フィールドサービスの点検作業には、ミスが起きやすいなどの課題があります。では、効率化を目指すためにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、IoT技術の導入やコールセンターにおけるオペレーター支援など、効率化を図るために注目したいポイントについて解説します。併せて、MRデバイスの活用についてもご紹介します。
点検作業における課題
昨今、製品工場などフィールドワークにおける点検整備作業において、多くの課題が指摘されています。ここでは代表的な課題を3つご紹介します。
点検したデータをシステムへ取り込むまでに時間がかかる
まず、工場現場で点検した結果を事務所へ持ち帰り、紙ベースのチェックリストで確認しながら再度PCのシステムへ入力し直す必要がある場合、時間や労力が余分にかかり非効率という課題が挙げられます。
また、もし現場で何か問題が起きていたとしても、事務所で入力し直してから気付き対応することになるため、タイムラグの発生によりスピーディーなリカバリー対応ができません。
データの確認や分析に時間がかかる
点検した情報は膨大な量にのぼります。それゆえ、トラブルの有無や発生した箇所の分析を手作業で処理しようとすると、そのための人員が必要になるなど、稼働やコストに多くの負担を要してしまいます。
また、点検した結果の数値が合わない場合、そもそも現場でチェックシートを記入した際のミスなのか、それとも異常値が出ているのか判断できないこともあるでしょう。そうなると、再度現場へ戻って点検し、データを集め直さざるを得ない状況にもなりかねません。
ヒューマンエラーが発生しやすい
工場内にあるさまざまな機械に取り付けられたアナログメーターは、結局のところ目視で読み取るしか方法がない点も非常にネックです。どれだけ細心の注意を払っても、人の目では100%エラーを防げるという保証はないからです。
目視で設備や機械を点検する場合には、現場におけるチェックシートへの記入ミスや事務所でのシステム入力ミスなど、ヒューマンエラーの可能性について、あらかじめ理解しておく必要があります。
点検作業の効率化ポイント
では、煩雑でミスの起きやすい点検作業をどうすれば効率化できるのでしょうか。フィールドサービスにおける現状の課題点を洗い出し、目的をはっきりさせると、以下のようなマネジメントのポイントが浮き彫りとなります。
IoT導入で情報の見える化を図る
昨今話題となっているIoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」とも呼ばれます。これは、PCだけでなく私たちの周りにあるさまざまな製品や機械、設備などをインターネットに接続し、その「モノ」のデータを自動的に収集して、AIによって分析するサービスのことを指します。
現在、フィールドサービスの現場作業を効率化するためには、こうしたIoTの導入が不可欠になりつつあります。IoT機器を使うことで、現場のデータを自動的に収集し、これまで分散化していた社内の各部門にあるシステム(コールセンターや顧客情報、保守、品質管理など)をフィールド業務に連携させられるようになるのです。
こうして人の手をほとんど借りずに、さまざまな情報を一元化・可視化できれば、リアルタイムで人員と稼働の調整が可能になり、業務の効率化や生産性向上にも期待できます。特に製造業界では人手不足に悩まされている企業も多いため、業務を自動化できるIoT導入は今や欠かせなくなっています。
顧客とオペレーターのやり取りを効率化
コールセンターは顧客とのやり取りを通じて、スキルを持ったエンジニアを手配するなど、フィールドサービスにおける橋渡し役を担っています。しかし、もしオペレーターの処理に時間がかかってしまうと、エンジニアを派遣するのが遅くなってしまうでしょう。特に、ベテランと新人とでは経験年数やスキルの差があるため、顧客の求めるスピーディーな対応を標準化できない可能性もあります。
そこで近年、AIチャットボットなどを導入することで、オペレーターの業務を支援する企業が増えています。作業プロセスを自動化すれば、オペレーターの負担は大幅に軽減され業務効率化につながるのです。また、迅速にエンジニアを手配することで、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
マニュアルのデジタル化で作業の標準化
フィールドサービス業務においてマニュアルの整備は必須ですが、紙ベースではなくデジタル化を進めることもおすすめです。
デジタル化によって、まずインターネットにつながったさまざまなデバイスから、時間や場所を問わず検索・確認ができるようになります。紙ベースの場合、どれが最新のマニュアルなのか分かりづらく、誤って古いバージョンを参照してしまうミスが考えられます。一方、電子化すると常に最新化されたマニュアルを素早く確認できるため、高い業務品質の確保が可能になるのです。
また、長年にわたり同じ作業者が担当していると、業務が属人化してしまい、異動時や退職時に別の担当者への引き継ぎがうまくいかないといった事態に陥りがちです。しかし、マニュアルをデジタル化しておけば、作業者同士で気軽に業務内容やノウハウを共有できるため、業務効率化にもつながるでしょう。
効率的なルーティングと迅速なスキルマッチングの提示
顧客からの依頼でフィールドサービスのエンジニアを手配する場合、ITソリューションツールを活用することで、現場により近いエンジニアを自動で配置できるようになります。これにより、顧客から依頼を受ける案件数を増やせるというメリットが生まれます。
また、常に最適なルートがデバイス上で分かると、派遣されるエンジニアにとって無駄が省けるのもメリットです。移動にかかる時間や労力の課題をクリアできるため、コスト削減にもつながります。
さらに顧客から依頼を受けた時点で、どういったスキルが必要で、どのエンジニアをアサインするのかといったスキルマッチングも自動化できます。少しでも早くエンジニアをアサインできれば初動が速くなり、顧客の要望にもスムーズに応えられるでしょう。
MRデバイスの活用で業務効率化が可能
近年では、フィールドサービスをより効率化させるために、MRデバイスを活用するケースが増えています。MRとは「Mixed Reality(ミックスドリアリティ)」という英語を略した言葉です。「複合現実」とも呼ばれ、リアルな現実空間とVR(Virtual Reality:仮想現実)を融合させる技術のことを指します。
一般的に、VRは専用のヘッドギアなどを装着することで、あたかもCGで作られた仮の世界(仮想現実)にいるかのような状態を体験できる技術です。一方で、MRはそれだけにとどまらず、現実に投影されたCGに直接手を加えられる特長があります。フィールドサービスの現場においては、たとえばMicrosoft 社の「HoloLens 2」といったMRデバイスなどがよく活用されています。
なお、海外ではすでに製造業のみならず、医療機器メーカーや電気機器メーカーなど多くの業界で本格的に導入され、数多くの実績が認められています。事務所から現場にいるエンジニアの作業を強力にサポートし、生産性向上や作業効率化を図れることから、コスト削減や顧客満足度向上にもつながっているのです。
まとめ
フィールドワークにおける点検作業は、ヒューマンエラーが起きやすいなど多くの課題が残されています。それらをカバーし、作業効率化を目指すためには、「Microsoft Dynamics 365」などの支援ツールや、MR(複合現実)デバイスを利用するのも手です。フィールドで作業するエンジニアを強力にサポートし、顧客満足度向上にも寄与できるでしょう。点検作業の効率化に課題をお持ちであれば、これらの対策をぜひ参考にしてみてください。