一般的に消費者の短期的な購買行動を説明するのに利用されるAIDMAですが、消費者の購買決定の過程を表したモデルAMTULをご存知ですか?
AMTULの各プロセスを具体的に理解できれば、見込み客がどのように顧客へと変貌していくのか心理的な変化について分かるようになります。
リードナーチャリングやカスタマージャーニーを設計する上でも必要な考え方ですので、AMTULの基本的な知識やAIDMAとの違いについて説明していきたいと思います。
AMTULとは?
AMTULは、消費者の長期的な心理の移り変わりに着目したモデルであり、試用や使用、愛用へと見込み客の心理の変化を5段階に分けて表現しました。
- A:Awareness(認知:気づき)
- M:Memory(記憶:覚える)
- T:Trial Use(試用:試す)
- U:Usage(使用:利用する)
- L:Loyal Use(愛用:固定客になる)
上記の各プロセスを理解すれば消費決定に至り、固定客になるまでのプロセスを手軽にチェックできます。では、どのようにチェックするのか簡単に説明します。
AMTULを利用したプロセスのチェック方法
上記の頭文字を横1列に並べてください。横1列に並べたら、日本語訳についても横に並べます。
【A】→【M】→【T】→【U】→【L】
【認知】→【記憶】→【試用】→【使用】→【愛用】
ここで、自社のことを認知してくれる見込み客の数を入力していきます。今回は、1000という数字を入力してみたいと思います。
【1000】→【500】→【100】→【50】→【10】
このデータから分かることは、10人の愛用者を生み出すためには、1000人の見込み客に認知してもらわなければいけないということです。また認知から記憶に移る時、数字が2分の1に一気に減少していることが分かります。
このようなプロセスを全体から把握することで、どの過程に大きな問題を抱えており、固定客として何人に残すことができるのか定量的なデータとしてチェックできます。考え方はLeadからMQL、Opportunityというようなマーケティングファネルと同じです。
このチェック方法を上手く利用できれば、最終的に固定客を最大化するために、どの過程を強化すれば良いのかマーケティング担当者として正しい判断が下せるようになります。
AMTULの基本要素となる5つのステップ
AMTULを理解する最大の目的は、各ステップにおける見込み客の減少を抑えることです。見込み客の減少率を下げるためには、各基本要素についてどのような意味があるのか、または、どんな行動をとるべきなのか具体的な施策について知っておく必要があるため要点を押さえて説明していきます。
【A】Awareness(商品認知率)認知や気づき
自社で開発した商品やサービスについて知っていただくことを意味しています。認知的領域を広げるためには、コストを考慮しながら露出度高めていく必要があるため、どこまでなら予算として支払えるのか具体的な金額を算出しておくと良いでしょう。商品認知率を上げるためには、ポスティングや新聞、テレビ、ラジオ、名刺効果、看板、Facebook、Twitter、LINE、チラシ広告、ホームページなどの施策を実行していく必要があります。
【M】Memory(商品記憶率)覚える
テレビやラジオやホームページを利用して、商品やサービスの紹介をするからには、見込み客に具体的な特徴や名前などを覚えていただく必要があります。商品やサービスの名前として、他では絶対に聞いたことがない名前や思わず口ずさんでしまうようなキャッチコピー、ソーシャルメディアで拡散したくなるような特徴的な包装を行うことで、商品記憶率を上げることができます。
【T】Trial Use(トライアル率)試用
実際にお金を払って購入するまでには、色々と葛藤があるものです。「本当にお金を払う価値はあるのだろうか。」「お金を払っても本当に大丈夫なのだろうか。」と多くの見込み客は、自分の行動に対して自信が持てないのです。そのような状態に陥っている見込み客に対しては、期間限定で試しに利用させてあげたり、全額返金保証や返品保証をつけてあげたりすることで、購入時に生じるような疑問を解決してあげてください。
【U】Usage(顧客リピート率)使用
見込み客が、この状態に到達すると、商品やサービスに対して非常に満足している可能性が高いです。お客様を飽きさせることさえなければ、将来的なリピーターとなってくれるため、顧客管理系の施策を徹底的に行っていくと良いでしょう。例えば、お客様と接するときは、必ず名前でお呼びし、ダイレクトメッセージや手紙、アンケートなどを利用することで顧客ごとのデータベースや店員や販売店ごとの顧客管理台帳を作成していくことで顧客リピート率を上昇させることができます。
【L】Loyal use(ファン顧客率)愛用
AMTULで最終的に目指すべき場所は、Loyal useです。同業他社で同様の商品やサービスが提供されていたとしても、最後の愛用者に該当する顧客は、自社から購入してくれる可能性が高いです。このレベルの顧客は、ブログやソーシャルメディアを利用して口コミやお客様の紹介をしてくれる可能性が高いため、マーケティング上で最も大切にしなければいけない存在です。愛用者には、自社にとって大切な存在であることや特別な存在であることを柔軟な対応や言葉で意識的に伝えていきましょう。日頃からお互いの信頼関係を築き上げておくことで、ブログサイトなどに掲載する「ユーザーの声」を書いてもらうこともできます。
AMTULとAIDMAの違い
AMTULの理論とAIDMAの理論は、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。まずは、英語の頭文字について明確化していきます。AMTULが理解できれば、それほど難しくはないでしょう。
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
見込み客の注意を引いて、商品やサービスについて関心を寄せてもらい具多的に訴求していくことは、AMTULと変わりがないようにも思えます。
しかし、欲求から行動までの3つの過程を見た時に、大まかな概要しか表現できていないことに気づかれると思います。AIDMAの理論で利用される行動ですが、見込み客はお金を払うことに躊躇してしまうため、試したり、買って使ってみたり色々な状況があったと思います。
そのような状況をAIDMAでは、上手く表現できませんがAMTULなら上手く表現できます。これが、AMTULとAIDMAの違いなのです。
AMTULの活用例
AMTULが利用されている典型的な事例をご紹介したいと思います。今回紹介するのは、ダイレクト出版という企業の事例です。
A:Awareness(認知:気づき)
ダイレクト出版は、インターネットのリスティング広告を利用してビジネス書籍を販売する会社で、自社でリスティング広告を打ちながら、アフィリエイターを利用して大々的に広告を行っています。
M:Memory(記憶:覚える)
ダイレクト出版のランディングページを確認すると、企業経営者に向けたキャッチコピーがずらりと並んでいます。例えば、「知らない間に買っている、欲しいが産まれるメカニズム」といったようなものです。売上を伸ばしたいと考える方に向けたメッセージとなっています。
T:Trial Use(試用:試す)
全額返金保証を利用することで、購入に対するハードルを下げようとしています。
U:Usage(使用:利用する)
この状態になると、愛用のビジネス書籍として、時間があれば読んでいる状態となるため、リピーターとなってもらうために色々な書籍を紹介していきます。
L:Loyal Use(愛用:固定客になる)
本の魅力について紹介すると、お金が入る仕組み(アフィリエイト)を利用して、口コミによって情報を広げてもらいながらも、サービスに飽きが来ないようにビジネス系の関連書籍を定期購入してもらいます。
このようにダイレクト出版は、AMTULを利用して費用対効果の高いマーケティングを実施しています。集客から固定客に変貌するまでの過程を、顧客視点に立って理解することができれば、業務改善ができるようになります。
私たちのマーケティング活動でもしっかりと考えて取り入れていきましょう。