少し前に「War of Talent(人材争奪戦争)」という言葉が話題になりました。これは、優秀な人材を確保するためには企業が能動的に採用活動を行い、新卒・中途採用を問わず積極的に優秀な人材を獲得していく必要があることを表しています。
特にここ日本においては、少子高齢化と人口減少に伴い、労働人口も将来的に減少することが予測されており、2065年には現時点の6割程度の水準まで落ち込むそうです。
その最中に、企業の優秀な人材確保に貢献するというビジネスモデルに着目し、人材紹介事業を始める経営者が多くなっています。「優秀な人材をできるだけ効率的に集めたい企業」と「自分のキャリアやスキルに見合った待遇を受けたい人材」のマッチングに成功すれば、そこから十分なメリットを生み出すことは可能です。
本稿では、そんな人材紹介事業を支える管理ツールを選ぶ際のポイントについてご紹介します。
人材紹介事業に管理ツールは必要なのか?
人材紹介事業はよく「初期投資のかからない事業」だと言われています。確かに、自身のキャリアの中で幅広い人脈を形成していれば、それがリソースとなって人材紹介事業をスタートでき、初期投資を抑えることもできますね。しかし実際のところは、求職者を集客するための費用・手間が想像以上にかかってしまい、決して初期投資がかからないというわけではありません。また、内定から入社、入社から紹介料の支払いまでには長いリードタイムがあるため、資金繰りが難しいというのも人材紹介事業の特徴です。
主なリソースは人件費であり、変動的なものでもあるため固定費用の部分に関してはできる限り削減するのが人材紹介事業を継続・拡大するポイントになります。そこで必要になるのが人材紹介管理ツールです。
人材紹介事業が軌道に乗ると、毎月の求人企業と求職者の情報はどんどん増えていきます。大量に積み上がっていくデータを分析して業務改善に役立てたり、後追いや掘り起こしなどに使用したりするためには、それぞれの情報が常にベストな状態で管理されている必要があります。
「業務改善とは」の詳細はこちらでもっとご参考にしてください。
しかしそうした情報の多くは、担当者ごとに属人的に管理されていたり、バージョン管理が徹底されていないExcel帳票上で管理されていたりして、とてもではありませんが情報活用できる状態ではありません。このような事象はスタートアップの人材紹介企業だけのものではありません。人材紹介管理ツールは、そうした複雑な情報管理をシステム上で行い、組織全体で同じ情報を共有し、ビジネスに役立てるためのものです。
「人材」というリソースを扱うスペシャリスト企業になるためには、徹底した情報の集約管理と共有、それと具体的な数値データにもとづいた継続的な業務プロセス改善がとても重要になります。
人材紹介管理ツールを選ぶ際のポイント
では、実際に人材紹介管理ツールを検討する際は、どういったポイントに注意すればよいのでしょうか?
1.使いやすい
人材紹介管理ツールを選ぶにあたって一番重視すべきなのが「使い勝手」です。よく、人材紹介管理ツールを導入したけれど現場に定着しなかったというケースを聞きます。これは、人材紹介管理ツールに業務プロセスを合わせる要件が多くなり、現場にとって使いにくいシステムになった結果です。ですので、操作面での使いやすさというよりは、業務プロセスとの相性を考慮して現場にとって使いやすい人材紹介管理ツールを選びましょう。また、昨今の状況を鑑みるとクラウドを活用したものが第一優先となります。
2.分析ツールとの連携ができる
人材紹介管理ツールの中には多くの情報が蓄積されていきます。その情報を有効的に活用するためには時に分析ツールが必要であるため、分析ツールとの連携が可能かどうか?分析ツールを統合しているかどうか?というポイントについてもしっかりと確認しておきましょう。
3.人材紹介事業に特化しているか
人材紹介管理ツールの中には人材派遣管理システムと併せて提供されているものもあります。企業によってどういった製品が良いかというニーズは異なりますが、人材紹介事業の業務効率アップや情報活用を目指すのであれば、やはり人材紹介事業に特化したツールの選択が必要です。
4.サポート体制は充実しているか
人材紹介管理ツールを初めて導入する企業にとっては、製品の使い方に関する疑問やトラブルが多く発生します。その際に提供事業者のサポート体制が充実してないと、人材紹介管理ツール活用が鈍化する可能性があります。提供事業者がどういったサポート体制を敷いているのかについても確実に確認しましょう。
5.料金体系は明確か
人材紹介管理ツールの提供形態はクラウドサービスやパッケージソフトウェア、スタンドアロンソフトなど様々であり、それによって料金体系も違います。この時、料金体系が明確かどうかによって予算計画に大きな影響を及ぼすため、やはり明確な製品を選びましょう。
6.財務会計との連携は可能か
人材紹介管理ツールが財務会計システムと連携することによって、資金繰りが難しい人材紹介事業を戦略的に経営していくことができます。Excelで作成した台帳で管理していると、必ずどこかに管理ミスが発生するため、人材紹介管理ツール選定の要件として財務会計システムとの連携というポイントを盛り込むとよいでしょう。もちろん財務会計のみならず他の業務システムとの連携がしやすいシステムは重要なポイントです。
人材紹介管理ツールの比較
上記6つのポイントを押さえることで、より良い人材紹介管理ツールの選定が行えるようになります。ここでは、主要な人材紹介管理ツールをご紹介し、それぞれの機能を比較してみます。
人材派遣会社様向けスタッフリレーションシップマネジメント for Microsoft Dynamics
株式会社NTTデータビジネスシステムズが提供するMicrosoft Dynamics 365を活用したクラウドソリューションです。派遣スタッフとのリレーションを強化することで業務効率化や売上拡大に貢献することを可能にします。
HRBCエージェント
人材紹介業界において初の専門誌である「ポーターズマガジン」を発行している、ポーターズが提供する人材紹介管理ツールです。導入件数は1,000社を超えており、クラウドサービスとして提供されているため導入のしやすさが特徴です。安定した機能やサポートに定評があり、価格も比較的安価に利用できます。
SARDINEクラウド業務管理
「人材紹介マガジンby SARDINE」を発行しているスクーターが提供する人材紹介管理ツールです。完全無料で負担なく導入できるのがメリットであり、人材紹介事業に必要な機能と使いやすさを追求しています。
キャリアプラス2
株式会社じげんの子会社であるブレイン・ラボが提供している人材紹介管理ツールです。導入社数は1,000社を超えており、近年でもシェアを伸ばしています。親会社がWeb系と言う強み持っているため、開発力に定評があります。デザインも最新なので、最も直感的に利用できる人材紹介管理ツールでしょう。
この他にも多数の人材紹介管理ツールが提供されているので、本稿でご紹介したポイントを参考に自社にとって最適な人材紹介ツールを検討してみましょう!