経営情報の統合・分析、情報活用を主体として経営活動、グローバル・ビジネスの展開、これらを実現するためのERP(Enterprise Resource Planning)の重要性は、幅広く認識されています。統合された基幹系システムがあればスムーズなデータ連携により、全社的な労働生産性アップや業務効率アップ、業務プロセスの最適化などさまざまな経営課題を解決することも可能です。
しかしながら、ERPは安価なシステムとは決して言えないものであり、クラウドERPを採用する場合でも一定以上の投資が必要です。これがボトルネックになり、ERP導入を躊躇しているという企業も多いでしょう。
そこで本稿では、ERP導入を検討している企業に向けて、IT導入補助金と軽減税率対策補助金について説明しています。これらの公的補助金を利用すれば、ERPへの投資額を押さえて、大規模なシステムを導入することも可能です。
IT導入補助金(2019年)とは?
IT導入補助金は正式名称を「サービス等生産性向上IT導入支援事業」と呼びます。経済産業省が例年実施している公的補助金であり、中小企業と小規模事業者を対象に、生産性向上を目指している企業に対してIT導入にかかる費用の一部が補助されます。ちなみに、中小企業と小規模事業者の定義は以下の通りになります。
<IT導入補助金における中小企業・小規模事業者の定義>
業種・組織形態/資本金/従業員//資本金または出資の総額/常勤資本金・従業員規模の一方が、
下記以下の場合(個人事業を含む)
- 製造業、建設業、運輸業/3億円/300人
- 卸売業/1億円/100人
- サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) /5,000万円/100人
- 小売業/5,000万円/50人
- ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)/3億円/900人
- ソフトウェア業または情報処理サービス業/3億円/300人
- 旅館業/ 5,000万円/200人
- その他の業種(上記以外)/3億円/300人
さらに、IT導入補助金の対象になるのは「①日本国内で実施される事業であること」、「②IT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業であること」です。IT導入補助金に登録されたITツールを検索する場合は『IT導入支援事業者・ITツール検索』にアクセスし、導入検討中のITツールが登録されているかどうかを確認してみましょう。また、登録されているITツールから導入検討を始めるのも1つの手段です。
2019年度のIT導入補助金は補助額を大幅にアップしていることから、現在ERP導入によって生産性向上等を検討している企業にとっては大幅な補助を受けるチャンスとなっています。
軽減税率対策補助金とは?
2019年10月より消費税率が8%から10%へ引き上げられるのに伴い、“軽減税率”という制度が適用されます。これは、飲食料品などの品目の消費税率を8%のまま据え置くという制度です。軽減税率が実施されるにあたって企業ではさまざまな準備が必要になります。PSOシステムを改修したり刷新したり、経済面に大きな影響が生じる企業もあるでしょう。
そこで国税庁が実施しているのが軽減税率対策補助金であり、軽減税率への対応にかかる費用の一部を補助金として受け取ることが可能です。この公的補助金は、A型・B型・C型の3つに大別されています。
A型<複数税率対応レジの導入等支援>
日頃から軽減税率対象商品を販売しており、将来にわたり継続的に販売を行うために複数税率対応レジ、または区分記載請求書等保存形式に対応した請求書等を発行する発売機を導入、またはそれらを改修する必要のある事業者。
B型<受発注システムの改修等支援>
電子的受発注システムを使用して日頃から軽減税率対象商品を取引しており、将来にわたり継続的に取引を行うために受発注システムを改修・入替する事業者。
C型C型<請求管理システムの改修等支援>
日頃から軽減材率対象商品を取引しており、軽減税率に対応した請求書の発行を円滑に行うために、請求書管理システムを改修・導入する事業者。
さらに、以下のように11個の制度に分けられています。
A型
A型-1. レジ・導入型
A型-2. レジ・改修型
A型-3. モバイルPOSレジシステム
A型-4. PSOレジシステム
A型-5. 券売機
A型-6. 商品マスタの設定
B型
B型-1. 受発注システム・指定事業者改修型
B型-2. 受発注システム・自己導入型
C型
C型-1. 請求書管理システム指定事業者改修・導入型
C型-2. 請求書管理システムソフトウェア自己導入型
C型-3. 請求書管理システム事務機器改修・導入型
軽減税率対策補助金は独自の申請だけでなく、ソフトウェア・ベンダーや販売代理店等による代理申請も受け付けています。軽減税率への対応として導入する製品が決まっていれば、導入パートナーに申請を依頼するのもよいでしょう。
難しく考えずに公的補助金を利用してみよう!
公的補助金を利用するにあたり、いくつか条件はあります。ただし、決して難しい条件ではないため、国が推進している公的補助金を積極的に活用して、投資額を押さえたERP導入をぜひ検討してみてください。初期投資というボトルネックを解消し、高いROI(投資対効果)を得られれば、導入後の運用ではコスト以上のビジネス効果を得ることができます。この機会に、ERPにぜひ着目してみましょう。