米国のマーケティング学者であるエドモンド・ジェローム・マッカーシー(Edmund Jerome McCarthy)は1960年に「ベーシック・マーケティング(Basic Marketing)」という著書にて“マーケティングの4P”について提唱しています。同著は1978年に東京教学社から翻訳版が出版され、今もなお書店に並び、マーケティングの教科書や原典として親しまれています。
4Pとは、企業がマーケティングについて考える際に、その考えをうまく取りまとめるためのフレームワークです。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)という4つの要素から構成するので4P、あるいは“4P分析”と呼ばれています。
本稿ではこの4Pについて基礎を整理し、実際の活用方法やCRMとの関係についてもご紹介します。
4Pとは?
4PにおけるProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)、それぞれのポイントを1つずつ確認していきます。
Product(製品)
企業が提供する製品、あるいはサービスは利益の源泉となるものです。製品の品質やデザイン、ブランド名、パッケージ、サービス、保証までを含め製品だと言えます。ここで理解しておきたいポイントは、製品を通じて顧客のニーズをどう満たすのか?製品を通じて提供できるメリットやベネフィットとは何か?という観点を常に持つことです。自社の製品が市場においてどのような価値を持つかを知ることも重要であり、これは製品価格を決定付ける大切な要素になります。
Price(価格)
製品やサービスを市場で販売する上での価格のことです。製品がターゲットとする消費者層は、価格を設定することで自然と決定します。そのため製品が想定するターゲットを明確にした上で、購入してくれる価格なのか?製品価値との整合性は取れているか?十分な利益が得られる価格かどうか?を慎重に検討することが大切です。
Place(流通)
製品のコンセプトや価格が決まった上で、ターゲットに対してどのように製品を届けるか?を考えることはマーケティングの要とも言えます。製品を市場に流通させるための方法は自社店舗、百貨店、ECサイトなど様々な形態があります。いずれの流通形態でも、ターゲットへ確実に製品を届けられる方法を検討し、その妥当性も同時に検討することが大切です。これに加えて、流通は製品に与えるイメージが大きく、製品コンセプトとの整合性を取ることも欠かせません。
Promotion(販促)
製品コンセプトはそこに関わる様々な要素、製品価格、流通形態が決まれば最終的に必要なのは如何にして製品を認知したもらうかという施策です。どれほど優れた製品でも、それがターゲットに認知されなければ意味はありません。さらに認知してもらった上で、そこから購入に至らなけらば利益は発生しません。従来のマスマーケティングならば街頭広告やテレビCMが一般的でしたが、現在ではWebサイトやSNS、メルマガやLP(ランディングページ)など様々なマーケティング施策が存在します。製品情報を確実にターゲットに届け、かつ購入に至るような動線設計を作ることが肝要になります。
マーケティング戦略の立案・実行プロセスにおける4Pの役割
マーケティング戦略の立案・実行プロセスは大きく6つのステップに分類して考えられます。
- マーケティング環境分析と市場機会の発見
- セグメンテーション(市場細分化)
- ターゲティング(市場の絞り込み)
- ポジショニング
- マーケティング・ミックス(4P)
- マーケティング戦略の実行と評価
マーケティング・ミックスとは企業がターゲット市場において、目的を達成するために用いられる、コントロール可能なマーケティング施策を組み合わせることです。大方4Pのことを指し、各要素を整理し整合性を取り、複数のマーケティング施策を組み合わせることで製品やサービスを確実に訴求します。
このため、マーケティング戦略の立案・実行プロセスにおいて4Pは非常に重要な役割を持っており、4Pを戦略的に考えることで製品やサービスが売れるか売れないか、が大きく分かれます。
4Pを考える際に大切なポイントは各要素について個別に考えるのではなく、全体の整合性に意識を向けることです。たとえば高単価ワインを販売するにあたって、高価格に設定しマーケティングのためのWebサイトに高級感を持たせたとしても、流通形態がディスカウントストアでは整合性が取れているとは言えず、販売利益を最大化することも難しいでしょう。
さらに4Pは“STP(Segmentation、Targeting、Posiotionig)”との一貫性を持たせることも大切です。
4Pと組み合わせるべきマーケティングの4Cとは
4Pは広く知られているマーケティングの基礎です。それに対し“マーケティングの4C”は4Pに比べて広く浸透していません。この4CとはCustomer Value(顧客にとっての価値)、Customer Cost(顧客が費やすお金)、Communication(顧客とのコミュニケーション)、Convenience(顧客にとっての利便性)、といった4つの要素を指しています。
Customer Value(顧客にとっての価値)
製品やサービスを使用することで顧客が得られるメリットや、解決できる悩み。
Customer Cost(顧客が費やすお金)
製品やサービスを使用することで顧客が削減できる金額や時間、あるいは避けられるリスク。
Communication(顧客とのコミュニケーション)
顧客が可能な限り早く、かつ手間をかけずに製品情報や製品を入手するための方法。
Convenience(顧客にとっての利便性)
顧客と企業、双方向のコミュニケーションを生み出すための手段。
これらの4つの要素は、企業視点でマーケティングについて考える4Pとは違い、いずれも顧客視点で製品やサービス、情報やコミュニケーションなどについて考えています。ですので4Cは製品やサービスを客観的な視点で見つめ、自社の強みや弱みを把握したり、改善点を見つけたり、最適なマーケティング施策を展開するために欠かせないものです。
4Pは知っていても4Cは知らない、という方も多いでしょう。マーケティングについて考える際は4Pだけではなく必ず4Cも取り入れて、さらにSTPとの一貫性も考慮して色々な施策を立案していきましょう。
マーケティングと4Pと4Cと、そして、CRM
本稿で皆さんにお伝えしたいことは、マーケティングを考えるために4Pと4Cを組み合わせることがは大切だということ。それと、適切なマーケティング施策を展開するために“CRM(Cutomer Relationship Management)”活用が欠かせないということです。
マーケティング戦略の立案・実行プロセスにおいて、マーケティング・ミックス(4P)に至るまでにマーケティング環境分析と市場機会の発見、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(市場の絞り込み)、ポジショニングという4つのプロセスがあることをご紹介しました。
これらのプロセスを完了するためには、CRMから得られる顧客情報を色々な角度から分析し、その情報をもって4Pを考えていくことが大切です。マーケティング施策を最適化するためにはまず、既存顧客の情報を分析した自社製品やサービスを購入する顧客の特徴を理解するところから始まります。
そのため、CRMを運用して顧客情報を適切に管理・蓄積し、さらにその情報をリアルタイムに分析するための環境が必要になります。
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