現在世界中で市場拡大傾向にあるマーケティングオートメーション、米国では2019年までに55億ドル(約6,720億円)の市場規模に成長すると見込まれています。
国内においても拡大傾向を見せる中、2016年はマーケティングオートメーションに対する理解や運用課題の解決が叫ばれている年となっています。
実際に本稿を読まれている方の中にも、マーケティングオートメーションへの投資に意欲的な方が多いのではないでしょうか?
“理解すること“と“課題を把握すること“が現状多くのマーケターに求められていることなので、今回はマーケティングオートメーションを「解決できる課題」と「運用の課題」という2つの観点で見つめていきたいと思います。
マーケティングオートメーションについてのおさらい
マーケティングオートメーションを簡単に言うと、主にWebマーケティングのおけるプロセスを自動化し業務効率化と売上げ向上を目的としたソフトウェアです。「MA」と略されることが多く、インバウンドマーケティング時代と言われている現代においてより効率的にマーケティングを展開するために、ニーズが急速に拡大しているツールとなります。
現在リリースされているマーケティングオートメーションのほとんどはクラウドベースで利用するものであり、大企業を始め中小企業やスタートアップにおいても導入が進んでいます。
マーケティングオートメーションとマーケティングプラットフォームの違い
混同されがちな2つですが、「集客施策」「販売促進」「顧客管理」「顧客分析」という4つのプロセスを抱えるマーケティングにおいて、マーケティングオートメーションが自動化するプロセスは「販売促進」「顧客管理」の2つです。
これに対しマーケティングプラットフォームは4つのプロセスを一貫してカバーし、統合的なソフトウェア環境を提供しています。
ただし、どちらも明確にすみ分けされているわけではなく、マーケティングプラットフォームもマーケティングオートメーションの一種というのが一般的な認識です。
ちなみに世界で最もシェアを獲得しているのはHubspotであり、統合的なプラットフォームを提供しています。
マーケティングオートメーションの主な機能
- リード管理
- メール配信
- SEO管理
- アクセス解析
- シナリオ作成
- スコアリング
マーケティングプラットフォームは以上の機能に加え「ブログ」「LP」「ソーシャルメディア」「分析」などを提供します。機能詳細はこちらからどうぞ。
マーケティングオートメーションで解決できる4つの課題
今まで取りこぼしていたリードをカバーできる
セミナーやイベントといったオフライン集客から得られるリストのうち、すぐに案件化出来るのは(良くて)全体の25%程度です。このため多くの企業が残りの75%の管理を疎かにしていたのですが、近年この75%のうち80%は2年以内に案件化できるとの調査結果が出ています。
こういったすぐには案件化されない「まだまだ客」を適切に管理することが可能なため、将来的な成約数を伸ばすことが可能です。
購買意欲の低かったリードをナーチャリング(育成)できる
上述した「まだまだ客」はいわゆる購買意欲の低い“コールドリード”というやつですが、ポテンシャルに関しては測定できない部分が多いです。こういったコールドリードをナーチャリングできるのも、マーケティングオートメーションの利点でしょう。
具体的には、ベストプラクティスをもとにシナリオを作成し、効率的に購買意欲を高めていきます。メール配信やブログを活用し適切なコンテンツを届けることで、自社に対するロイヤリティを育てることも可能です。
スコアリングでアプローチの最適なタイミングがわかる
スコアリングとはいわばリードの行動に合わせて採点することで、購買ステージを把握するためのものです。リードの購買ステージを把握することで「今すぐ案件化できるリード」や「まだまだナーチャリングすべきリード」など、現在取るべきアクションを明確にすることができます。
WebサイトやLP作成のPDCAサイクルを高速化
マーケティングプラットフォームでは、マーケティングオートメーションの基本機能に加えWebサイト作成やLP作成といった機能も追加されます。Webデザイナーやプログラマーなしで行え、マーケターの施策をすぐに反映させることができるのでPDCAサイクルを高速化できます。
効果測定と改善のスピードが重要されるコンテンツマーケティングにおいては重視すべき点でしょう。
これら4つは従来のマーケティングや営業が最も多く抱えていた課題であり、かつ現代ビジネスにおいて解決が急かされている課題でもあります。しかし、こうした課題を解決はできるものの、運用に関する課題もあることを忘れてはいけません。
マーケティングオートメーション運用の5つの課題
正しいスコアリング設計
マーケティングオートメーション運用において最もつまづく課題が、このスコアリング設計です。適切なリード管理を実現するために重要な機能でありながら、ナレッジやノウハウ不足から失敗する企業が多く存在します。
正しいスコアリングを設計するためにはまずペルソナとカスタマージャーニーマップを作成し、それに基づいた配点をしていくことです。
ちなみに配点の基準を簡単にまとめると以下のようになります
- 顧客属性:企業規模、従業員数、担当者役職など
- 顧客行動:Webサイト閲覧回数、資料ダウンロード、セミナー参加など
- 行動時間:直近のWebサイトアクセス日など
業務フローの整備
「マーケティングプロセスを自動化する」という性質上誤解されがちですが、マーケティングオートメーションではこれまでのプロセスがガラッと変わります。もちろん、業務効率化になるのは事実ですが変化するプロセスに対応できず導入につまずく企業も珍しくありません。
今までのプロセスが変化するということを理解、マーケティングオートメーション導入に合わせて業務フローを整備する必要があります。
ソフトウェアのトレーニング
これまで点在していたマーケティングツールの操作は、多くの企業で属人化していたため一つに統合されると各マーケターがトレーニングをする必要性が出ていきます。ソフトウェアに関するトレーニングはやはりベンダーサポートを活用するのが一番なので、短時間で多くのことを吸収しようという気概が必要です。
コンテンツの充実性
マーケティングオートメーションにとってコンテンツとはガソリンのようなものであり、充実させることが絶対条件です。ホームページ、ブログ、メールマーケティング、ソーシャルメディアなど、各メディアのコンテンツを充実させることで初めて効果を最大化できます。
実は多くの企業でコンテンツ不足が問題となり、マーケティングオートメーションの効果を引き出せていないというケースがあります。
ですので、マーケティングオートメーション導入以前にコンテンツマーケティングを検討することも重要です。
メールマーケティングへの過度な期待
以下はHubspotのCEOであるブライアン・ハリガンのコメントです。
“Email marketing still works, but far too many companies overestimate its power as marketing channel. Over the last decade, humans have shown a great ability to get unwanted, unsolicited marketing out of their lives (DVR’s, Caller ID, Ad Blocker Software, etc.). On the email side, spam protection put a pretty big roadblock up.”
「メールマーケティングは未だ機能しています。しかしあまりにも多くの企業が過大評価してしまっているのも事実です。ここ10年間において、私たちは私たちの生活の中から不要なマーケティングを排除するための機能を得てきました(DVR、番号通知サービス、アドブロック、etc)。そしてメール配信においては、スパムメール機能といった大きな壁が存在しています。」
これは、企業におけるメールマーケティング依存の危険性を示すと共に、マーケティングオートメーションの活用が単なるメール配信システム化している企業への忠告でもあります。
マーケティングオートメーションに対する理解を深め、単なるメール配信システムにならぬよう活用することが重要です。
まとめ
今回は2つの観点からマーケティングオートメーションに関する“課題”を見つめてみましたが、運用の課題に関しては多くの企業がスルーしてしまっている部分です。
つまり解決できる課題ばかりを見てマーケティングオートメーションに対する期待が膨らみ、導入に踏み込んだ結果失敗してしまっている起業が非常に多く存在します。
このため、今年はマーケティングオートメーションへの理解と運用課題の解決が重視されている年でもあるのです。
マーケティングプロセスを統合し自動化するということは、業務効率化や売上げ向上へとつながる反面、入念な運用設計の重要性が高まります。
今後マーケティングオートメーションの導入を検討している企業は、この点をきちんと理解しベンダーのサポートを頼りつつ運用を軌道に乗せていくことが大切ではないでしょうか。