顧客体験(CX)

業務改革とは? ビジネスの進化につなげる鍵を探る

企業間での商取引においても、ニーズの多様化にあわせてCX(顧客体験)の最適化が求められるようになっています。柔軟かつ効率的な顧客対応を行うには、時に業務全体を見直し、業務プロセスを組み直さなければなりません。そこで本記事では、企業のマーケティング担当者へ向けて、業務改革(BPR)の重要性や進め方などを解説します。

業務改革(BPR)とは

BPRとは「Business Process Re-engineering」の略であり、業務本来の目的に沿って社内の業務プロセスを全体的に見直した上で、再設計・再構築(リエンジニアリング)を行うことです。
この考え方は、1993年に刊行された『リエンジニアリング革命』がベストセラーとなったことで、広く世の中へ知れ渡るようになりました。

業務改善との違い

BPRでは業務全体の見直しを行います。これに対し、似た用語の「業務改善」が意味するのは、業務の一部を改善することです。両者の違いは、見直しや変更の範囲にあります。

また、この見直し・変更の範囲の違いは、改革や改善を行う目的の違いにも表れます。より狭い範囲の業務を対象とする業務改善では、既存業務の効率化を目指すのに対し、業務改革は体制やプロセスなど、企業全体としての目標達成のために行うものです。

そのほか、こうした対象範囲や目的の差異から、以下のような違いも見られます。

  • 業務改革:大規模、反対者が多くなりがち、高難度
  • 業務改善:小規模、反対者は少なめ、低難度

とりわけ意識しておきたいのが、改革や改善に反対する者の多寡です。抜本的に行われる業務改革では、現状維持を目指す抵抗勢力が現れる可能性も高いため、目的意識の共有がより重要となります。

【動画】マーケティング担当者必見!スタートアップCEOと考えるCXの未来

【動画】マーケティング担当者必見!スタートアップCEOと考えるCXの未来

デジタル技術の進化と共に購買プロセスが大きく変化し、B2B・B2C に関わらず、購買者はあらゆるタッチポイントで一貫したサービスを求めるようになりました。この変化の激しい時代において求められる顧客体験とはどのようなものか?

本動画は、過去 SAP.iO のプログラムに参加し、当領域の最前線で活躍されているスタートアップ各社の CEO をお招きし、日本企業が目指すべき将来の CX のあり方などについてディスカッションした内容を収録しています。

動画視聴はこちら

なぜ業務改革が重要視されているのか

BPRが重要視される背景としては、大きく分けて2つの点が挙げられます。DX化の波と、働き方の多様化です。

まず、デジタル技術の活用を通じた企業組織の変革を意味する「DX」は、現代の企業経営に不可欠ともいえるほどに重要性を増しています。たとえば印刷機械を導入してチラシやパンフレットの印刷を内製化したり、AIをクレーム分析に活用したりするといったように、DXは幅広い業務領域に対応可能です。
ただ、DX化を推進する上では、旧来の業務プロセスを大きく変えなければいけないこともあります。そこで、変革の具体的な方法として、業務改革の考え方が注目されているわけです。

働き方の多様化に伴う労働環境の見直しや整備をする上でも、やはり業務改革は欠かせません。たとえばフレックス勤務やリモートワークなどを認めた場合、勤務評価や勤怠管理といった仕組みの再考も必要となります。
また、労働人口の減少を見据えた対策として業務改革が求められている側面も見逃せません。実際、経済産業省が公開する2018(平成30)年の資料によれば、2050年までに生産年齢人口の比率はピーク時の約50%にまで落ち込むと予想されています。ひとり当たりの生産性を上げるには、業務プロセスの効率化を要します。

参考:「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」(平成30年9月)|経済産業省

業務改革の進め方

以上の課題への対策として、ここでは業務改革の進め方を5つのステップで解説します。なお、各ステップは、必要に応じて行きつ戻りつして構いません。

1. 業務改革の目標設定

業務改革は、自社体制の抜本的な変革を行うという意味で、一大プロジェクトです。着手する前に、まずは方向性と到達地点を定めなければなりません。これは、「何が実現できたら成功といえるのか」という点の明確化をする上でも重要です。加えて、目指すべき目標があれば、業務改革の必要性を社内全体で共有しやすくなります。大掛かりな改革には反対者が出てくることも想定されるため、丁寧に理解を得るプロセスは必須です。

どのような目標を据えるべきかは企業ごとに異なりますが、B to B企業であってもCXの最適化は求められます。顧客のニーズや時流も踏まえつつ、最適な目標を設定してください。

2. 問題点と課題の洗い出し

目標が定まったら、次は現状確認です。自社の業務プロセスや意思決定のプロセスを再確認し、どこがボトルネックとなっているかを分析しましょう。こうした分析には、STP分析やSWOT分析といったフレームワークを活用すると便利です。

最近の企業が抱える主な問題としては、フロントオフィスとバックオフィスの分断によって顧客への応答に時間を要している点が挙げられます。たとえば、契約情報の確認や納期回答、在庫確認などが非効率となっているケースです。契約情報や配送状況などをシームレスに確認できなければ、顧客満足度も低下します。こうした点をひとつひとつ洗い出しましょう。

3. 改革実施の優先順位を設定

大きな改革であればあるほど、複数の課題に向き合う必要があります。しかし、あれもこれもと手を付けようとすると、いたずらに時間やコストばかりがかかってしまいます。

効果が表れるまで時間がかかりそうな事柄には早めに取り組む、大きなコストを要する設備投資は時機を見計らうなど、改革の順序やタイミングを慎重に判断しましょう。目標達成のためには、高い効果が見込める課題へ優先的に取りかかることも重要です。

4. ビジネスプロセスの再設計

ここまでの3ステップを踏まえ、課題を解決するための戦略や方針を固めます。既存のビジネスプロセスを解体し、不要な部分は廃止して、効率的になるよう組み替えましょう。

自社内で取り組むのが合理的ではない部分はアウトソーシングする、逆に外注でコストがかかっているなら内製化を考えるといったことも重要です。また、財務会計や人事管理などへのERPシステムの導入も検討の余地があります。

5. 実行と評価

策定した業務プロセスはただ実行するだけでなく、業務のモニタリングと効果測定を行い、期待した成果が表れているかを評価する必要があります。そうでなければ、ただフィーリングで変えたのと変わらないことになってしまうからです。

目標の達成度を確認し、不十分であれば改善点をフィードバックできるようにしましょう。各部門や部署へのヒアリングを行い、全体的に判断することが肝心です。

業務改革を進める際のポイント

ゼロベースで考える

改革において大鉈を振るおうとすると、抵抗勢力が現れるなどの理由から、どうしても既存プロセスを残したくなりがちです。しかし、それでは部分最適化に過ぎず、業務全体としては歪な建て増し状態となってしまいます。

新しい手法や発想を取り入れ、根本的に業務体系やプロセスを変えようとするのであれば、あくまでもゼロベースで考える必要があります。

PDCAのサイクルを回す

業務改革は、一度実行して終わりではありません。抜本的な改革をするとはいえ、目標とのズレなどが生じた場合には適宜ステップを戻して再検討する必要があります。この際にはPlan、Do、Check、Actionのサイクルをフレームワークとして用いるのがおすすめです。

事前に数値目標を設定しておくことで、改革の効果や達成度が可視化されるため、業務プロセスの改善もしやすくなります。また、目標が達成できた後でもさらなる改良点がないかどうかを検討しましょう。

関係部署で情報共有する

企業全体の業務プロセスを見直すわけですから、目標や課題などの情報も企業全体で共有しておかなければなりません。大きな変革を予定していない部署にも情報を伝えておかないと、後々に意思伝達の齟齬が生じるなど、かえって非効率になりかねないため、注意が必要です。

あくまでも、企業が一丸となって業務改革に取り組めるよう、情報の周知徹底を図りましょう。

まとめ

業務改革(BPR)とは、業務プロセスの全体的な見直しと再設計・再構築のことです。実行にあたっては、目標設定・課題の洗い出し・優先順位付け・ビジネスプロセスの再設計・実行と評価、という5つのステップで進めます。CXの最適化や、それに向けたERPの導入も検討し、業務改革を成功させましょう。

優れたCX を実現する「顧客データ」活用のあり方を探る
  • fb-button
  • line-button
  • linkedin-button
TOP