなたの企業が無料トライアルのような仕組みを提供している場合には、お客様が試着室で洋服を試しているようなものと認識しましょう。実際にB2B企業の場合には、ユーザーがトライアルを通じて優れた体験を得てくれることがゴールになります。そのためにステップ バイ ステップガイドの提供などを通じて使い方を迷わせない施策や特別な追加コンテンツの提供を行う必要があるかもしれません。また、ユーザーがトライアルを申し込んだにもかかわらず、全く使っていない場合には、滞っている状況を把握して助けの手を差し伸べたり、トライアルの締め切りが近ずいていることをお知らせすると良いでしょう。そして、トライアル終了を察知して、ユーザーの体験をヒアリングすることを忘れてはいけません。
6. フォーム入力はしたが送信ボタンを押していない
B2Cのオンラインショップの場合には、カートに入れっぱなしの状態の時には購入を促すアプローチをよく行います。これはB2Bの場合も同じです。ユーザーが、あなたの提供する無料小冊子に興味を示し、フォームを途中まで入力したにも関わらず なんらかの原因で「送信」ボタンを押さなかった場合にはフォローの必要があるでしょう。このような場合には電話をしてまで案内する必要はないかもしれませんが、確実にあなたの製品やサービスに興味を持っていることは事実です。このシグナルを察知した時には、より詳しい情報提供の案内や関連情報の提供、ウェビナーの案内などを行う良いタイミングである可能性があります。
7. ソーシャルから購入シグナルを発する
ユーザーは、あなたのWebサイトだけを回遊しているわけではありません。しかし、Webサイトから一歩外れると そのユーザーの行動を把握できなくなります。唯一、あなたがユーザーの行動を把握できるとすれば、それはソーシャルメディアということになります。そのユーザーが、ソーシャルメディア上であなたの製品や競合製品、関連する情報を発信する場合があるからです。
すでに営業部門に情報をパスしている場合には、製品名やサービス名、会社名などが登場することはないかもしれませんが、なんらかの不満をツイートしているかもしれません。そのような不満を営業に伝えることでフォローを行い満足度を高めることも可能になるでしょう。まだ、ナーチャリング中もしくはコンバージョンしていない場合であれば、マーケティング活動の一環として、課題解決のための提案をソーシャル上もしくはメールなど通じて行うこともできるでしょう。
HubSpotなどのMAツールでは、リードインテリジェンス機能によりコンタクト情報をTwitterユーザー名と紐づける機能を提供しています。そして、フォローすることで特定のキーワードをリスニングすることが可能です。ユーザーは、課題を解決したいという前提にたてば、あなたの提案を快く思ってくれるわけですから 手助けをするつもりで積極的にエンゲージメントを高めゴールに近ずけるのです。
システムと業務プロセスに購入シグナルを組み込む
「お問い合わせ」のような単純な購入シグナルを業務に組み込んでいる企業は多数あります。しかし、それだけでは顧客満足度の高い対応はできません。HubSpotのようなインバウンドマーケティングツールを実装することで、いくつかご紹介した購入シグナルをキャッチすることが可能になります。内部通知や自動応答などを通じて対応を自動化しておくことで抜け漏れない対応ができるのです。
このような購入シグナルに対する対応は、事前にマーケティング部門内もしくは営業部門との取り決めをしておくことが重要です。そうすることでタイミングを逸した活動から解放されるためユーザーの満足度を高めることが可能になり購買へとプロセスを短縮化することができるのです。上記の購入シグナルは一般的な例をご紹介させていただきました。自社の顧客像に照らし合わせてあなたの会社独自の購入シグナルを定義して業務プロセスに組み込んでみてはいかがでしょうか。