ERP導入に失敗しないためには、場当たり的な導入を行うのではなく、しっかりと手順を守った上で導入することが重要です。今回は、そんなERP導入手順について9つのポイントに分けて紹介していきます。
今回紹介するERP導入手順
- 手順1.ERP導入の体制を整える
- 手順2.正しいポイントを押さえてERP選定を行う
- 手順3.ERP導入前の業務整理を行う
- 手順4.カスタマイズを抑制するため業務改革を行う
- 手順5.関係者各位と導入スケジュールを調整する
- 手順6.導入形態に応じてインフラ整備を行う
- 手順7.ERPの初期設定を行う
- 手順8.導入後のルールを整備する
- 手順9.各ユーザーにERP教育を行う
手順1.ERP導入の体制を整える
ERPは全社的な業務改革を行うためのソリューションであるため、担当者や経営者の一存で導入を進めていくのは失敗の原因になります。多くの企業が、現場社員の声を無視してERP導入を強行したことで失敗に陥っているのです。
従って手順1ではERP導入の体制を整えることが重要です。
具体的には部署間でのコミュニケーションを横断的に取れる人材をPL(プロジェクトリーダー)に抜擢し、さらにPLを中心に各部署の責任者で体制を整えていきます。
経営者や上層部はあくまで「決裁者」という立場を取り、プロジェクトチームに導入検討を任せることも重要です。そうすることでより現場の声を反映したERP導入を実現することができます。
手順2.正しいポイントを押さえてERP選定を行う
次に自社に最適なERP選定を行っていくわけですが、ここでも現状課題の把握や要件定義など細かな手順を踏んでいく必要があります。具体的には次のような手順を踏んでいくことになるでしょう。
- 各部署の現状課題をヒアリング
- ヒアリング内容をもとに要件を定義する
- 定義した要件を各部署責任者と調整する
- ERP導入による業務形態の変化を予測する
- 要件をもとにERPをピックアップする
- 導入パートナーとコミュニケーションを取る
- サポート体制を確認する
各手順の詳しい内容については「ERP選定を成功に導く鍵とは?」をご覧ください。
手順3.ERP導入前の業務整理を行う
経営支援というメリットのあるERPですが、その他にも全社的な業務最適化を行うというメリットもあります。そのために、各種業務システムが連携して一元管理を行えるようにシステム設計されています。
つまり、既存業務をERPで提供されている機能で極力まかなえる方が、ERP導入のメリットは高いということです。
従って各部署の業務整理を行い、ERPに適用できる業務とできない業務を整理していきましょう。
手順4.カスタマイズを抑制するため業務改革を行う
ERPシステムをカスタマイズすることは、導入コストの肥大化と運用負荷の増大を招いてしまう原因にもなります。豊潤なリソースを確保している場合を除く、ERPのカスタマイズは極力抑えることが導入成功の鍵となります。
従って導入前段階から、ERPに適用できる業務を中心に業務改革を行っていきましょう。導入後にいきなり業務改革を行ってしまうと、現場社員も戸惑いを隠せず「定着しないERP」を生んでしまうリスクがあります。
また、現段階でERP導入に対する全社的に理解を得ることも重要です。
手順5.関係者各位と導入スケジュールを調整する
ERP導入のPLを中心に各部署責任者、決裁者、そして導入パートナーと導入スケジュールの調整を行っていきます。大切なのは、導入スケジュールに余裕を持って計画を立てていくことです。
ERP導入は単一システムを導入するのと違い、全社的な取り組みになるためスケジュール調整が難しかったり、導入プロジェクトの障害が発生しやすい傾向にあります。また、都度発生する課題を確実に解決していくことが、失敗しないERP導入を実現するためのポイントでもあるのです。
予めトラブルの発生などを予測した上で導入スケジュールを調整しましょう。
手順6.導入形態に応じてインフラ整備を行う
導入直前にはERP導入に必要なサーバ調達やネットワーク構成の変更など、インフラ整備を行っていくことになります。ここでも大切なのは慎重にインフラ整備を行っていくことです。
導入後になってネットワーク構成を再考するようなことがあれば、運用負担は一気に激増します。また、信頼性の高い導入パートナーの助言を聞き入れることも大切です。
インフラ整備などに割くリソースがないという企業では、クラウドで提供されているERPを検討すると良いでしょう。
手順7.ERPの初期設定を行う
インフラ整備が完了したらパッケージソフトウェアのインストールなどを行い、ERPの初期設定を行っていきます。クラウドERPを導入した際も初期設定は重要なので慎重に設定していきましょう。
基本的には導入パートナーのアドバイスに従って初期設定を進めていきますが、導入するのはあくまでユーザー企業です。従って、初期設定段階で積極的に関与していき、自社に最適な設定を行っていきましょう。
手順8.導入後のルールを整備する
ERPの初期設定と並行して導入後のルールを整備していくことも大切です。組織全体の情報資源やシステム利用状況を一元的に可視化できるERPは、ガバナンスを維持していく上で最適なソリューションです。
しかし、時にユーザーが使用方法を誤ることでガバナンスが崩れたり、コンプライアンスを侵害してしまう可能性もあります。
このためERP利用のルールは細かく定め、組織の末端までルールを浸透させることが重要です。同時にアクセス権限など、ユーザーごとの細かい設定も行っていく必要があります。
手順9.各ユーザーにERP教育を行う
最後に、ERP導入後に各ユーザーに対してERP教育を行うことで、積極的なERP利用を促していきます。前述しましたが「定着しないERP」という失敗要因は非常に多く、ERP教育を怠ったがために発生することも少なくありません。
教育には多くの手間とコストがかかりますが、将来的なデメリットを考慮すれば、導入後すぐに行うのがベストです。「定着しないERP」になってしまってからでは、ユーザーのモチベーションも雲泥の差なので、そこから挽回することが難しくなってしまいます。
まとめ
いかがでしょうか?今回はERP導入の手順について紹介しましたが、これらの手順はあくまで基本的なものなので、企業によって最適な導入手順を考えることも重要です。また、導入後は積極的に導入パートナーのサポートを利用していきましょう。
初めてERPを導入する企業にとって、ERP運用は戸惑うことも多いかと思います。そんな時、導入パートナーのサポートを利用することでERPを安定的に稼働させていくことができます。
また、文中にも登場しましたがクラウドERPの導入検討もおすすめです。クラウドERPはインターネット経由でERPをサービスとして導入できるため、導入期間を短期化しつつ導入後の運用まで効率化することができます。
通常数ヶ月かかるERP導入も、短期間でカットオーバー(本格稼働)まで持っていくことができるケースも少なくありません。ともあれ自社にとって最適なERPを導入することがベストですので、慎重な導入検討を行っていただきたいと思います。