ERPの導入は企業が持つ資源を適切に分配し、無駄のない企業経営を実現します。企業を構成するあらゆる要素の効率化を図る結果になるため、将来的に多くの利益をもたらすきっかけになるでしょう。
しかし、初めての場合にはERPの導入期間や手順が正確にわからないこともあるのではないでしょうか。こちらではERPの導入にかかる期間とその手順を、5つのステップで紹介します。
ERPの導入期間を把握して、どのような準備が必要になるのかをチェックしてみてください。
ERPの導入するメリットとは
ERPを導入することは、いくつかのメリットを得ることにつながります。
例えば以下のようなメリットが、ERPの導入から獲得できるでしょう。
- 社内データの一元管理が可能になる。
- リアルタイムで経営の可視化が可能になる。
- 開発期間やコストの削減
- セキュリティの向上
- ベストプラクティスを参考にでき、最適化を図れる。
ERPは社内データの一元管理を可能とし、すべての情報をまとめて取り扱える統合データベース環境を実現します。一元管理は法律や原価の変化などによって、システムに修正すべき点が出た場合にも、個別の部署で対応する必要がなくなります。
あらゆる情報がリアルタイムで反映されるようにもなるので、経営状況を正確に把握することが可能です。そのときの人事情報や在庫数に合わせた、最適な判断が下せるでしょう。重複した処理や申請漏れなどといった人ため的なミスにも気づきやすく、余計なトラブルを少なくしていくことも可能です。
ERPのデータの一元管理やリアルタイムでの情報共有は、結果的に開発期間やコストの削減にもつながります。加えて、システムが統合されることによって、あらゆる情報を高度なセキュリティで守りやすくなるので、情報漏えいなどのリスクが軽減されるでしょう。
そしてERPの導入にあたってサポートをしてくれるベンダーは、成功事例や失敗しないためのノウハウを熟知しています。そういったベストプラクティスを参考にして導入を行えるため、業種や職場環境ごとの最適化を図ることもできるのです。
ERP導入によって得られるメリットは、基幹業務全般の改善を促します。
企業規模に関わらず、現状に何かしらの問題を抱えている場合には、ERPの導入がおすすめです。
ERP導入までの期間は?目安を確認
ERP導入にかかる期間の目安は、企業の規模や業種によって異なります。
例えば中堅・中小企業におけるERP導入期間の平均は、3ヶ月から9ヶ月程度と見積もられます。
ERP導入時の提案する機能や利用人数などによっても変わり、1億円の規模を導入する場合には12ヶ月~19ヶ月程度が考えられるでしょう。
システムの追加が検討されたり、カスタマイズが必要になったりする場合には、導入期間は変動します。場合によっては目安よりも長期化する可能性もあるため、ERP導入を考えるのなら早めの準備が必要となるでしょう。
ERP導入の手順とすべきこと/h2>
ERP導入を行うときには、以下のプロセスを基本に進めていきます。
- 企画と適用範囲を明文化する
- ERP製品とベンダーの選定
- プロジェクトの要件定義
- 実際の導入から運用
この流れを一つずつクリアしていくことで、ERPの導入が完了します。各ステップにかかる時間が、ERP導入期間として計算されるでしょう。
以下からは、ERP導入におけるそれぞれのプロセスの詳細を解説します。
手順1) 企画・導入目的と適用範囲を明文化
ERP導入における最初のステップでは、まず導入目的や適用する範囲を企画として明文化します。なんのためにERPを導入するのか、どんなことをビジネス上で達成したときに成果として認めるのかなどを、文章として提示することが必要です。
明文化することでERPベンダーに求める機能やシステムを伝えやすくなるので、意思疎通がスムーズとなります。
ERP導入における企画の明文化には、1ヶ月程度の期間が必要です。十分な期間を割いて、自社が抱えている課題をピックアップし、解決するために必要なものを突き止めていきましょう。
例えば「社内の情報共有が上手くできていない」「各部署の管理システムがバラバラなので無駄なコストが発生している」といった、具体的な課題を浮き彫りにしてみましょう。
企画を明文化する段階で、ERP導入における予算や大まかなスケジュールを決めておくこともポイントです。
初期の段階で決めておくことができれば、その後の計画修正などが容易になります。また、ERP導入計画における担当者も決めて、プロジェクトを牽引していけるように手配することもおすすめです。
それぞれの部署の問題点を理解できている担当者を、部署ごとに設定し、ERP導入における情報共有がスムーズになるように環境を整えておきます。
手順2) ERPとベンダー選定/契約
ERP導入における方向性が定まったら、実際に導入するERPとベンダーの選定を行い、契約に進みます。
先に明文化した課題や目標を軸にして、それを解決に導いてくれるERP製品を探します。一般的にはERPベンダーと一緒になって製品を選定するので、ERP製品の選定=ERPベンダーの選定と考えても問題ありません。
ERPベンダーは比較サイトなどを参考にして、複数の企業をピックアップします。気になるERPから資料(パンフレットやカタログなど)を取り寄せて、具体的な比較を行いましょう。
ERPベンダーの比較時にチェックしたいのが、以下のポイントです。
- 機能追加などの拡張が行えるアドオンモジュールがあるか
- カスタマイズ性があるか
- 自社にとって不要な機能がパッケージ化されているか
- アクセス制限や認証制度などのセキュリティがあるか
- 導入前にトレーニングがあるか
- サポート体制が充実しているか
ERPベンダーに目星がついたなら、予算や期間などの具体的なプロジェクトを提案し、契約を行います。長期の付き合いになるので、信頼できるERPベンダーを見つけるための期間として2ヶ月から3ヶ月程度の時間が見積もられます。
手順3)要件定義/設定
ERPベンダーとの契約が決まったなら、要件定義と設定を行って必要とされるシステムや機能を明確にしていきます。
ERPのパッケージをフィット&ギャップ分析を使って確認し、必要に応じて機能追加やカスタマイズができないかを提案します。多くのERPパッケージが業務に適合するように作られていますが、カスタマイズもなく完璧にマッチするケースは多くはありません。
今の業務を変更する必要がないもの(フィット)と、変更していくべきもの(ギャップ)を明確にして、自社の場合に必要とされる対応を確認しましょう。
そのほか、ERP導入後に必要となる業務規定やマニュアルの作成、現場へ導入する具体的な計画も考えます。
ERPを導入した後に達成すべき経営指標や目標値も、要件定義として明確に設定するといいでしょう。要件定義と設定の際にはトータルのコストを明確にして、予算と期間内で収まるようにERPベンダーと調整をしましょう。
要件定義はERP導入プロジェクトの基礎となるため、時間をかけて慎重に進める必要があります。
後から追加や撤回といったことが起こらないように、先に設定した担当者やERPベンダーと積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。要件定義とその後の設定作業の期間は、約2ヶ月程度を要するものと認識されます。
手順4)トレーニングや研修/導入
ERPの導入後にスムーズにそのシステムを使えるようにするため、導入準備としてトレーニングや研修を実施します。
基本的にERPを導入する際には、業務における説明を行ってエンドユーザーとなる社員の教育が必要です。すぐにERPの環境に馴染めるようにトレーニング期間を設け、必要な知識や技術を伝えておくことがポイントです。
また、ERPによって企業内のデータにアクセスできる範囲が広がることを見越して、情報漏えいの危険性やセキュリティ面における注意事項の教育も考えられます。
ERPの導入ではシステムのセットアップが行われ、現環境と入れ替える形でプロジェクトが進行します。アドオンやデータベースが必要な場合にはこちらも作成され、導入が進められるでしょう。
導入準備として社内マニュアルを作成し、アクセスや業務フロー、不具合が起きた場合の対処法や注意点などを周知させることも必要です。
ERPの導入はベンダー側の開発や設定の進捗によって、実際の期間が変動します。目安としての導入期間は、2ヶ月~4ヶ月程度を見積持っておくとよいでしょう。
手順5)運用/サービス
上記の手順で準備が整ったら、ERPの運用・サービスが開始されます。
ERPの運用・サービスの期間は、約4ヶ月程度になるでしょう。
ERPの運用の前に必要とされるのが、テストとリリース準備です。ERPの設定や開発後は各機能をERPのテストサーバーを使って、業務に導入しても問題ないのかをテストします。
テストは機能ごとに確認を行う単体テスト、各機能の連携を確認する統合テスト、導入本番の前に行う総合テストなど、複数回のフェーズにて行われます。
可能な範囲でこまめに機能のデモを提供してもらい、実際の業務中に適合するのかをチェックすることで齟齬をなくせるでしょう。
リリース準備には、テストをクリアしたERPの本番環境にデータを移行したり、トレーニングを実施したりといった作業が含まれます。スケジュールを詰めすぎると十分な準備ができなくなる可能性があるので、運用前には余裕を持って準備期間を設定することが重要です。
テストとリリース準備に必要な期間は、1ヶ月から2ヶ月程度と考えられます。準備が完了したら運用を開始し、会社にERPの新システムへの切り替えを実施します。
移行後のデータが正しく反映されているのかを確認し、問題なく利用できるのかをすみずみまでチェックします。問題があれば適宜報告をし、安定するまで何度も対応が繰り返されます。
運用開始にかける期間は、だいたい1週間程度が想定されます。
ERPを導入してからしばらくの間は、ERPベンダーが現地やリモートで導入判定サポートを行います。導入してから発見された問題や疑問があれば、サポートを通じて支援を依頼しましょう。
導入判定サポートの期間は、1ヶ月程度が見込まれます。
まとめ
ERPの導入には、長い期間が必要になります。
一連の流れを構成するステップごとに必要な期間が想定されるので、こちらを参考にどの程度の導入期間が考えられるのかを確認してみてください。
クラウドビジネスアプリケーション「Dynamics 365」は、必要最低限の機能から開始できる拡張性や、システムの一部分の移行も可能な柔軟性を備えています。
スムーズな導入が行えるので、ERPの導入期間が想定よりも長く感じられた場合には、クラウドで利用できるDynamics 365の利用も検討してみてはいかがでしょうか。