日々のビジネスでは常に帳票が必要不可欠です。ちなみにここでいう帳票とは、顧客の提示するもの、社内で使用するもの、証拠として残しておくものなどの業務で活用する書類すべてを指します。
日本の帳票文化は海外から見ると独特に映るようです。帳票中に罫線が張り巡らされ、枠の角にまで意識が向けられています。海外の帳票は日本のそれに比べるとかなり大雑把なもので、罫線などなく必要事項のみ記入されたものも多いでしょう。実際、海外のERPなどを活用している企業は、この日本の帳票文化とのギャップに悩まされていることも多いでしょう。
皆さんはそうした帳票作成において、何を活用していますか?おそらく高価な帳票作成ソフトを導入したり、Excelで作成しているよという方が多いのではないでしょうか。
本稿ではERPがある環境において帳票作成はどうすればよいのか?Dynamics 365を想定し、実現できる帳票作成のパターンをご紹介します。
Excelで帳票管理するのは問題?
Excelは大変優れたツールです。表を作成することはもちろん、帳票や資料を作成したり、データを集計してグラフ化したり、マクロ機能によってプログラムの実行を自動化したりと、自由度が高くどんな業務にもマッチするという特徴があります。
そんなExcelにも問題があることをご存知でしょうか?次のような問題は、皆さんが日常的に感じているものかもしれませんね。
1. データが散在し、最新版の区別がつかなくなる
Excelで帳票を作成するとどのファイルが最新版なのか分からなくなってしまうことがよくあります。そうすると最新版ファイルを探すだけでも手間がかかり、かつ最新版ではないファイルを参照してしまう可能性もあるでしょう。
2.誤って削除、上書きしてしまう恐れがある
作成したExcelファイルを誤って削除してしまったり、上書きしてしまうことはよくある話です。削除してしまったのならばゴミ箱フォルダにファイルが生きている可能性がありますが、誤って上書きしてしまった場合は元の状態に修復することが難しくなります。
3. データ品質を担保できず整合性が取れない
Excelはシステムと連携せず単独で動くソフトウェアなのでデータの整合性を取ることが難しくなります。そのためデータ品質を担保できず、作成したファイルもその中身のデータが正確なものかどうかを判断できません。
4. マクロは開発者以外修正できない
Excel内でプログラムを自動化するマクロ機能は大変便利なツールです。さらにVBAというプログラミング言語を使用することでかなり高度な自動化まで行えます。ただしプログラム開発者以外がその内容を理解することが難しく、引継ぎができなければ修正もできないという問題もあります。
5. 共有に時間がかかる上に共同作業もできない
Excelで作成したファイルを共有する方法は、メールに添付して関係者全員に送信するか共有スペースに保存するかのどちらかです。メールは手間だからと共有スペースを活用しても、共有場所をメール等で連絡しなければいけないので結局同じ手間がかかります。
6. 内部統制(ガバナンス)が難しくなる
Excelは部門ごと・従業員ごとに運用するのが一般的です。最低限の管理は情報システム担当者が行っても、きめ細やかな運用は難しいので部門・従業員の裁量に任せられるところが多いでしょう。そうした環境では往々にして内部統制が崩れ、情報漏えい等のコンプライアンス違反が発生するリスクが高まります。
以上の問題のうち、いずれか1つでも感じているのならば、現状のExcel帳票作成環境は組織にマッチしていないかもしれません。
それを解消するためには、Excelの利便性を保ちつつERPで帳票管理ができる環境を整えることが大切です。
Dynamics 365とは?
Dynamics 365はMicrosoftが提供するクラウドERPソリューションです。統合的な業務アプリケーション環境を提供するだけでなく、ExcelなどのMicrosoft社製品との親和性が非常に高く、今までにない働き方を支援するツールとして国内企業にも受け入れられています。
このDynamics 365で帳票を作成する場合、次のような選択肢があります。
- Word Template
- Dynamics 365付属レポート
- SSRS(SQL Server Reporting Services)
- サードパーティ製帳票作成ツール
- Excel帳票(ソースリンク社提供)
それぞれの特徴と、メリットデメリットをまとめてみました。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
Word Template | Dynamics 365 CEの機能として提供されている、Microsoft WordのファイルにDynamics 365のデータをインポートし、ファイルダウンロードする | Wordでレイアウト作成が可能なので一般ユーザーでも帳票作成が可能になる | 複数のエンティティにまたがるデータを帳票に記載する場合に煩雑になる可能性がある |
Dynamics 365付属レポート | Dynamics 365 に付属するレポート機能を使用する | 付属しているものなので開発コストはゼロに、素早く使える | カスタマイズしずらく細かな要求に対応しづらい |
SSRS (SQL Server Reporting Service) |
SQL Server Reporting ServiceはMicrosoft社の標準的な帳票作成ツール。 | プログラミングにより多彩な制御が可能であり、Excelとは違い修正できない形での出力が可能。承認フローに組み込むこともできる。Visual Studioが使用可能。 | Visual Studioの利用が必須なので、自由度が高い分、帳票作成を手軽に一般ユーザーが行うのは難しい。 |
サードパーティ製帳票作成ツール | パッケージ製品として提供されている帳票作成ツール。 | 細かい設定が可能で、かつ高機能であることが多い。日本の商習慣にマッチする機能が豊富に用意されている。 | 導入コストが高く、オーバースペックになる可能性もある。 |
Excel帳票 | ExcelからDynamics 365に必要なデータを取りに行き、データをExcelにロードしてExcel上で帳票を作成する。 | あくまでExcelで帳票作成を行うので、自由度が高い上に一般ユーザーが操作して作成・編集できる。 | Dynamics 365だけで操作が完結せずに、Excelを併用することになる。 |
いかがでしょうか?
Dynamics 365がある環境ではこれだけ多くの帳票ソリューションの選択肢の中から、自社にとって最適な帳票作成手段を取ることができます。手段によっては前述したExcelの課題をすべて解決できるので、データの信憑性を担保できるようになったり、高い生産性を手にすることができます。
Excel帳票の活用ポイント
ここでソースリンクが提供する“Excel帳票作成ツール(SLERT)”について少しご紹介します。これまで帳票をExcelで作成していた環境の場合、使用しているExcelフォーマットをそのまま流用したいと考えるのは当然の流れです。しかし、帳票作成をDynamics 365で刷新するにあたって新しいフォーマットを作成することは避けて通れません。Excel帳票はそんな問題を解消します。
先にご紹介したようにExcel帳票は、ExcelからDynamics 365に必要なデータを取りに行き、そのデータをExcelにロードした上でExcelでの帳票作成を可能にするツールです。イメージとしてはデータだけはDynamics 365から借りて、Excelを使用して帳票を作成したり編集を行います。
そのため従来のExcelフォーマットをそのまま流用することはもちろん、Excelの使い勝手をそのままに使用できるというのが大きなメリットです。Dynamics 365だけで操作が完結しないという側面もありますが、いつものようにExcelが使用できるのならばそれも気にならないほど高い生産性が実現します。
自社にとって最適な帳票作成方法を!
Excel帳票のメリットをご紹介しましたが、大切なのは自社にとって最適な帳票作成方法を取ることです。そのためDynamics 365に付属されたレポートやWord Templateといった帳票作成手段も積極的に検討して、何が1番良い形なのかを明確にしてください。