アプリ(アプリケーション)とはスマートフォンやPCでサービスを提供したりデータを加工したりするなど、ユーザーに価値を提供するために作られたソフトウェアのことです。アプリの開発にはIDEと呼ばれる統合開発環境が多く用いられます。ここでは統合開発環境を用いるメリットや、各種統合開発環境の特徴を紹介します。
そもそもアプリの種類とは?
アプリには開発の手順や動作環境によりいくつかの種類に分類できます。
Webアプリ
WebアプリはMicrosoft EdgeやGoogle Chrome、FirefoxといったWebブラウザから特定のWebサイトにアクセスするだけで利用可能なアプリケーションです。GmailやYouTubeなどもWebブラウザ上で利用できるため、Webアプリに分類されます。アプリを利用し始める前にダウンロードやインストールの必要もありません。
その反面、利用する際にはインターネットへの接続が必須です。例えば手元で撮影した写真を加工するアプリの場合、まず写真をサーバーへアップロードする手間と時間がかかります。通信速度が遅い場合は、アプリを利用するまでにさらなる時間を要することでしょう。
ネイティブアプリ
ネイティブアプリではWebアプリとは逆に初回利用時のダウンロード、インストールを行う必要があります。その分スマートフォンやPCの記憶装置(SSDやHDD)に十分な空き領域が求められます。しかし、デバイスに直接プログラムを取りこんでいることから、常時インターネットに接続している必要はありません。
アプリをインストールしたデバイスにもともと備わっている機能に紐づいてプログラムされているアプリも多く、プッシュ通知の受信や、位置情報・カメラ機能などを最大限に活用できます。動作が高速であるため、ゲームなど処理速度が求められるアプリケーション向きです。
アプリ開発に欠かせない統合開発環境(IDE)
Webアプリやネイティブアプリといったアプリケーションを開発には、IDE(Integrated Development Environment)と呼ばれる統合開発環境が良く用いられます。ここではIDEを利用するメリットについて説明します。
統合開発環境とは?
統合開発環境はアプリ開発に必要な各種ツールがまとめられたソフトウェアです。ソースコードを記述するためのコードエディタを始め、記述されたソースコードからバイナリコードに変換するコンパイラやリンカを起動するビルド機能や、ステップ実行を行い効率的にソースコードの不具合を解消するためのデバッグ機能(デバッガ)、またこれらを統合して利用しやすくするための画面(GUI)などが利用できます。
このような機能は、それぞれ個別に購入し、ダウンロード、インストールすることも可能です。しかし、それぞれのツールは独立しての利用を前提として開発されているため操作が煩雑になり、効率的な開発作業ができなくなる恐れもあります。
統合開発環境ではそれぞれのツールが綿密に連携しています。コードエディタ利用中にバージョン管理システムからソースファイルをチェックアウトし、ビルドを実行するとユニットテストの実行後にビルドが完了するといった一連の開発作業を効率的に行えるのです。
統合開発環境を利用するメリット
IDEのコードエディタには入力補完機能があります。コードを手入力していく際、その言語にあらかじめ用意されている関数名などを途中まで入力すると、自動的に入力が予測される関数名の候補が表示されるのです。これにより関数名や大文字・小文字の入力誤りを減らせるでしょう。入力補完機能を用いると利用経験の少ない言語も同様で、入力が予測されるコードの候補が自動で表示されるため、プログラマの学習コストを低減させられます。
また、統合開発環境ではリンター(linter)と呼ばれるコード解析ツールも用意されています。プログラミング言語はその名の通り「言語」であるため、文法に沿った記述が必要です。linterはコードを解析し、誤った構文があった場合にエラーや警告を発し、注意喚起をしてくれます。
誤った構文でもプログラムは動作する場合がありますが、後日修正を繰り返すうちにバグ(不具合)として顕在化することもあります。そのため、できる限り正しい構文で記述するのが求められるのです。またlinterの指摘に準ずることにより複数のプログラマがひとつのアプリを開発した場合でも、コードの構文が均一化されバグの発生率を低減させることも期待できます。
その他にもIDEは複数の言語に対応していることが多いです。何らかの事情で利用する言語の変更を求められることもあるでしょう。そんなときにも開発作業の操作は変わりません。プログラマは使い慣れた環境を用いて効率的に開発を進めることができます。
アプリ開発におすすめの統合開発環境
統合開発環境は開発するアプリの種類や言語により複数の種類があります。いくつかの統合開発環境について紹介します。
Unity
Unityは2005年にUnity Technologies社により開発、リリースされた、2D/3Dのゲーム開発に重点をおいた統合開発環境です。一時期社会現象ともなった「ポケモンGO」もUnityで開発されており、その他、有名なゲームタイトルにも用いられています。プログラミングを行わずにノーコードでのゲーム開発もできますが、より複雑なゲーム開発のためにJavaScriptやC#、Booといった言語も利用可能です。またスマートフォンやPC、ゲーム専用機にVRゴーグルなど、クロスプラットフォームでの開発に対応しています。
Visual Studio
Visual StudioはWindowsの開発元であるMicrosoft社が開発し、1997年に初版がリリースされた古くからある統合開発環境です。Visual BasicやASP.NET、C#といった、Microsoft社が独自に開発した言語で開発でき、Windows向けアプリの開発環境として多く用いられます。またXamarinと呼ばれるAndroidとiOS、Windows向けクロスプラットフォームでも開発が可能です。
Eclipse
Eclipseは1998年にIBMにより開発されましたが、2001年にオープンソース化されたことで主にJavaアプリケーションの開発に広く用いられている統合開発環境です。開発に利用できる言語もJavaからC言語、C++、C#、PHP、Perlと多く、様々なプラグインを利用できます。プラグインの中にはJavaのビルドモジュールをデコンパイル(アプリからソースコードを生成する)するプラグインもあります。
Android Studio
Android StudioはAndroidの開発元であるGoogleが提供するAndroidアプリ開発向けの統合開発環境です。Androidネイティブアプリの開発に特化した環境であり、言語にはJavaを利用しています。Androidスマートフォンなどのエミュレータ(開発中アプリの動作を確認する目的で、Androidデバイスを開発PC上で擬似的に動作させる)も利用可能で、その種類もタブレット、スマートフォン、スマートTV、スマートウォッチと豊富です。複数のデバイスに対応するアプリ開発を行う際には、効率的に動作検証ができます。
IntelliJ IDEA
IntelliJ IDEAは2001年にチェコ共和国のJetBrainsが開発した、Javaによる開発を重視する統合開発環境です。Javaの開発には前述のEclipseが良く用いられてきましたが、最近ではIntelliJ IDEAを用いることが多くなっています。またIntelliJ IDEAはAndroid Studioのベースとなっている統合開発環境でもあるため、スマートフォンアプリの開発も可能です。
Xcode
XcodeはApple社が開発し2003年に提供された統合開発環境で、当時のMacには全てXcodeが付属していました。現在iPhoneを始めとするiOSアプリの開発には必須となる統合開発環境です。iPhoneに限らずiPad、MacOS、Apple TV、Apple Watchと主要なApple製品のアプリを開発することができ、言語もSwift、Objective-C、C言語、C++、Java、AppleScriptと多岐にわたります。開発を行っているMac上でiPhoneなどのシミュレータを起動し、アプリの動作確認を行うことができます。
ローコードでアプリが開発できる「PowerApps」
Power Appsは統合開発環境と異なり、ローコード(必要最低限のコードの作成)でアプリ開発を可能とするMicrosoft社が提供しているプラットフォームです。Office 365ライセンスで利用できOffice製品との親和性も高く、プログラミングスキルが高くなくても少ないコストと時間でアプリを開発できます。またAzure Active Directoryなどを用いた認証機能も利用できるため、セキュリティ面でも安心してアプリを開発できるでしょう。
まとめ
統合開発環境には複数の種類があり、開発環境を選択する場合は作成するアプリの特徴を踏まえる必要があります。例えばスマートフォン向けアプリを作成する際にiPhoneとAndroidの両方の対応が必要なのか、またはどちらかのみで良いのかなど、事前の検討は必須です。アプリに求められる機能や利用するユーザーの年齢層、利用シーンなども踏まえ、開発環境を選定することが大切になります。
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