オンプレミスのERPからクラウドERPにシステム移行をしたいと検討中だけれど、そもそも2つの違いがいまいちわからず、決断できない経営者、IT部門担当者の方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、オンプレミスERPとクラウドERPの違いについて紹介しつつ、ERP製品の選び方のポイントについてご紹介していきます。
オンプレミスERPとクラウドERPの違いとは
企業の基幹業務をシステムでサポートするERP。自社に機器を設置し、設定をカスタマイズして所有するオンプレミスERPと、自社サーバーを設置せず、クラウド上で課金制サービスを提供するクラウドERPがあります。2つの違いを導入、運用、セキュリティ、カスタマイズ面で比較します。
導入コスト
ERPの費用は初期費用とランニングコストがあり、ランニングコストはオンプレミス、クラウドどちらもライセンス料がかかります。違いは初期導入費用です。オンプレミスERPはハードウェアの準備が必要で、基本導入費用として企業の規模に応じ10万円~1,000万円、導入サポート費用に1,000万円~2,000万円、操作方法などの教育費用に10万円~100万円かかるとされます。また、自社に最適なモデルにカスタマイズしたり、拡張機能を追加したりする場合は、開発費用が100~1,000万円別途必要になるケースもあります。費用を抑えるにはカスタマイズで機能を増やさず、既製品を選ぶようにするとよいでしょう。
一方、インターネット上でサービスを利用するクラウドERPは、ハードウェアやサーバーなどの導入費用が不要です。導入サポート費用や教育費用はオプション料金であることが多く、10万円以下で導入できる製品が多いのが特長です。初期導入費用がすべて無料でランニングコストのみの製品もあります。従量課金型で使用した分だけ支払うプランが多いため、導入費用を抑えたい中小企業にはメリットとなります。
導入スピード
オンプレミスERPはサーバーなど機器の選定、設置、ソフトウェアのインストール、各機器の設定とゼロから始めなければなりません。一般的に1年を超えるほどの期間を要し、カスタマイズや機能拡張でシステム開発が必要であれば、その日数も必要となります。対してクラウドERPはシステムを構築する必要がないため、面倒な作業がほとんどなく、導入期間を大幅に短縮することが可能です。
各ベンダーが提供するサービスを選べるパブリッククラウド型ERPであれば、自社に最適なプランを選ぶだけです。クラウドERPには従来のオンプレミスERPを活かし、データセンター内で保有するプライベートクラウドERP、オンプレミスERPをクラウドに移行したハイブリッドERPもあります。いずれも既存システムを活かせるので、迅速な導入を目指せます。
運用リソース
オンプレミスERPは設置して終わりではなく、自社または委託によりITシステム担当者を置き、システムの監視による運用、保守などの管理業務が発生します。ソフトウェアのバージョンアップや、データのバックアップもすべて自社で行い、システム障害が発生した場合、トラブル対応も自社で行う必要があります。サーバー保守や運用にかかる人件費の他、会社の規模が大きくなるとサーバールームのセキュリティコストや光熱費も軽視できません。
クラウドERPは利用するベンダーが必要な運用・保守作業を行うため、企業が設備点検や定期監視などに人員を割く必要がなく、運用リソースが少なくても問題ありません。サーバーOSのアップグレードなどの費用も削減できて、保守・メンテナンスが保証されます。システム障害や災害時にも対応し、予備電源や複数拠点のバックアップなど、二重三重に対策していることが多いので安心です。
セキュリティ管理
オンプレミスERPは自社でセキュリティ技術者を選定し、外部と接続しないローカルな環境でシステム運用を行えば、機密性を高めることが可能です。ただし、業種や業務形態によってはローカル接続のシステム環境が難しい場合もあります。また、セキュリティレベルは自社環境の運営・保守に大きく依存し、常に外部からのセキュリティリスクに対処しなければなりません。
クラウドERPはベンダーが保有するデータセンターなどにインフラがあり、常にアップデートされた最新のセキュリティ対策で守られています。それぞれのベンダーはセキュリティ認証を多く取得しており、システム利用に支障はありませんが、インターネット上のサービスのため、100%情報漏えいのリスクがないとは言い切れません。クラウドERPを選ぶ際はセキュリティレベルの高さもチェックすることが必要です。
カスタマイズ難易度
オンプレミスERPは導入コストをかけて、自社に合わせたサーバーやハードウェアの設定、アップグレードができるため、カスタマイズの自由度は高くなっています。必要に応じて費用をかければ、アドオン開発で機能を拡張することもできます。ただし、サーバーの台数を増やしたり、スペックを変更したりという設定をフレキシブルに変更するのには向きません。
クラウドERPは各ベンダーが用意した機能の中から、自社に必要なものを選んで使用するのが基本です。そのため、自社に最適なインフラシステムにカスタマイズしていくことは難しい傾向があります。パッケージ標準で利用する製品を選ぶと、カスタマイズではなく、パッケージ標準システムに業務を合わせていかざるを得ません。新たにアドオン開発で機能を拡張するのも難しくなります。ただし、ユーザー数や容量の増減、設定変更などはフレキシブルに変更可能です。
クラウドERPとオンプレミスERPの選び方のポイント
近年は顧客ニーズが所有から利用にシフトしてきたこともあり、ERPもオンプレミスよりクラウドが選ばれる傾向があります。しかし、企業によってはオンプレミスERPが適していることもあるでしょう。クラウドERPとオンプレミスERPの選び方のポイントについて解説します。
システム導入の費用対効果で判断
企業の基幹業務をITシステム化するERPは、業務効率化の効果が測定しやすいという特徴があります。ERPにより主に情報やデータ、コンテンツの一元化、ルーティン業務の自動化が可能になります。例えば社員のローカルPCで各自管理していた各種伝票を、ERPで一元化すると、伝票情報のやり取りの手間が省け、時間と人的リソースを削減することが可能です。他に製造業では原材料調達のリードタイムを短縮したり、在庫調整の半自動化により調達コストを削減したりできます。海外進出した場合のIT基盤構築も低コストで迅速化が可能です。
オンプレミスERPまたはクラウドERPの導入前には、このような導入のメリットを算出する必要があります。これまで支払っていたソフトウェアのライセンス料、システム構築、保守・運用コスト、更新料の他、人的リソースもコストとなります。自社にオンプレミスERPまたはクラウドERPを導入した場合の効果に対し、それぞれの導入費用のコストパフォーマンスを計測することが重要です。
自社のシステム導入目的が達成できるかで判断
ERP導入は全社あげての一大プロジェクトです。通常は10年に1度というケースが多く、経営者層があまりに高い理想を掲げた結果、現場の業務では使えないシステムになる場合もあります。ERPはシステム規模が大きいため、特にオンプレミスで構築する場合は本格稼働まで期間がかかり、導入すること自体が目的化してしまうこともしばしばです。
まず、ERP導入の目的を設定し、導入により業務が実施できるようになる状態を目指すことが必要です。
他に導入するシステムと自社の業務プロセスとの適合度合い、またはズレの度合いを分析・評価するFit-Gap分析を入念に行いましょう。オンプレミスERPまたはクラウドERPで実装した業務が、適切に進行するプロセスが作れるかが重要です。
まとめ
ERPはオンプレミスとクラウドでコスト、スピード、運用リソース、セキュリティ、カスタマイズなどが大きく異なります。自社で導入する際は目的を明確化し、導入の費用対効果を意識することが重要です。クラウドERPはMicrosoft Dynamicsがおすすめです。安心の国内データセンターで管理し、段階的に拡張できます。