ERPシステムは「大企業が導入するシステム」というイメージが、数年前までの常識でした。しかし、近年は中小企業のERPシステム導入が活発化しています。今やERPシステムのイメージは一変し、企業規模を問わず、多くの企業にとって必要不可欠なものとなっています。
しかし、ERPシステムのニーズが増加している現状に対し、果たして本当に中小企業へのERPシステムは必要なのでしょうか?今回は、中小企業のERPシステム導入のメリットについて考えていきます。
ERPシステムを導入するメリットとは
1990年代後半から2000年代前半にかけて普及期を迎えたERPシステム。このERPシステムを導入する、そもそものメリットとは何でしょうか?
まず、最も大きなメリットは情報管理の一元化にあります。企業には業務遂行をスムーズにするために、様々な業務アプリケーションが導入されています。会計システム、営業システム、販売システムなどそれぞれの業務アプリケーションは、独立して存在しています。つまり、システム環境が「分断化している」ということです。
データを基準とした正確な経営判断が重要視されている現在において、こうした分断化されたシステム環境は、大きな障壁です。各業務アプリケーションから生み出されるデータを収集し、分析可能な状態にするためには、多くの手間と時間がかかります。
このため、経営判断を下すための重要な材料が、1ヵ月前のデータということも少なくありません。こうした環境ではリアルタイムな経営判断を下すことができず、ビジネスが停滞・遅延する大きな原因です。
一方ERPシステムは、統合されたシステム環境を提供することで、各業務アプリケーションから生み出されるデータを単一データベースで管理することができます。つまり「情報管理の一元化」です。
こうした、ERPシステムによる業務アプリケーションの統合は、データの収集や分析可能な状態にするための手間と時間を遥かに短縮することができます。これにより、まさにリアルタイムな経営判断が可能になるのです。
このように、ERPシステムの導入は業務アプリケーションの統合というメリットだけで、かなり大きな導入効果を得ることができます。しかしこの他にも、組織全体の業務効率アップなど様々なメリットを得ることができるのです。
中小企業はERPシステムは必要か?
ERPシステムを導入することは、確かに多くのメリットがあります。しかし、大企業同様に、中小企業がERPシステムを導入する必要はあるのでしょうか?これを知るためには、まず中小企業が直面している課題について理解しなければなりません。
≪中小企業の課題≫
- 大企業に比べ労働生産性の水準が低下している
- 収益に直結するシステムの導入が追いついていない
- ITシステムの不足感・老朽化が進んでいる
経済産業省中小企業庁が取りまとめた資料によれば、中小企業はこうした課題を抱えています。3つの課題のうち、2つはITシステムに関した課題です。
収益に直結するシステムとは、販売システムや営業システムなど、フロントオフィス系のシステムを指します。一方、経理・給与業務など内部管理業務向けのITシステムの導入は、中小企業でも進んでいます。
加えて、販売システムや営業システムといったITシステムを導入している中小企業でも、ITシステムの不足感や老朽化という問題が存在します。ITシステム導入やバージョンアップには手間もコストも多くかかるので、資金が限られている環境で、おいそれと導入できるものではありません。
中小企業の課題に対する、ERPシステムのアプローチ
こうした課題に対して、ERPシステムはどのようなアプローチを持っているのでしょうか?一つ目の課題である「労働生産性の低下」に対しては、非常に大きな効果を持っています。労働生産性が低下するという課題には、複雑化した業務プロセスに対し、人手のみで対応しているという原因があります。
ビジネスを取り巻く環境は刻一刻と変化し、業務が複雑になる中で、ITシステムによる対応ができないことはビジネスの停滞を生み出します。しかし、ERPシステムがあれば、複雑化した業務プロセスを自動化することが可能です。
例えばデータ入力作業では、業務アプリケーションごとに同じデータを入力する必要があります。異なるシステムで同じデータを入力することは大きな手間であり、ミスを発生させる原因です。これにより、労働生産性は低下します。
一方ERPシステムでは、各業務アプリケーションが統合されているため、データの一元管理を可能にします。これによって、二重のデータ入力作業はなくなり、各業務アプリケーションでのデータ連携も可能です。こうした作業効率アップの効果は、データ入力に限りません。組織全体の作業効率がアップすることで、労働生産性を向上することができるでしょう。
2つ目の「収益に直結するITシステム導入」も、3つ目の「ITシステムの不足感」も、ERPシステムを導入することで解決できます。結論を言えば、こうした課題を解決できることから、ERPシステムは中企業にとって必要不可欠なITシステムでしょう。
中小企業のERPシステム導入、コスト・運用課題はどうする?
中小企業にとってもERPシステム導入が重要ということが分かっても、導入に対し課題があることも確かです。その課題が、導入コストとシステム運用です。
SAPやOracleといった大規模なERPシステムは、導入にあたり数億円から数十億円の導入費用がかかります。しかし、こうした資金がある中小企業は少なく、加えて言えば、そこまで大規模なERPシステム環境を必要としていません。
中小企業には、導入が低コストで、かつコンパクトにまとまったシステム運用負担の少ないERPシステムが必要です。
そこで、中小企業のERPシステム導入課題を解決するのが「クラウドERP」です。クラウドERPとは、社内インフラを整えて導入するERPシステムを、インターネット経由でサービスとして利用するERPシステムです。
つまり、導入企業は社内インフラを整える必要がないので、ERPシステムを低コストで導入することができます。さらに、システム運用のほとんどをシステム提供事業者が行うので、導入企業にシステム運用負担がかかりません。これにより、ITリソースが少ない中小企業も、そもそもITリソースを持たない企業もERPシステムを導入することができます。
中小企業には、中小企業なりのERPシステム導入
ERPシステムを導入することで、大企業が構築するシステム環境に近い環境を、構築することができます。しかし、ERPシステムの導入まで、大企業に合わせる必要はありません。中小企業には、中小企業なりのERPシステム導入というものがあります。
例えばMicrosoft Dynamics 365は、クラウドERPであり、かつ多くのビジネスパーソンが慣れ親しんだOfficeアプリケーションのような操作感を持ちます。現状の経営課題を解決したい中小企業は、ぜひERPシステムの導入をご検討ください。