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日系企業の海外法人のERP導入、そのポイントについて解説

1990年代、日本企業の海外法人向けシステム導入といえば、SCM(Supply Chain Management)や製造管理システムはスクラッチ開発や国産パッケージを利用し、会計システムのみ現地のパッケージを利用しながら、それらを組み合わせることで基幹系システムを構築するケースが多くありました。

ところが現在では、海外対応に富んだEPRパッケージが多数提供されるようになり、最初から会計機能を含んだERPを使った海外法人でのシステム導入が進んでいます。本稿では、現代ビジネスを生きる日系企業の海外法人が、ERP導入において押さえるべきポイントについてご紹介します。

日系企業の海外法人のERP導入、そのポイントについて解説

ERP導入で失敗する8つの理由と回避策

海外法人のERP導入3パターン

最初に、日系企業の海外法人がERPを導入するにあたり、主流となる3つのパターンをご紹介します。

国内本社テンプレートの開発及び展開

国内本社が海外法人に求める要件および現地のローカライゼーションをテンプレートとして開発及び展開します。

主な要件としてはコード体系(勘定科目、取引先、品目など)、棚卸評価計算方法、分析軸(増減理由コード、品目属性コードなど)、本社で利用している連結会計システムやBI(Business Intelligence)との連携、在庫データを正しくとらえるための在庫受払データの抽出、ビジネスプロセス、内部統制、セキュリティ、帳票保存義務等の監査、などです。

テンプレートを開発する場合、どこかの拠点が最初の導入対象として決まっていることが多く、その拠点の業務要件を取り込みながらテンプレートを開発していきます。本社のIT部門にテンプレート開発のノウハウが残るため、新たに海外法人へ導入する際に本社メンバーがプロジェクトに参画できます。2拠点目以降ではテンプレートを効率よく開発できるので、将来的に海外進出の拡大を計画している企業におすすめです。

一方、海外法人としては本社主導のプロジェクトとして、本社からサポートを受けることができるためシステム立ち上げを楽に行えます。ただし、現地要望をすべて取り入れることは難しいでしょう。

コーポレートリクエスト

国内本社にてシステム要件をコーポレートリクエスト(ドキュメント)としてとりまとめて、リクエストに応じたシステム導入を海外法人主導で行う方法です。要件をコーポレートリクエストとしてまとめ、海外法人に合わせて英語で作成します。作成したコーポレートリクエストは、他の海外法人に転用して海外進出を効率よく拡大していくことも可能です。

海外法人をうまくコントロールすることで、本社要望の大枠を統一することが可能です。ただし、海外法人の要望が多数採用されることが多く、他の海外法人に転用する際に使えないリスクもあります。

海外法人としては、本社要望を逸脱しない範囲である程度自由に、海外法人の要望に沿ったシステム構築が可能です。現地には開発/カスタマイズを実施するため、現地スタッフに負荷がかかるリスクはあります。

現地主導での導入プロジェクト

海外法人が独自にシステム導入を行う方法です。現地主導の導入プロジェクトなので、本社からの管理は難しくなります。本社が求める方向性でシステムが構築されているか、プロジェクトは遅延していないかなどの進捗確認を実施することが大切です。

導入にかかるトータル費用を低く抑えることができますが、現地主導なので本社が望む要件が欠陥するリスクが高くなります。また、現地主導の導入プロジェクトが失敗に終わると、すべてを最初からやり直すリスクが高まるでしょう。

海外法人からすると、現地の要望を柔軟に取り入れられますが、現地スタッフにかかる負担は最大限に増えるため、失敗する可能性も高まります。

多くの企業が、これら3つのパターンでERPを導入することになります。それぞれに一長一短があるため、一概にどれが正解とは言えない状況です。

第4の選択肢「クラウドERP」

言うまでもなく、日系企業の海外法人におけるERP導入というのは決して簡単なことではありません。最も難しいのは、「本社要望を取り入れつつ海外法人にフィットしたシステム環境を構築すること」です。

本社としては海外法人のビジネス情報をリアルタイムに収集し、分析してグループ全体としての経営戦略を立てていきたいと考えています。しかし、そのためには本社開発のテンプレートを適用する必要があり、となると現地スタッフは不慣れなシステムを日常的に利用することになるため、生産性が低下する恐れがあります。つまり「あっちを立てればこっちが立たず」、バランスを取ることが難しいのです。

そこで第4の選択肢として検討していただきたいのは、「クラウドERP」の存在です。クラウドERPとは、クラウドサービスとして提供されるERPのことであり、システム環境に必要なサーバー調達やネットワーク整備を不要として、インターネット回線があればシステムを利用できるようになります。では、クラウドERPが日系企業の海外法人のERP導入に有効な理由とは何でしょうか?

グローバル対応の製品が多く、現地監査にも対応できる

クラウドERPの中には多言語/多通貨対応の機能によって、海外法人でも難なく利用できるのがあります。特に海外製のクラウドERPは数十の言語と数百の通貨に対応していることから、幅広い海外進出に適用できます。会計システムは現地監査にも対応しているので、システム利用時の負担を大幅に軽減してくれるでしょう。

サーバー調達やインフラ整備が不要なので導入負担を軽減できる

クラウドERPはインターネット回線を通じて利用するシステムなので、サーバー調達やインフラ整備はもちろん不要です。これにより、現地スタッフの導入負担を大幅に軽減できることから、ERP導入の失敗確率をかなり軽減できます。

専用回線の構築不要で本社と海外法人のシステムを連携できる

本社システムと海外法人システムを連携するためには、専用回線の構築及び運用が必要なため、多大なコストと運用負担がかかります。一方、クラウドERPはインターネット回線を通じていつでもシステム同士が共有するため、専用回線は不要です。また、本社ではコアERPの上に新しくクラウドERPを連結する「2層ERP」を採用すれば、海外法人システムと統一感のあるシステム環境構築が可能になります。

運用負担がかからないため少ないリソースで高い成果を上げられる

クラウドERPは提供事業者がシステムの運用管理を実施していることから、日常的な運用負担を大幅に軽減できます。海外法人が少ないリソースでより高い成果を上げるためには、そうした負担を軽減することが大切です。

いかがでしょうか?クラウドERPとて、必ずしもすべての海外法人の最適解になるわけではありませんが、他の3つの選択肢に比べて効率的にシステム環境を構築できることは確かです。また、一部のクラウドERPではシステムを柔軟にカスタマイズできるものもあります。日系企業の海外法人におけるERP導入の際は、ぜひクラウドERPに着目してみましょう。その際にはDynamics 365のご検討をお忘れなく!

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