「ビッグデータ」という言葉が流行したのは、2012年頃です。定義についてもさまざまなものが登場し、語り尽くされてブームが去ったと思われがちですが、実際は違います。昨今企業が取り扱っているデータのほとんどはそもそも「ビッグ」であり、データという表現を使えばビッグデータを指すようになったからだと言えます。
そして、ビッグデータを活用する手段として同時期に再度注目されていたBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールもまた、広く定着するようになりました。今では、スピーディかつ正確な意思決定を下すために、BIツールが欠かせません。
本稿では、まだBIツールを使ったことがない方、もしくは昨今のBIツール事情を知りたい方に向けて、そもそもBIツールとは何なのか?何のために使うのか?何ができるのか?についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
BIツールとは?
「ビジネス・インテリジェンス(Business Intelligence)」という言葉は、組織の中で日々蓄積されていくさまざまなデータを、収集/加工/分析のプロセスを通じて新しい情報に変換し、経営層や意思決定者に報告することで経営上の意思決定に役立てる手法や技術のことです。BIと情報分析をイコールで考えることが多いですが、実際はデータ収集~レポート作成までを指す言葉です。
そしてBIツールは、そうしたプロセスをIT面から支援するためのソフトウェア製品のことを指しています。BIツールはさまざまな業務システムと連携し、必要なデータを収集/加工/分析してからレポートとして出力するための機能が備わっています。
なぜBIツールが広く定着したかというと、「データ分析の専門家でなくても、分析活動への取り組みを実現したから」です。多くのBIツールが想定するユーザーは、データ分析に関する専門的な知識/技術を持った人ではなく、企業の現場部門で活躍する人たちです。
たとえば営業部門の誰もがデータサイエンティストのように、データ分析に取り組めたらどんなことが起こるでしょうか?営業担当者1人1人が細かい顧客分析を通じて、顧客ニーズを正確に把握し、効率よくセールスを展開できるようになります。それはつまり、会社としての利益となります。
BIツールのタイプ
一口にBIツールといっても多様なものがあります。それらを大まかにカテゴライズすると、①レポーティング、②OLAP分析、③データマイニング、④プランニングという4つのタイプに分類されます。
①レポーティング
どれほど素早く、かつリアルタイムに問題の兆候を発見できるかに重点を置いているのがレポーティング型のBIツールです。企業が基幹システムに構築しているあらゆる経営活動データから、ビジネスパフォーマンスを計測し、監視します。経営活動に何らかの異常があれば状況評価と分析が行われ、経営者に通知されます。効率よく経営目標を達成するのに強く貢献するBIツールです。
②OLAP
問題の要因を深く掘り下げていき、原因特定のための検証を得意としているのがOLAP型のBIツールです。経営活動において何か問題が起きた場合は、その問題点を細かく分析し、原因を特定し、修正のための意思決定を下す必要があります。このBIツールは意思決定プロセスに必要な、問題点の分析と検証を素早く行ってくれるものです。ちなみにOLAPは「Online Analytical Processing(オンライン分析処理)」の略であり、経営情報が蓄積されているデータベースから、さまざまな角度から問題点と解決策を発見します。
③データマイニング
レポーティング型/OLAP型のBIツールは、定量的数値のなかで設定された閾値を超えた場合、それを通知したり、問題の検証を行ったりするのが目的です。一方、データマイニング型のBIツールは無数のデータの中から相関関係や因果関係を自動的に見つけ出して、問題に対処するためのヒントを与えてくれます。たとえば「休日のECサイト利用者数が減少した」という問題に対して、様々なデータを多角的に分析することで「天気や気候が関係している」などの事象を確認できます。昨今ではこの領域においてAIや機械学習が搭載されてきています。
④プランニング
上記3つのBIツールと少し趣向が異なるのがプランニング型のBIツールです。このBIツールは、経営層が行う予算編成や管理会計に役立てるためのものであり、計画の根拠を得るために過去実績データの分析や、未来シミュレーションなどを行います。トップダウン形式で予算編成を実施する際に、為替変動や需要予測などから売上と利益の成長性をシミュレーションし、予算計編成の具体性と確実性を向上することができます。
BIツールを導入するにあたり、これら4タイプすべてを兼ね備えたBIスイートを導入することだけが正解ではありません。大切なのは、「意思決定プロセスの中でどこに時間がかかり過ぎているか?」を把握して、ベストなBIツールを選ぶことです。
BIツールを導入するには?
BIツールの導入形態を大まかに分類すると、①ERP組み込み型、②クラウド型、③ソフトウェア型の3つから選択することになります。
①ERP組み込み型
文字通り、ERP(統合的基幹システム)に最初から組み込まれたBIツールを指します。このBIツールのメリットは、各基幹システムとの連携性が保たれているため、スムーズなデータのやり取りによって分析処理やレポート作成を素早く行える点です。また、PoC(事前検証)を実施する必要が無いため、BIツール導入にかかるプロセスを大幅に削減できます。
②クラウド型
サーバーやパソコンにソフトウェアをインストールすることなく、Webブラウザ経由で利用するBIツールのことです。導入が非常に素早く、イニシャルコストも低いためBIツール市場に主流にもなっています。幅広い連携性も持ち合わせているので、既存システムに合ったものが選択できるでしょう。
③ソフトウェア型
サーバーやパソコンにインストールして利用するか、BI組み込み型ハードウェアをネットワーク上に設置して利用するタイプのBIツールです。カスタマイズ性に優れており、あらゆる分析にも対応できるのが大きな強みです。
その反面、保守運用やメンテナンスをすべて内製化する必要があり、かつ導入コストも高めになります。
BIツール活用を始めてみよう!
BIツールと聞くだけで導入難易度が高いように感じますが、実は無料で使い始められるBIツールはいくつか提供されています。Microsoft製の「Power BI(パワー・ビーアイ)」もそのうちの1つです。無料版のPower BIはレポート共有こそできないものの、BIツールに必要な機能は兼ね備えていますので、入門ツールとして利用するには十分過ぎるほどです。ぜひこの機会に、BIツールを活用してみてはいかがでしょうか?もちろんMicrosoft Dynamics 365との相性は最高になっています。