工場の生産設備に不具合や老朽化などが発生すると、品質や生産性の低下を招きます。これらのリスクを回避・軽減するために、工場の設備点検は不可欠です。本記事では、工場の設備点検が必要な理由や効率化を図る方法を解説します。記事を踏まえて、設備点検の効率化に取り組み、品質や生産性の維持・向上を実現しましょう。
工場の設備点検とは?
工場の設備点検とは、作業領域に設置されている生産設備が問題なく機能しているか確認する点検業務です。製品の生産に必要な設備にトラブルが発生していないか、老朽化が進んでいないか、故障の予兆はないかといったことをチェックします。
詳しくは後述しますが、設備点検には法律に基づき実施する法定点検と、自社で自発的に行う自主点検の2つがあります。前者は法律で実施が義務付けられており、きちんと行わないとペナルティの対象になるため注意が必要です。
自主点検の方法は企業により異なりますが、一般的には点検箇所の洗い出しをしたうえで頻度や具体的な方法を決めます。そして、マニュアルやチェックシートを作成し、点検を実施します。
設備点検の必要性
設備点検が必要な理由は、生産設備のトラブルを未然に防止するためです。工場にとって生産設備は利益を生み出す源泉です。トラブルが発生し稼働しなくなると、製品を生産できなくなり多大な損失を被ります。このようなリスクを避けるために、定期的な点検でトラブルを防止します。
設備の老朽化を把握するためにも設備点検が重要です。機械設備の老朽化が進むと、予期せぬ故障を招く可能性が高まります。機械の一部が腐食による破損で落下し、従業員が怪我をするリスクも考えられます。老朽化に伴うさまざまなリスクを防ぐため、定期的な点検と適切な対処が必要です。
また、設備に問題が生じると製品の品質低下にもつながるおそれがあります。正常な稼働を妨げ不良品を多く生産したとなると、利益圧迫を招きます。生産計画に狂いが生じ、取り引き先や顧客に迷惑をかける事態にも発展しかねません。適切な頻度でしっかりと点検を実施すれば、このようなリスクを回避できます。
設備点検の種類
設備点検には、法律で実施が義務付けられている法定点検と、自社で自発的に行う自主点検の2種類があります。法定点検は、各法律で実施の周期が決められています。たとえば、労働安全衛生法では、機械換気設備の点検を2ヶ月に1回行わなければならないと定められています。
自主点検は、自社で定めた基準や項目に則って行う点検です。点検表やチェックシートを用いて定期的に行いますが、頻度は企業によって異なります。点検の項目もさまざまで、表示パネルの文字が見やすいか、コンベアはスムーズに動いているか、換気ファンは正常に稼働しているかなどが考えられます。
設備点検の主な課題
設備点検の主な課題として、点検漏れの発生が挙げられます。点検内容をマニュアル化し、ルールに基づき運用していても、点検漏れが起きるケースは少なくありません。たとえば、点検作業が属人化している場合、担当者が休んで適切に点検を行えなかった、通常業務が忙しく点検に手が回らなかった、などの理由が考えられます。
また、現場に過度な負担を強いているケースも少なくありません。広大な工場の中を歩きまわって点検を行っている、頻度が多すぎて作業員に負担が生じているなどのケースが考えられます。過度な負担は従業員のストレスになるばかりか、通常業務に影響を及ぼし、かえって生産性を低下させるおそれがあります。
点検で得たデータは、蓄積と分析により有効活用が可能です。しかし、データの有効活用ができていない企業も多く見受けられます。たとえば、手作業でデータの取得やシステムへの入力を行っている場合、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。その結果、正しいデータが蓄積されず、うまく活用できないという課題も存在します。
点検作業を効率化する方法
点検作業を効率化することで、従来よりも手際よく生産設備の点検を実施できれば、現場の負担軽減につながります。効率化する方法としては、設備保全システムの導入やIoT化、遠隔支援の運用などが挙げられます。
設備保全システムの導入
設備保全システムとは、設備に関する情報や保全計画、点検結果などを一元的に管理できるシステムです。CMMS(Computerized Maintenance Management System)とも呼ばれます。
設備保全システムにより、設備保全に関するあらゆる情報を一元管理できることで、業務を可視化できるメリットがあります。設備のメーカー名やシリーズ、パフォーマンス情報をはじめ、実施された点検、リソース情報なども管理できます。
また、システムを導入すれば、適切なタイミングによる点検の実施が可能です。設備のコンディションやパフォーマンスデータを分析することで、効率的な保全計画の作成につながるためです。
システムによっては、点検に必要なマニュアルや資料などを管理できるものもあります。仕様やマニュアルをいつでも検索し取り出せるものであれば、必要に応じて情報にアクセスでき、効率よく点検作業を実施できるでしょう。
点検業務のIoT化
IoTとは、モノとインターネットを接続する技術です。「Internet of Things」の略であり、現在ではさまざまな分野で活用が進んでいます。たとえば、医療分野では患者にウェアラブルデバイスを装着してもらい、血圧や体温、脈拍などのデータを取得しコンディションをモニタリングする、といった活用が行われています。
近年は、製造業界でもIoT化に取り組む企業が増えてきました。点検作業にもIoTは活用されており、設備のメーターをカメラで読み取りデータ化する、離れた場所の機械にセンサーやカメラを取り付けて遠隔からデータを取得するような活用が進んでいます。
点検作業のIoT化により、業務に割くリソースを最小限に留められます。これまで人の目と手で行ってきた点検やデータの収集を自動化できるため、省人化と業務効率化を実現できます。センサーやカメラでデータを取得できるのなら、わざわざ広大な工場の中を歩きまわって点検を行う必要がありません。ヒューマンエラーが発生せず正確にデータを取得でき、蓄積したデータも活用できます。
遠隔支援
遠隔支援とは、離れた場所から現場の従業員をサポートするシステムや取り組みです。オンラインで現場とオフィスをつなぎ、現地の状況を映像や音声で共有することで適切なサポートを行えます。
現在では、保守点検の効率化に役立つ遠隔支援システムもリリースされています。導入により、熟練度が低い従業員もベテランのサポートを受けつつ作業を行えるため、ミスや二度手間の発生を防げるのがメリットです。
速やかに正確な情報を共有できるのも遠隔支援システムの魅力です。カメラで映した映像をオンラインで送れば、正確に現地の状況を伝えられます。その結果、トラブルの予兆を把握でき、適切な対応を行えます。
スマートグラスやIoTの技術を活かした遠隔支援システムもあります。こういったものを導入すれば、離れた場所から設備の状況をモニタリングでき、そのときどきに応じたスピーディーな対応が可能です。
まとめ
工場の設備点検を適切に行わないと、設備のトラブルや品質の低下などを招きます。設備点検には点検漏れの発生や現場への過度な負担などの課題がありますが、CMMSやIoT化、遠隔支援システムなどの導入で解決を図れます。
Microsoft Dynamics 365も、設備点検の効率化に有効です。フィールドサービス領域もカバーしており、電子化した作業手順書をタブレット端末で閲覧する、適切にリソースを分配するなどが可能です。工場の設備点検効率化を進めるうえで強力な武器となってくれるでしょう。