日本経済は、グローバル化によってより結びつきが強くなった世界経済から 様々な形で影響を受けており、規模を問わずあらゆる日本企業がグローバル化の波に直面しています。そのため国内企業もその存続をはかり、少しでも競合優位を目指すためグローバル展開を目指すことはもはや必然と言える状態です。販路拡大のためにグローバル進出を行う企業、グローバルレベルのサプライチェーン、優秀な人材の確保、利益確保のための海外拠点展開など、その理由はざまざまです。
しかし、その一方で、グローバル化に向けた基盤が未完成のまま海外に進出し、思うような成果が挙げられてない、もしくはリスクを抱えるという企業も多々存在します。
こうした状況下でのグローバル化に際し注目を集めているのがERP(Enterprise Resource Planning)です。とりわけ、拠点間をネットワークで繋げ共有可能なクラウドERPが人気を集めています。
本稿ではこのグローバル時代に必要なERPについてご紹介します。
グローバルビジネスの課題≒既存ERPの適応不可
グローバル化を推進するにあたって企業は多くの課題に直面します。その一つがシステムです。現代の企業においてシステムは企業運営に必要不可欠な存在であることは言うまでもありません。そして、その根幹をなすERPシステムをグローバルに展開することを考えるかもしれません。しかし、それは容易ではありません。まずはその課題に関してご紹介していきましょう。
課題1.現地商習慣への順応
将棋とチェスはどちらも駒を使用し、王将(キング)を取り合う同じボードゲームでもルールは違います。類似した部分もありますが決定的な部分では違ったルールを持っています。それと同様に、国が変われば同業界でも商習慣は大きく変化します。もっと言えば現地のビジネスマナーなども、日本のそれとは180度違うこともあります。
グローバル化を目指す企業にはそれまでの成長を支えてきた経営スタイルや商習慣に少なからず自負があるため、現地法人においてもそれらを反映したいと考える経営者が多いでしょう。しかし、そうした取り組みが成功するケースはほとんどありません。
世界的大企業の中にはグローバルで一貫した商習慣を保っているところもありますが、これは各現地法人が本社の方針に合わせているというよりも、企業そのものがグローバルで一貫した商習慣を保てるように変化したと考えてよいでしょう。
課題2.現地法人のIT技術
現地法人を設立する際にはIT技術投資の必要性が生じます。本音を言えば日本企業で活用しているIT技術をそのまま適用したいところですが、多くの現地法人CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)は「日本のIT技術は自国の商習慣にマッチしていない」と返答し、適用を拒みます。しかしこれは、決してわがままを言っているわけではありません。
皆さんが外資系企業の日本法人CTOだと仮定して、海外本社から「○○というシステムを導入するように」と通達されたら、と想像してみてください。グループ的にはそれが最善であると理解しつつも、日本法人のメンバーや業務効率を考慮すれば導入を拒む意見が起きるのは当然のことです。
その結果、多くの現地法人ではその国で開発/販売されているソフトウェアを取り入れることになります。しかしその行く末は「拠点ごとに属人化された情報」と「情報共有に膨大な時間をかける」「セキュリティリスクの拡大」「ガバナンスの欠如」という現実です。
課題3.スピーディかつ無駄の少ないグローバル展開
グローバル化というものはそれ自体に、企業の体力も資金も消費します。そのためグローバル展開の準備が長期化するほどコストも疲労も蓄積していくでしょう。本当ならじっくりと時間をかけて慎重に展開していきたいところですが、コスト等を考慮するとやはりスピードも大切です。
その方法として現地法人とのM&A(Margers&Acquisitions:合併&買収)でグローバル展開を推し進める日本企業が増えています。M&Aならが現地での経営基盤と販売ルート等をスピーディに整えることができるため、確かに効率的です。
しかし現地商習慣への順応やIT技術問題等が無くなるわけではないため、結果としてグループ全体を通じた経営理念や方針を共有することや、本社との連携体制を取るために多大なコストと時間を費やしてしまいます。
課題4.異なる通貨による決算処理
海外展開に伴い、今まで以上に複雑化する業務が「決算処理」です。本社企業は現地法人も含めて連結子会社あるいは関連子会社として決算業務を進めなければいけません。その際に問題になるのが通貨と為替レートです。常に変動する為替レートを確認しつつ決算処理を行わなければいけませんし、為替レートがちょっと変化しただけでも財務上の数字が大きく変化します。為替レートの変動をリアルタイムで追いつつ、正しい情報で決算処理を行うための環境が必要になるでしょう。
多くの企業では大きくは上記のような課題に直面します。そのために本社のERPシステムなどを海外にも展開すれば良いのでは?と短絡的に考えてしまうかもしれません。しかし、日本企業で稼働しているERPの多くは、日本の商習慣に合わせてアドオン開発が加えられていますし、コスト面、人材面などを考慮すると多くの企業にとっては不可能と言ってよいでしょう。しかしながら、現地法人との経営情報統合を考えると、ERPの海外展開は必要不可欠とも言えます。
グローバル化に欠かせないERP像とは?
ERPについて改めて整理すると、経営上不可欠な基幹システム(生産/販売/購買/在庫/会計/人事)やその他情報管理に必要な業務システムを統合し、1つのデータベースでそれぞれの情報を管理することで経営可視化や情報活用を促進するためのものです。このERPを現地法人にも同じように適用できれば、グループ全体での情報共有力が飛躍しますし、現地法人を含めてスピーディな経営意思決定を下すことができます。
しかし前述のように、日本企業のERPを現地法人に適用することは難しいのが実情です。そこで注目されているのが海外製クラウドERPです。海外製クラウドERPの中には多国の言語や通貨に自動対応しているものが多く、グローバル環境で連携されたERPは自動的にデータの変換がされ、言語や通貨が異なっても国内のグループ企業とシステム連携するように、現地法人との連携が可能になります。
例えばクラウドERPとしてマイクロソフトはMicrosoft Dynamics 365を提供しています。世界で高いシェアを誇り、マイクロソフト製品ならではの連携性や使い勝手によって多くのビジネスパーソンに愛されています。
Microsoft Dynamics 365の利点は何より「世界共通のインターフェース」でしょう。ExcelやPowerPointといったOfficeアプリケーションは世界中のビジネスパーソンにとって使い慣れたツールですし、それらのインターフェースを踏襲したり連携したMicrosoft Dynamics 365は、万人にとって使いやすいクラウドERPです。
日本企業と現地法人でインターフェースへの理解度が同じように進めば、そこにある機能を最大限活用することができますし、情報共有率も大幅にアップします。ですので、グローバル化を検討する際は、Microsoft Dynamics 365の利点にぜひご注目ください。