DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術による変革を意味する言葉です。企業がDXを推進することで業務効率化や競争力の確保などにつながります。大企業はもちろん、発展途上の中小企業こそDXを推進すべきであり、資金力に乏しい中小企業でもDXを実現させることは可能です。ただし、中小企業がDXを成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
本記事では、中小企業がDXを推進すべき理由や課題を明らかにし、中小企業がDXを実現させるために押さえておきたいポイントなどを解説します。
現在の中小企業が抱える課題
日本企業の大多数は中小企業です。中小企業は慢性的な人手不足や技術継承などの問題を抱えています。これらの問題は中小企業の発展を阻害しており、DXを推進することは中小企業が抱えている経営課題を解決することに貢献します。
中小企業は大企業と比べると優秀な人材を確保するのが難しく、中小企業の多くは慢性的な人手不足の状態に陥っているのが現状です。人手不足の状態が続くと1人当たりの作業量が増えてしまい、残業時間の増加やモチベーションの低下などによって職場環境が悪化します。
また、人材不足は後継者不足や技術継承の問題にもつながります。後継者や技術を継承する人材がいないと、企業の永続的な発展は見込めないでしょう。日本は少子高齢化が進んでおり、中小企業の慢性的な人手不足は今後ますます深刻になると予想されます。
加えて、労働生産性の低下も中小企業が抱える問題のひとつです。大企業と比べると中小企業の労働生産性は低く、国際競争力の低下の大きな原因になっています。日本の国際競争力を高めるためには、中小企業の労働生産性を向上させることが重要です。日本が今後も経済大国として存立できるかどうかは、中小企業の労働生産性の向上にかかっているといえます。
中小企業こそDXを推進するべき理由
DXを推進することは、業務効率化や競争力の確保などにつながります。慢性的な人手不足や労働生産性の低下などの問題を抱えている中小企業こそDXを推進すべきです。ここでは、中小企業こそDXを推進すべき理由を詳しく解説していきます。
業務効率化
中小企業こそDXを推進すべき理由のひとつとして、業務効率化につながる点が挙げられます。DXを推進すると、これまで人が行ってきた作業をシステムで行えるようになり、業務効率化や人手不足の解消につながるからです。
例えば、これまでFAXを送受信することで行ってきた業務をクラウドやRPAで自動化することにより、業務効率が格段にアップします。また、FAXがオフィスに届くのを確認するために出社する必要もなくなるでしょう。
業務効率化が進むと人手不足の解消や労働生産性の向上にもつながり、中小企業が抱える大きな問題が解決します。業務効率化を進めるためにも、中小企業はDXを推進すべきでしょう。
競争力の確保
DXを推進すると企業競争力の確保につながる点も、中小企業がDXを推進すべき理由のひとつです。DXを推進して最新技術を網羅できれば、市場のトレンドにも迅速に対応できるようになり、時代の流れに合わせた対策を立てやすくなります。
例えば、DXを推進して映像授業サービスを開発した学習塾は、オンライン授業に特化するという新しいビジネスモデルを確立し、新たな受講生の獲得に成功しています。また、DXを推進して動画配信サービスという新しいビジネスモデルに転換したことで、Netflixは世界的なコンテンツプラットフォームに成長しました。
このようにDXを推進すると企業競争力の確保にもつながります。今は無名の中小企業でも、将来世界的な大企業に発展する可能性を秘めているのです。
働き方改革の実現
厚生労働省が提唱している「働き方改革」の実現に寄与することも、中小企業がDXを推進すべき理由のひとつです。働き方改革は長時間労働の解消や多様な働き方の推進を目的としていますが、DXを推進することで働き方改革の実現にもつながります。
例えば、ビデオ会議システムや勤怠管理システムを導入してテレワークを実現できれば、柔軟な働き方も可能になります。また、物理的な場所に依存せずに働けることで、生産性の向上にもつながるでしょう。
中小企業のDX実現を阻む壁
中小企業こそDXを推進すべきですが、DX実現を阻む壁がいくつも存在します。主な問題としては、DXへの理解不足やアナログ文化の定着などが挙げられます。中小企業がDXを推進するためには、DX実現を阻む壁を取り払うことが重要です。
中小企業におけるDXへの理解不足は、経営者と従業員の双方に見られます。特に経営者がDXへの理解が不足しているとDXの推進は難しいといえるでしょう。一方で、現在はコロナ禍でテレワークが着目されており、DXについて検討する中小企業が増えつつあります。コロナ禍の今こそ、デジタル化を促進する絶好の機会といえます。
また、印鑑の押印やFAXなどに代表されるアナログ文化が根強く定着していることも中小企業のDX実現を阻む壁になっています。テレワークを導入しようと検討しても、印鑑を押印したりFAXを確認したりするためにオフィスへの出社が必要であれば、テレワークの導入は難しいでしょう。
加えて、情報のサイロ化も問題といえます。サイロ化とは、業務プロセスや各種システムが孤立しており、情報連携されていない状態を指す言葉です。各部署が個別のシステムを使うことでうまく情報共有が行われずに、無駄が発生してしまいます。
DXを推進して中小企業が抱える問題を解決するためには、旧態依然としたアナログ文化から脱却し、時代に即したデジタル化に切り替える必要があります。そのためには、経営者と従業員の双方の意識改革が重要になるといえるでしょう。
DX推進を成功するためのポイント
DX推進を成功させるためのポイントとして、IT人材の確保やスモールスタート、補助金の活用などが挙げられます。ここでは、これらのDX推進を成功させるためのポイントについて詳しく解説し、どのようにすればDX推進を成功できるのかを明らかにしていきます。
IT人材の確保
DX推進を成功させるためには、ITを深く理解しているIT人材の確保が欠かせません。社内にITに精通している従業員がいれば、ITに詳しい従業員を選抜して新規部署の設立を検討しましょう。既存業務とIT業務を兼務するのではなく、IT業務の専従者を確保することが重要です。
新規雇用が必要であれば従業員の募集を行い、IT人材の確保に努めましょう。優秀なIT人材を確保するためには、まず社員が働きやすい環境を整えることも重要なことのひとつです。
スモールスタート
DX推進を成功させるためのポイントは、「スモールスタート」で始めることです。会社全体が意識を徹底し目的を明確にすることも大事ですが、DX推進の意識が低い企業ではいきなりすべてをDX化するのは難しいでしょう。
まずは優先順位の低いところや低予算で進められる範囲からスタートして、徐々に広げていくことが望ましいといえます。デジタル化による業務効率化などの効果を実際に見せることで、意識改革が進むことが期待できます。
補助金の活用
資金力に乏しい中小企業でも補助金を活用することでDX実現は十分可能です。政府もDX実現に向けた取り組みを実施しており、DX化に役立つ補助金も用意されています。中小企業向けの制度として、IT導入補助金や中小企業デジタル化応援隊事業などが挙げられます。IT導入補助金をITツールの導入経費の一部に充当することで、費用を抑えてDXの実現に取り組めます。
まとめ
デジタル化が遅れている中小企業こそDXを推進すべきといえます。DXを実現させることで業務効率化や競争力の確保などにつながります。IT人材を確保してIT導入補助金などを活用することで、中小企業もDX実現は十分可能です。
なお、マイクロソフト社が提唱するDXを効果的に推進するフレームワークとして「デジタルフィードバックループ」があります。デジタルフィードバックループを導入することは、中小企業のDX実現に大きく貢献します。