ASEAN各国ではASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づく先発ASEAN諸国の関税撤廃に続き、後発ASEAN諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも2018年1月1日に関税が原則すべて撤廃されました。特に、ベトナムの自動車や二輪車の一部品目にかけられていた30%の関税が撤廃されたことで、ASEAN域内における産業立地上での大きな転換期になっています。
これを受けて日本企業にとってのASEAN市場の重要性が変化しており、グローバル化を目指す企業が増えています。
ASEAN諸国での海外進出先として最も増加しているのがミャンマーです。人口5,141万人、国土が日本の約1.8倍あるこの国では、2011年には現地法人数が11社だったのに対し、2016年時点では105社に増加し、5年間で約9倍に成長しています。
海外市場に多くのビジネスチャンスを見出している日本企業ですが、グローバル化には越えなければならない重大な課題があります。今回は、その課題と対策についてITに焦点を絞りご紹介いたします。
グローバル化の課題
日本企業がグローバル化を目指すにあたって最大の課題は3つあります。それが“リアルタイム情報管理”と”コミュニケーション”、それと“人材採用”です。
リアルタイム情報管理
グローバル規模でスピード感のある経営を行うためには、正確な情報を共有し続けることが大切です。日本と海外で物理的な距離がある中で、情報共有は重大な課題でしょう。しかし近年ではクラウドサービスの充実によって、物理的に距離がある拠点同士が情報共有を行うことは簡単です。クラウドストレージを使用すればリアルタイムに、かつどんなファイルでも共有できます。
ただし“経営情報の共有”という観点で考えると一気に難しい課題になります。その理由は、拠点ごとに管理している経営情報の種類が違ったり、フォーマットが違ったり、それらが運用しているシステムに依存するからです。
そのため共通の経営情報を管理することが難しく、結果としてリアルタイムな情報管理は実現しません。日本企業が運用しているシステムを現地適用するわけにもいかないでしょう。
コミュニケーション
日本企業のグローバル化ではコミュニケーションの課題も多く発生します。基本的には言語の壁がありますが、これは英語が話せる人材を揃えることで解決できます。ただし、細かい情報共有ができなくなる、というリスクもあります。
いくら英語が話せるといっても、日本人の母国語は日本語ですし現地人材の母国語は英語ではないケースが少なくありません。特にASEAN諸国では英語が母国語という国はありません。
そうした人材同士が英語で情報共有を図る際に、細かい部分でのニュアンスにまで気を配ったコミュニケーションは難しくなります。会話の中でならばニュアンスの違いからくる誤解にすぐ気づけますが、メールや資料による情報共有ですと、誤解が解けないままにコミュニケーションが進むことがよくあります。
コミュニケーションの課題からグローバル化が上手くいかないケースが多々あるので、解決すべき重要課題の一つです。
人材採用
優秀な人材が揃っていなければビジネスは成功しません。そこで、グローバル化にあたって真っ先に人材確保に目を向けるのは良い事です。ただし、そう簡単に事が進まないのが海外の人材採用です。特にASEAN諸国の新興国では仕事に対する価値観が、日本とは大きく違う傾向にあります。
たとえば日本人は始業時間に対し1分でも遅れれば遅刻とみなしますが、海外諸国では10分~15分程度の遅れは遅刻にみなしません。もちろんそれも企業によりますが、そうした感覚を持っている人材が多いのです。こうした時間的規約を守るかよりも、個人の能力を重視する傾向にあります。
毎日10分遅刻していても、終業までに仕事をきっちりと終わらせていてかつ成果を挙げていればその人材は評価されます。ただし日本人の感覚からすれば、海外のそうした価値観に付いていけないことはあるでしょう。
さらに、採用活動にあたって注意すべきは履歴書の誇張です。海外諸国では履歴書に実績以上のことを書くのは当たり前なので、採用時は十分に人材の見極めが必要です。
以上がグローバル化における3つの課題です。これらを解決することが、当面の尽力すべきところです。
グローバル化の課題を解決するには?
日本企業がグローバル化するにあたって、必ずと言ってよいほど出現する“リアルタイム情報管理”と”コミュニケーション”、それと“人材採用”という3つの課題。これらを解決するために欠かせないのが、日本企業と海外拠点を含めた“統合的なシステム基盤”を創ることです。
たとえば、日本企業と海外拠点がまったく同じシステム環境を構築していると想像してみてください。まず“リアルタイム情報管理”は即座に解決されます。システムが管理するデータの種類とフォーマットが一定ならば情報共有は簡単です。データを加工したり改めて統合する必要はないので、即座に情報共有が可能です。これにクラウドが加われば、さらに情報共有は促進されます。インターネット上でシステム同士が連携するので、日本企業が海外拠点の経営状況を可視化することも簡単です。
では、”コミュニケーション”の課題はどうでしょうか?英語や現地言語では細かいニュアンスが伝わらない場合でも、互いが母国語でシステムに情報を入力できる環境ならば細かい情報共有も可能になります。
こうした課題解決に向けた統合的なシステム基盤を創るためにおすすめしたいのが“クラウドERP”です。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、統合的なシステム環境をパッケージ製品として提供するものであり、これをインターネット経由でサービスとして提供するのがクラウドERPです。
日本企業と海外拠点が同じクラウドERPを導入していると、リアルタイムな情報管理が簡単にでき、コミュニケーションが促進し、グローバル化における課題を多く解決します。すでに日本企業でパッケージ型のERPを導入していても、それを刷新したり2層ERPとして導入することで海外拠点との連携が簡単に行えます。
マイクロソフト Dynamics 365について
“Dynamics 365”はマイクロソフトが提供するクラウドERPです。ビジネスパーソンが使い慣れたインターフェースで、複数のアプリケーションを統合し、日本企業の統合データ管理はもちろん海外拠点を含めたリアルタイムな情報管理が可能になります。
たとえばDynamics 365の導入事例では日本語の“稟議”を、そのままシステム上に『RINGI』と実装することで共通語とすることに成功しています。単にデータ連携を行うリアルタイムな情報管理を可能にするだけでなく、海外拠点を含めた共通言語としてDynamics 365を機能させることも可能です。もちろん、Dynamics 365はグローバル企業であるマイクロソフトが開発した製品だけあり複数言語や複数通貨などグローバル向けに洗練されている特徴があります。
皆さんの企業でグローバル化への機運が高まっているのであれば、Dynamics 365はその成功のためにかかせないシステム基盤になることでしょう。クラウドサービスですので導入や運用のわずらわしさもありませんし、簡単に共有環境を築くことができます。
成功するグローバル化を目指す際は、Dynamics 365の導入をぜひご検討ください。