デジタライゼーションとは、デジタル化された情報を用い、業務プロセス自体をデジタル化することです。デジタライゼーションでは、組織全体を見据えたデジタル化を行い、DXへつなげる観点を持つことが重要となります。
デジタライゼーションのポイントは、見える化や自動化・遠隔化です。これらを行うために注目されている技術として、RPAやインテリジェントオートメーション・IoT・デジタルツインがあります。本記事では、デジタライゼーションの意味や注目される理由、メリットや技術、導入時のポイントはどのようなものでしょうか。
デジタライゼーションの意味とは?デジタイゼーション、DXとの違いは?
デジタライゼーションの意味
デジタライゼーションとは、デジタル化された情報を用い、業務プロセス自体のデジタル化を指します。
たとえば、もともと手作業で行っていた契約書類のチェックからファイリング保管までのプロセスをOCRを活用してデジタル化してAIでチェックし、かつクラウドに格納することで、人為的なミスや業務工数の削減につなげるといった活動を指します。
デジタライゼーションでは、各工程がすでにデジタル化されているのを前提に、各工程のつながり、および工程全体(プロセス)のデジタル化を行います。
デジタライゼーションが注目される理由とは
経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」では、日本の企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)として、組織全体の業務・製造プロセスにおいてツールを活用してデジタル化を行い、事業やビジネスモデルの変革を行う必要があると指摘しています。
DXを行わければ業務効率・競争力の低下により、2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円もの経済損失が発生すると予測されています。
デジタイゼーションとDXの違い
DXの具体的なアクションを行う上で、経済産業省の「DXレポート2中間取りまとめ」では、DXを異なる3つの段階に分解しています。
- デジタイゼーション(Digitization):アナログ・物理データのデジタルデータ化
- デジタライゼーション(Digitalization) :個別の業務・製造プロセスのデジタル化
- デジタルトランスフォーメーション:(Digital Transformation:DX) 組織横断/全体の業務
- 製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革
デジタライゼーションは、個々の業務や製造プロセスのまでを対象としてデジタル化します。
デジタライゼーションでは、組織全体を見据えたデジタル化を行い、DXへつなげる観点を持つことが重要なのです。
デジタライゼーションのメリット
各工程のデジタル化であるデジタイゼーションのメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
大幅な業務効率化
業務の工程間もデジタル化することで、デジタイゼーション以上の業務効率化や精度の向上が見込めます。
担当者は、手作業がデジタイゼーション以上に減ることで、付加価値の高い業務に専念できるようになります。
オペレーションの効率化
機械類の運転・操作といったオペレーションでトラブルが発生した場合、従来はトラブルの後に、原因の解析と対策を行っていました。
オペレーション装置にセンサーをつけ、センサーからシステムに随時、もしくは一定間隔で情報を送るようにすると、故障やその兆候などの異常を探知し、オペレーションの停止を防止できるようになります。結果として、定期メンテナンスの回数を減らすことにつながります。
デジタライゼーションで注目されている技術
プロセスデジタル化のポイントは、見える化・自動化・遠隔化です。
これらを実現するために注目されている技術として、RPAやIPA・IoTやデジタルツインがあります。
ロボティックプロセスオートメーション(RPA)
RPAとは、ロボティックプロセスオートメーションの英語の略称です。これまで人間が直接パソコン上で行っていた業務や、さらに高度な作業を、デジタルロボットが代替してくれるものをいいます。
RPAに人が行っていた作業の処理手順やデータを登録しておけば、人が操作するのと同様に、複数のシステムやアプリケーションを操作・実行できます。
インテリジェントプロセスオートメーション(IPA)
インテリジェントプロセスオートメーション(IPA)はRPAと人工知能(AI)を組み合わせ、ビジネスを高度に自動化させる仕組みです。
RPAでは、事前に人が作業プロセスを解析した上、作業の処理手順やデータの登録を必要とします。IPAでは、この登録作業自体をAIが提案してくれます。
IPAはRPAの高度な自律化であり、CA(Cognitive Automation)と呼ばれることもあります。
すでに、人々が普段使う言葉を機械が解析し理解する「自然言語解析」や「機械学習」(ML)といった技術などにより、業務プロセスの分析や改善だけでなく意思決定までを自動化したツールが現実のものとなっています。
IoT(モノのインターネット)
IoT(モノのインターネット)とはセンサーや監視カメラといった情報を検知するモノが、インターネットを介して行う情報の送受信を指します。
IoTデバイスとは一般的には、産業用センサーや家庭用の通信機能付きの機器であるスマートホームデバイスを指します。
とくに産業用センサーは、あらゆる場所から定期的にデータ測定、送信を行うことで、人がデータを収集するコスト削減し、迅速な意思決定へとつながります。
デジタルツイン
デジタルツインとは、現実世界(物理空間)の情報をデジタル化し、仮想空間(デジタル空間)上に作成したモデルです。
狭義では、デジタル空間での分析から、現実空間の将来予測を可能とする動的モデルを指します。広義では、3Dモデル等もデジタルツインと呼ぶ場合もあります。
デジタルツインの実現には、リアルタイム、もしくは定期的にさまざまな機器などから情報を取得する必要があるため、IoTが欠かせません。
デジタルツインの情報を使うことで、将来の分析やシミュレーションを行えるようになります。
分析やシミュレーションから、設備のトラブル前の対応や、遠隔地からの業務ができるようになり、大幅なコスト削減や業務効率化が実現できるのです。
デジタライゼーション導入のポイント
デジタライゼーションを導入する際のポイントについて確認していきましょう。
業務プロセス最適化
業務プロセス最適化とは、既存の業務プロセスを見直し、生産性の向上につなげる取り組みです。各プロセスを最適な状態にできれば、コスト削減や生産性向上となり、ワークライフバランスの最適化へもつながるため、従業員のモチベーションも高まるでしょう。
業務プロセス最適化のポイントは、「業務の見える化」「現状のプロセス理由の再考」「マルチスキル人材の育成」の3つです。
業務の見える化
作業工程を分解し、どの作業にどれだけ時間や、距離を費やしているかを明確にします。
そのうえで、どの作業の時間を短くすると生産性が高まるか、を検討します。
見える化を行うことで、作業の不必要な部分が浮かび上がり、従業員を説得しながら具体策を示すことができるようになります。
現状のプロセス理由の再考
問題の原因を探る方法として、トヨタ自動車発案の「なぜなぜ分析」が有名です。
なぜなぜ分析同様に、現状のプロセスとなっている理由を何度も掘り下げてみましょう。
よく調べてみると、現状にはそぐわない理由や、思い込みで現状のプロセスとなっている点が発見できるケースもあります。
マルチスキル人材の育成
業務プロセスの見直し後は、デジタル化を取り入れつつも、従来の仕事をより少ない人数で処理していくようになる必要があります。
あらかじめ、複数の業務をこなすマルチスキル人材を育てることで、業務プロセス見直し後の人材配置をスムーズにし、別の業務をこなす目線を身に着けられるようになるでしょう。
データの統合およびサイロ化の防止
多くの業務上のプロセスは部署間をまたぐため、その部署間のプロセスをつなぐには、部署間のデータをスムーズに受け渡しできるようにする「データの統合」が必要となります。
データ統合における問題は、「サイロ化」です。
サイロ化とは、部署やシステムが独立して業務を行っているため、すぐに情報の連携が図れない状態になっていることをいいます。
サイロ化を解消するには、部署同士の責任者が相互理解を深め、目標を共有していくことが重要です。そのうえで、部署間をまたぐデータに、他のツールやシステムのデータ形式をどのように合わせるかを検討していきます。
まとめ
本記事では個々の業務や製造プロセスまでを対象としたデジタル化である、デジタライゼーションについて解説しました。デジタライゼーションでは、デジタル化を取り入れた業務プロセス最適化により、大幅な業務効率化とオペレーションの効率化が可能となります。
見える化や自動化、遠隔化を可能とする技術を取り入れ、DXへつながるデジタライゼーションを実現していきましょう。
デジタライゼーションの代表的なサービスである「Microsoft Power Platform」は、さまざまな業務システムのデジタル化を、プログラミングの知識が無くとも可能にします。
業務アプリを直感的な操作で作成することや業務の自動化・承認フローの作成・データ収集・チャットボットの作成などが可能です。
DX実現に向けて、このようなIT基盤の導入は不可欠のため、是非検討してみてください。