期初に立てた予算(売上目標、利益目標)は、どう管理すれば効率的に達成できるのでしょうか?予算を立てて終わりではなく、それぞれの目標に向かってしっかりと事業運営ができているかどうかを定期的に把握することが大切です。本記事では、予算達成に欠かせない予実管理について紹介します。
予実管理は予算計画に対する進捗確認を行うだけでなく、企業の経営状況を知ることにも繋がります。いわば「会社の健康診断」のようなものなので、今まで実施してこなかったという方はぜひ参考にしてください。
予実管理とは?
予実管理とは文字通り、「企業が立てた予算と実績を管理すること」です。予算実績管理と呼ぶこともあります。一般的には企業としての予算(事業利益、諸経費)、営業としての予算(売上、仕入、営業経費)などの数値目標に対して、計画通りに実績が推移しているかどうかを定期的に確認し、管理します。
予算は期内における企業の経営目標のようなものであり、目標は立てるだけでなく達成に向けて効率よく事業活動を行っていかなければなりません。しかし、多くの企業では予算を立てたにも関わらずそれを追うことなく、期末になって初めて予算が達成されるか否かを知ります。これはまるで目隠しをしながら迷路を歩くようなものであり、目の前にある重要な道標を見逃し、どこに行きつくのかがまったく把握できません。
なぜ予実管理を行うのか?
予実管理を実施すると、期初に設定した予算に対して実績がどの程度クリアできているかが把握できます。冒頭で予実管理は「会社の健康診断」と説明しましたがまさにその通りです。人が健康診断を定期的に行う目的は、体の健康状態を把握して、異常があればいち早く察知するためです。
予実管理にも同じことが言えます。予算に対して実績がどうかを把握することは、売上目標や利益目標を達成することに限らず、企業の経営状況を正確に把握した諸問題をいち早く察知するためのエコーのような役割があるのです。
また、予算と実績があまりにかい離していることが把握できると、そもそも予算設定が正しくないと判断できます。予算目標を高く設定することは良いのですが、実現不可能なレベルの目標は予算としてふさわしくありません。組織全体のモチベーションを低下させる原因にもなります。
予実管理のポイント
予実管理を徹底すると、予算に対する実績が定期的に把握できるようになります。しかしながら、予算と実績を突き合わせて確認するだけで終わっても意味はありません。予算に対して実績が足りない場合がほとんどです。この時、「予算に対して実績が足りなかったから来月また頑張ろう」と決意するだけでは何の意味もありません。
予実管理を実施する上で重要なポイントは、実績を確認した上で計画通りに進んでいなければ、「どうすれば予算達成ができるか?」を考えることです。そのためには、予算に妥当性と納得感があるかどうかをチェックし、実績を構成するさまざまな情報を収集・分析しなければいけません。
そしてもう1つ重要なポイントが、「予実管理のリアルタイム性」です。予算に対する実績を評価したとしても、それが1ヵ月や2ヵ月前の情報ならば意味はありません。実績は日々の積み重ねで変化するものですし、こうしている今も回っています。ならば、限りなくリアルタイムな実績情報を収集して、予算と突き合わせて評価しなければ予実管理の意義を失ってしまいます。
予実管理を実施する方法
予実管理を進めるにあたってまず決めるべき数値目標が「営業利益」です。企業というのは利益を出してこその組織であり、利益が無ければ持続的に成長することや、経営が傾きかけた時のためのキャッシュを残すことができません。そして利益とは「売上-経費」で算出される数値なので、売上がどれほど多くてもその分経費を使っては利益が出せません。一方、売上が想定以下であっても経費が少なければ黒字となり利益が出ます。つまり、予実管理でまず大切なのは「正確な営業利益目標を立てること」なのです。
ただし、銀行融資や投資家からの融資などレバレッジ(他人資本)をどんどん聞かせて事業拡大を目指している企業の場合、営業利益は毎期赤字計上というケースもあります。その際は「経常利益」で予実管理を行っていくこともよいでしょう。その際は、営業利益目標を立てるのと同じように、目標となる経常利益を過去・直近の利益実績から算出します。
予算を立てている段階ではあくまで予想値なので、予想利益から予算を立てることになります。まずは月次試算表から損益を確認し、実績としていくらの利益や損失が出ているかを把握しましょう。そこから売上目標、固定費目標、変動費目標などの予算を算出していきます。
予実管理は現実的な予算を立てることがとても重要です。だからこそ、達成する時もあれば達成しない時もあります。大切なことは、結果がどちらに転んだにせよ、その要因を深く分析した持続的な改善活動に取り組むことです。ちなみに予実管理を実施する際は、以下のような表を作成することで取り組みやすくなります。
<予実管理表の一例>
当月発生 |
当月予算 |
差額 |
予算比 |
前年同月 |
差額 |
前年比 |
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売上高 |
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売上原価 |
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売上総利益 |
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給料手当 |
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法定福利費 |
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接待交際費 |
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旅費交通費 |
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通信費 |
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水道光熱費 |
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消耗品費 |
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租税公課 |
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支払手数料 |
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減価償却費 |
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販管費計 |
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営業利益 |
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営業外収益 |
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営業外費用 |
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経常利益 |
予実管理を能率的に行うためには?
企業が予実管理を行う上でリアルタイム性が欠かせないと紹介しました。では、それをどのように実現すればよいのでしょうか?
まず、予実管理は一般的に経理担当者の仕事というイメージが定着しています。しかしながら、予算と実績を評価するためには組織内に点在しているさまざまな情報を集約しなくてはいけないため、予実管理は経理担当者個人のものではなく組織的に実施すべき仕事です。つまり、営業部門や製造部門など複数部門の協力が必要です。
そしてもう1つ大切なことは、予実管理をリアルタイムに実施するために「システムを統合すること」です。社内のあちこちに存在する業務システムの中には、予実管理に欠かせない情報が詰まっています。リアルタイム性を追求するとなると、これらの業務システムを統合してあらゆる情報を一元的に管理できる環境を整えなければいけません。
その際におすすめなのが「クラウドERP」です。ERP(Enterprise Resource Planning)とは統合基幹システムといって、会計システム・営業システム・生産システム・販売システム・購買システムなど経営上欠かせない業務システムが予め統合されています。これをクラウドサービスとして提供するのがクラウドERPです。
クラウドERPを導入することで、あらゆる情報を一元的に管理するための環境が整います。しかも、従来のように社内システムを構築する必要はなく、システムや機能はすべてインターネット経由で提供されます。初期投資を抑えながら大規模なシステム環境を構築し、かつ運用負担も限りなく軽くなるため、人的リソースも開放されます。
正確かつリアルタイム性の高い予実管理を検討する際は、クラウドERPの導入をぜひご検討ください。