コールセンターでの業務改善を行うために、目標設定はかかせません。しかし、具体的な目標の立て方が分からない、何を目指せばよいのか分からないなどの悩みを抱えている人も多いでしょう。
そこで用いるのが、現状の把握から目標設定に活用できる「KPI」です。コールセンター業務のあらゆる場面を数値化できるKPIは、コールセンター全体の指揮をとるためにも必要な指標です。KPIによって、具体的にどのようなことが分かるのかを解説していきます。
コールセンターの目標設定に用いるKPIとは
KPIとは、「Key Performance Indicator」の頭文字を合わせた言葉です。日本語にすると「重要業績評価指標」といいます。その名の通り、目標設定や目標に向けた進捗をはかる鍵となる指標(数値)です。
KPIを設定しておくことで、ゴールとなる目標までの道筋が見えやすくなるため、チームや上司とも現状を共有しやすくなります。また、現場のスタッフもどのように仕事を進めればよいのかが分かりやすくなる点もメリットといえるでしょう。
コールセンターのKPI設定におけるポイント
コールセンター業務でKPIを設定する際に押さえたいポイントがいくつかあります。KPI設定が適切にできれば、現場の士気も上がり、結果として目標達成につなげられるでしょう。ここからは、そのポイントについて詳しく解説します。
KGIを意識する
KPIを設定する際には「KGI」を意識するようにしましょう。KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、「経営目標達成指標」という意味です。
KPIは中間目標、KGIは最終目標です。つまり、業務の目標を立てる際、KPIはもちろんですが、KGIを明確にしておかなければ方向性の定まらない中間目標を立ててしまうことになります。遠くにあるゴール(KGI)を目指すために、少しずつ先へ進むための取り組み(KPI)を適切に設定しましょう。
SMARTを念頭に置く
KGI同様、重要なのが「SMART」と呼ばれる考え方です。SMARTとは、以下の5つの頭文字をとった言葉です。
- S…Specific(具体的)
- M…Measurable(測定可能)
- A…Achievable(達成可能)
- R…Related(関連)
- T…Time-Bounded(期限)
目標達成に向けた具体的な内容なのか、数値として進捗を測定できるのか、無茶な目標を設定していないか、最終目標であるKGIと関連性があるのか、期限を設定しているのかなどを意識する必要があります。これら5つの項目を参考にしてKPIを設定することで、より具体的で方向性の定まった改善策を見つけられるでしょう。
コールセンターで設定するKPIの例
コールセンター業務でKPIがいかに重要なのかが分かりましたが、具体的にどのような項目を設定すればよいのでしょうか。ここからは、コールセンターで設定するKPIの例を紹介します。顧客満足度やオペレーターの応対品質、業務の効率性などさまざまな項目がありますが、その中でも重要な11の指標について解説していきます。
応答率
1つ目は、コールセンターにかかってきた電話に対して、オペレーターがどの程度対応できたのかを示す「応答率」です。応答率の計算は、「対応した(電話にでた)件数 ÷ 着信件数」で求められます。応答率が良いほど、かかってきた電話にまんべんなく対応できていることを示す一方で、応答率が低い場合は、オペレーターが足りていないことを示しています。
新商品やサービスの登場により一時的に電話の件数が増えるといった場合には、応答率も下がりやすくなります。一時的にオペレーターを増員するという対策を打った方がよいといえるでしょう。
放棄(呼)率
「放棄率(放棄呼)」は、かかってきた電話に対してオペレーターの対応前に切れてしまった割合を指します。放棄呼はアバンダン・コールとも呼ばれ、電話をかけてきた顧客が自ら切断したものもあれば、電話が集中したためにシステムによって自動的に切断したものも含まれているのが特徴です。放棄率の計算は、「放棄呼件数 ÷ 着信件数」で求められます。つまり、放棄率が低いと、電話がつながりやすいコールセンターだということです。
ASA(平均応答速度)
ASAは「Average Speed of Answer」の略で、顧客が電話をかけてからオペレーターが応対するまでにかかる平均時間を指します。ASAは、応答までにかかった待ち時間 ÷ 着信件数で求めることが可能です。ASAが短ければ短いほど、顧客を待たせることなく応対できているということです。そのため、コールセンターのKPIの中でも重要な指標とされています。
ATT(平均通話時間)
ATTは「Average Talk Time」の略で、顧客からかかってきた1回の通話に対して、どの程度通話に時間をかけているか、その平均時間を指します。ATTは、全通話時間を足した数字 ÷ 総電話数で求められます。電話を受けてから対応し、切断するまでの時間を測定するため、短ければ短いほどスムーズな対応ができているといえます。
ACW(平均後処理時間)
ACWは「After Call Work」の略で、顧客との電話を終えた後に、通話内容や意見などをまとめるための作業時間を指します。ACWは、後処理にかかった時間の合計 ÷ 対応件数(総応答呼)で求めることが可能です。ACWが短ければ短いほど効率よく応対ができているといえます。
AHT(平均処理時間)
AHTは「Average Handling Time」の略で、電話1件の応対から処理までにかかった時間を指します。つまり、上述したATT(平均通話時間)とACW(平均後処理時間)を足したものが、AHT(平均処理時間)ということです。AHTが短ければ短いほど、1件あたりの電話に対して迅速に対応できているということを意味します。
CPC(平均コール単価)
CPCは「Cost Par Call」の略で、電話1件あたりにかかる費用(コスト)の平均額を指します。オペレーターの人件費やコールセンターの家賃、通信費などを含め、費用がどれくらいかかっているのかを把握することが可能です。CPCは、コールセンターの運営にかかるコスト ÷ 対応件数(総コール数)で求められます。
SL(サービスレベル)
SLは「Service Level」の略で、設定した時間内にどれだけの電話に対応できたかを示す指標です。たとえば、顧客からの電話には「20秒以内に応対する」とSLの設定をしている場合、すべての着信のうち、その目標をどれくらいクリアできているかが分かります。SLは、時間内に対応できた件数 ÷ 着信件数で求めることが可能です。SLが低いということは、電話がつながるまでに時間がかかったということを示しています。
稼働率
稼働率は業務時間中に、どれだけ顧客の対応ができたかを示す指標です。電話応対や電話を切った後の後処理にかかった時間(AHT)÷ 業務時間(休憩などを除く)で求められます。稼働率が高ければ高いほど顧客に対して時間を割けたことを示しますが、オペレーターのスキルアップを目的とした研修の時間を確保する必要もあるため、稼働率の高さだけを重視しすぎない方がよいといえるでしょう。
欠勤率
欠勤率はシフトで予定されていた勤務日数に対して、どれくらい欠勤しているかを示す指標です。欠勤日数 ÷ 予定していた勤務日数で求められます。インフルエンザなどの病気や怪我などで突然欠勤することは誰にでも起こりうることですが、問題は心理的な原因による欠勤です。
職場での人間関係や環境、繁忙期などのストレスがその原因として挙げられます。また、オペレーターという仕事の特性上、クレーム対応で心を病んでしまう人も少なくありません。欠勤率が高くなると離職につながるため、欠勤率はマネジメント面で重要な指標といえるでしょう。
離職率
離職率は一定期間中に辞めてしまった人の割合を指す指標です。離職者 ÷ 在籍している人数で求められます。離職率が高い状態が続いている場合、内部体制に問題があると考えられます。早急な対策が必要で、新たに人を雇ったとしても負のループが続く可能性もあるでしょう。離職の兆候がある人に対して面談をしたり、繁忙期には人員を増やしたりなどの対応をとり、職場環境を整えることが重要です。
まとめ
コールセンター事業では、多くのオペレーターが日々さまざまな顧客の対応にあたっています。仕事の特性上、仕事を続けるのが難しいという人も少なくありませんが、できるだけ職場環境を改善し、仕事をしやすい状態を作ることで欠勤率や離職率を低くすることは可能です。
コールセンターの業務を円滑に進めるためには「Microsoft Dynamics 365」の導入をおすすめします。顧客からの問い合わせの内容や対応した履歴などを一元管理することで、業務効率化につなげられるでしょう。