最近よく耳にするESG経営とは「環境」「社会」「企業統治(ガバナンス)」の3点を意識して行う経営のことです。この記事ではESG経営の概要を説明します。またSDGsとの相違点を比較したうえで、ESG経営の重要性や積極的に取り組むメリットについてご紹介します。
ESG経営とは? 簡単に解説
まず、知っているようで知らないESG経営の概要や重要視されてきた背景、SDGsとの違いはあるのかといったことについて解説します。
ESG経営とは
ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとった用語で、企業が長期的な成長をしていくために重要な要素となっています。たとえば、環境汚染や社会的規範、コーポレートガバナンスの遵守といった、非財務的な取り組みを重視した経営スタイルのことを、ESG経営と呼んでいます。
それぞれの要素の具体例は以下のとおりです。
- Environment(環境)
CO2排出量削減、廃プラスチックの削減、再生可能エネルギーの使用など、自然環境へ配慮する取り組み
- Social(社会)
労働環境、人権問題、ダイバーシティ(多様な人材、女性の活躍)、地域社会への貢献など、現代社会に及ぼす影響がある取り組み
- Governance(企業統治)
積極的な情報開示、資本効率化、社外取締役の任命など、ステークホルダー(株主、消費者、取引先顧客)を守るための企業の取り組み
ESG経営が拡大している背景
18世紀後半の産業革命以降、人は豊かさを求め、企業は次々に技術力を競ってきました。一方、利益を追求する企業が増えると同時に、地球環境を汚染したり、社会に歪みをもたらしたりする問題も散見されるようになりました。
そこで国連は、2006年に「責任投資原則(PRI)」を提唱。その中で投資家に対し、ESGを意識している企業への投資を推奨すべきだと発表したのです。その後、経済的な利益獲得に集中する経営のあり方を見直すべきだとの世論が広がりました。ESGを意識した取り組みを行っている企業へ投資する動きは年々高まっています。このような時代の流れで、企業と社会がともにリンクし合い、将来にわたって持続的に発展していけるような経営のあり方、つまりESG経営という考え方が重要視されるに至ったのです。
ESGとSDGsの違い
同じような意味で使われる用語に「SDGs」があります。双方にはどのような違いがあるのでしょうか。そもそもSDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字から作られた用語で、「持続可能な開発⽬標」と訳されています。
ESGがあくまで「企業」が長期的に目指すべき経営課題であるのに対し、SDGsは国連や各国政府全体などで決定した「全世界」が持続的に目指す開発目標という違いがあります。似たような項目であっても対象や意味が異なっていますが、ESGなくしてSDGsの達成は困難であり、互いに深い関係性があると理解しておいた方がよいでしょう。
ESG経営を意識する重要性
では企業にとって、ESG経営はなぜ重要なのでしょうか。企業はいかに投資家にアピールし、どれだけ自社に投資してもらうかという課題を抱えています。投資家が投資する際の検討材料として、以前は短期的な利益や収益、株価といった財務情報ばかりにスポットが当てられ、非財務的な情報を重んじて投資してもリターンが少ないというのが通説でした。
しかし、時代の流れで企業価値の考え方が変化し、長期的な目線で環境や社会活動に力を注ぐ企業が増えてくると、投資家の資金も次第にESG経営を行っている企業に集まり、ESG投資の規模が拡大してきたのです。今では世界の全投資額における3分の1がESG投資であると捉えられており、日本でも2014年からの2年間で投資額が70倍にも跳ね上がったことから、重要性が年々高まっていることは明白です。
また、顧客層や取引先の新規開拓につながるという点も、ESG経営が広まってきた一因といえます。たとえば減農薬野菜など、価格より精神的価値を重視して商品を購入する層へもアピールできるといった例があります。
ESG経営に取り組むメリット
ここではESG経営に取り組むメリットについて、代表的な4点を紹介します。
将来的なキャッシュフロー強化
企業が利益の追求のみに走らず、社会貢献もしっかり取り組む姿勢を示すことで、投資家や消費者から高い評価を受けられるようになると、ブランドイメージが上がります。信頼できる企業として、商品やサービスを購入する新たな消費者が増え、人気の投資先となれば、ビジネスにおけるさらなる成長も期待できるはずです。したがって企業の財務基盤を安定させ、将来的なキャッシュフローの強化にもつながるでしょう。
経営リスクの軽減
世界的な地球温暖化が進んでいることから、自然環境問題に対する関心が高まっています。また社会においても金融危機や労働問題などのリスクを常に抱えています。今後ますますESGという概念が世界に浸透していくだろうと考えると、その流れに従い長期的な成長を目標にESG経営を行い、「信頼できる企業」としての認識を得ることで、経営リスクの軽減も期待できます。
ブランドイメージの向上
昨今、投資の世界においてESGはCSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)といった指標とあわせて話題になることが増えています。利益だけを追求するよりも社会貢献性のある企業は、消費者からもよいブランドイメージを持たれやすいことから、ESGの取り組みを公開すれば、企業価値も向上するでしょう。
たとえば、環境に優しい製品を開発、販売したり、育児や介護がしやすい様々な働き方を推進したりするような取り組みなどが一例です。このようなESG経営を行っている企業は投資対象にもなりやすいため、資金調達という点でもメリットがあります。
優秀な人材の確保
少子高齢化や人口減が進んでいることによって、どの企業も優秀な人材確保に苦労しています。海外への人材流出といった課題も指摘されていますが、ESGの観点から働きやすい労働環境整備に取り組む企業であれば、社会からの評価も高くなるため、必然的に優秀な人材も集まりやすくなるというメリットもあります。他社よりも優秀な人材を確保できれば、ビジネスをより進展できる可能性が高まります。
ESG経営を成功させるには
世界レベルでESGへの関心が高まっている昨今、投資家や消費者から選ばれる企業となるには、ESGを意識した経営が必要不可欠になりつつあります。現状ではESGに関する明確な基準が存在しないため比較が困難ですが、2021年11月、イギリスのIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」を設立し、2022年6月をめどに、企業による気候変動リスクに関する情報開示の国際基準をまとめると発表しました。
今後は気候変動リスクだけにとどまらず、ESGにも新たな基準が設けられるとの見通しがあり、一定規模以上の企業はその基準に基づいて情報の管理を行い、開示が義務化される可能性もあります。これらの動きに対応するためには、ESGでも財務会計と同じくERPを使った情報の管理が必要となるでしょう。
まとめ
ESG経営の概要から背景、企業が積極的に取り組むことの重要性やメリットについて紹介しました。今後は世界的に新たな基準が設けられることも想定されます。これらの様々な動きに対応し、かつ企業でESG経営を成功させるには、クラウドでのERPシステムを導入し、しっかりと情報管理を進めていく必要があります。時代の波にうまく乗り、企業価値を高められるように早期の準備・導入を検討してみてください。