「レガシーシステム」に明確な定義はありませんが、一般的に「自社システムの中身が不透明であり、自分等の手で修正できない状況に陥ったシステム」のことを指します。また、経済産業省が2018年9月に発表した『DX(デジタル トランスフォーメーション)レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』によると、レガシーシステムを抱えている企業では以下のような課題を感じています。
- 「ドキュメントが整備されていないため調査に時間を要する」
- 「レガシーシステムとのデータ連携が困難」
- 「影響が多岐に わたるため試験に時間を要する」
※(2 DX推進に関する現状と課題 2.2.1 DXの足かせとなっている既存システム)より抜粋
本記事を読まれている方の中にも、会社でレガシーシステムを運用し続けている方は少なくないでしょう。ここでは、レガシーシステムが具体的にどういった問題点を持っているのか?を紹介します。
レガシーシステムが抱える問題点
レガシーシステムを運用し続けていることの問題点は、「自社システムがブラックボックス化する」ことに集約されています。実は、古い技術を使っているからといってレガシーシステムだと認定されるわけではありません。その分け目はやはりブラックボックス化しているか否かです。では、システム内部が不透明になることで、具体的にどういった弊害が発生するのでしょうか?
システム障害への対応が常に送れる
企業が運用するシステムは日常的に問題が発生します。システム障害が発生した場合、迅速な対応によって問題を解消し、円滑な業務遂行をサポートしなければいけません。しかし、ブラックボックス化している環境ではシステムの中身を理解している人がいないか、極端に限られることから障害対応が遅れ、業務パフォーマンスの低下を招きます。
システムパフォーマンスの改善が難しい
レガシーシステムが影響を与える範囲は他のシステムにも及び、システム環境全体のパフォーマンスが低下します。ブラックボックス化しているためシステムパフォーマンスの改善も難しく、問題はそのままになってしまいます。
ビジネス要件を満たすことができない
目まぐるしく変化するビジネス環境の中で、企業が抱えるビジネス要件も常に変化していきます。また、ビジネス要件に応じてシステムへ変化させる必要があるため、レガシーシステムを運用していると企業が望むビジネス要件が満たせない可能性が高いでしょう。
運用管理費用が肥大化し戦略的なIT投資ができない
レガシーシステムを運用し続けると、ブラックボックス化したシステムへの対応や運用管理作業に追われることが多くなり、運用管理費用は肥大化していきます。DXレポートによると、レガシーシステムを運用し続けることでIT予算の9割を運用管理費用に費やすことになり、戦略的なIT投資ができなくなります。
デジタル活用が遅れビジネスの敗者に
ブラックボックス化したシステムは、新しい技術の採用を拒絶します。また、戦略的なIT投資ができなくなることで新技術への投資が行えず、他の先進的なデジタル企業にどんどん遅れを取ることになるでしょう。デジタル活用の遅れが行き着く先は、新時代のビジネスの敗者という姿です。
アドオン・カスタマイズの積み重ねによる一層の複雑化
レガシーシステムのまま新しい技術の採用やビジネス要件への対応を推進しようとすると、アドオン・カスタマイズがどんどん積み重ねられていきます。そうするとレガシーシステムは一層の複雑化を極め、いよいよ手が付けられなくなるでしょう。
このように、ブラックボックス化したレガシーシステムには解決が難しい問題が山積みです。これらの問題点を解消するためには相当な時間をかけて新しいシステムへと移行するか、既存の業務プロセスなどを含めた改革を実践しなければいけません。
「2025年の崖」に向けた対策、DXとは?
経済産業省では、レガシーシステムを運営し続けたり、深刻な社会問題を無視したまま経営を続けたりすることで、日本企業の多くは「2025年の崖」に落ちると警鐘を鳴らしています。「2025年の崖」は、日本が抱える社会問題やIT課題などがさまざまな問題を起こす年だとされています。
それと同時にDXレポートで紹介されているのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要性」です。DXとは新しいデジタル技術を用いて、既存のシステム環境、業務プロセス、企業風土、ビジネス習慣などあらゆる分野に変革をもたらすことであり、新商品や新サービスの開発、新しいビジネスモデルの創出などにも効果があると言われています。そして、DXには以下のプラットフォームの活用が重要になります。
クラウドコンピューティング
いわゆる「クラウド」と呼ばれるプラットフォームは、企業がこれまで抱えてきたインフラ問題を解消するのに有効なデジタル技術です。システム基盤をオンプレミスからクラウドへ移行することで、柔軟かつ拡張性の高いシステム基盤を手に入れ、開発環境なども容易に構築できます。また、最短・低コストでインフラ調達を行えることから、ビジネスニーズの変化へ素早く対応できるのも大きなメリットです。最近では、クラウドERPなど大規模なシステム環境をサービスとして利用する企業も増えています。
ビッグデータアナリティクス
データが重大な価値を持っていることは誰もが理解しているところであり、膨大かつ多品種なデータを分析することでビジネスに新しい価値を創造できることは事実です。DX先進企業では自社製品から得られる膨大なデータを解析して、新しいビジネスモデルを確立しているケースもすでに珍しくありません。
モバイルネットワーク
スマートフォンが爆発的に普及したことで、今ではパソコンからのインターネットアクセス率を超え、生活の一部として定着しています。ユーザーはスマートフォンを通じて生活の利便性を手にし、ショッピングもコミュニケーションもすべてスマートフォン上で完結させています。このモバイルネットワークを活用することで、自社製品やサービスを1つ上のステージへと推し進めることに繋がります。
AI(Artificial Intelligence)・IoT(Internet of Things)
AIおよびIoTは、すべての企業にとって無視できない新技術です。IoTから収集したデータをAIが解析して、それをIoTに返す。これだけで今までになかった革新的な製品やサービスを展開できます。また、AIが営業活動を支援するような事例もあり、AIが人間に代わって判断する機会は今後どんどん増えていきます。これらの新技術を如何に取り入れていくかが重要ですが、レガシーシステムのままではそれがかなわないでしょう。
いかがでしょうか?深刻な問題点をいくつも抱えるレガシーシステム。それを解決するための策として、DX推進を検討してみましょう。