ビジネス環境の変化が加速する昨今、データ分析に基づき重要な経営判断を下す「データドリブン経営」の重要性が増しています。本記事では、そもそも「データドリブン」とは何かに始まり、必要とされている理由や具体的な実行手順について解説します。データドリブン経営に役立つツールも併せてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
データドリブンとは?
「データドリブン(Data Driven)」とは、データを起点とした意思決定プロセスを指す概念のことで、日本語では「データ駆動」などと訳されます。勘や経験といった感覚的な要素に頼ったものではなく、客観的・定量的なデータに基づき意思決定や課題解決を図ります。そして、こうしたデータ駆動型の意思決定プロセスをビジネスに落とし込んだ経営体制を「データドリブン経営」といいます。
一昔前の企業では、経営者の勘・経験・度胸(=KKD)によって重要な意思決定が下されることが少なくありませんでした。しかし、ビジネス環境の変化が著しい現在では、このような曖昧な指標に基づく経営判断はリスキーといわざるを得ません。そこで注目を集めているのが、よりロジカルな意思決定を実行できるデータドリブン経営というわけです。
データドリブンが必要とされている理由
では、なぜ企業経営においてデータドリブンが重視されているのでしょうか。以下では、データドリブンが必要とされる主な理由について見ていきましょう。
理由1:ビッグデータ活用の潮流
デジタル技術の進化により、今やビッグデータは企業にとって身近な存在となりました。データ収集やストレージの確保なども以前より少ないコストで行えるようになり、ビッグデータを活用しやすくなったのです。
その結果、ビッグデータをビジネスに役立てようとする企業が増えてきています。こうした潮流が広まる中、自社でビッグデータを活用できない/しないとなると、他社に市場競争力の面で後れを取ることになりかねません。後述するように顧客行動が複雑化する昨今では、ビッグデータを分析・活用する価値が高まっているのです。
理由2:複雑化・多様化するユーザーの購買行動
インターネットやSNSが普及したことで、ユーザーの購買活動が多様化・複雑化していることも理由のひとつです。インターネット上には今や、商品に関するさまざまな情報があふれており、従来のように「よい商品を安く」店頭に並べたからといって、必ずしも売れるとは限りません。消費者にとって、もはやインターネットで商品の口コミや評判をチェックしたり、ブランドに付加価値を求めたりすることは当然となっています。そうした中、より精度の高いマーケティングを実現するためにも、データドリブンの関心が高まっているのです。
理由3: 先読みの困難な時代
現在は不確実性の高まる時代といわれており、常にユーザーニーズが移ろい続けているような状況です。それに合わせて市場も刻々と変化しているため、従来にも増してユーザーニーズを捉えることが困難になっています。そうした中、経営の舵取りをこれまでと同様に続けることは容易ではありません。そのため多くの企業では、不確実性に左右されやすい意思決定プロセスを脱却し、客観的なデータに基づく意思決定プロセスの導入が急がれているのです。
データドリブンを行う工程
では、データドリブンは具体的にどのように実践すればよいのでしょうか。以下では、企業のデータドリブン実現に必要な工程について、順を追って解説します。
1.目的を設定し、データを収集・蓄積する
データドリブンを行うためには、まず「売上増加」や「ブランド力向上」など、明確な目的を設定しましょう。ここを疎かにしてしまうと、データ収集の戦略や判断基準が定まらず、期待するほどの成果につながらない可能性もあります。
目的を設定したら、次は基幹システムやWebサーバー、IoT機器などから必要なデータを収集し、ビッグデータとして各システムに保存していきます。ビジネスの課題解決にあたっては、これらビッグデータを活用します。
2.集めたデータを可視化する
必要なデータを集めたからといって、すぐさま分析に移行できるわけではありません。ビッグデータを適切に分析するには、情報を整理・可視化する必要があります。とはいえ、膨大な量のデータを手作業で整理するのは、時間も手間もかかり過ぎることから現実的ではありません。専用のWeb解析ツールやBIツールなどを利用して行うのが一般的です。
3.データを分析する
続いては、可視化したデータを分析する工程です。あらかじめ設定した目的に応じて、必要なデータ分析を行います。ランキング・最大値・最小値などの定量的データだけでなく、変化・傾向といった定性的データも重要です。これらの分析結果を、ビジュアル的に把握しやすいグラフや図の形式でまとめます。
4.分析した結果から行動する
分析結果に基づき、具体的な施策を決定・実行します。この段階になって、ようやくビッグデータの収集・分析といった活動の結果を出せるのです。実行後はPDCAサイクルを回して、継続的な改善に努めましょう。
データドリブンの注意点:サイロ化を防ぐ
「サイロ化」とは、部署や部門などでシステムがそれぞれ独立しており、互いに連携や情報共有ができていない状況のことです。システムがサイロ化した状態では、社内情報が各所に分散しているため、データ収集の段階で多大な手間がかかってしまいます。その結果、タイムリーな経営判断が下せず、意思決定の遅れから重大な機会損失につながることもあります。
また、システムがサイロ化されたままでは、データの収集や統合のために余計な工数が浪費されます。その結果、人件費がかさむ要因となるなど、コスト面でも大きなデメリットを抱えてしまいかねません。タイムリーかつ適切な経営判断を行うためには、システムのサイロ化を防止・解消することが大切です。
データドリブンを支えるツール・システム
データドリブン経営を実現するためには、膨大なデータを適切に管理・分析する必要があります。そして、それにはさまざまなツール・システムの利用が欠かせません。最後に、データドリブン経営を支える主要なツール・システムをご紹介します。
データの分析や可視化を行うBI(ビジネスインテリジェンス)
「BI」とは、企業内に蓄積された膨大なデータを収集・分析・可視化することにより、マーケティングや経営判断に役立てる仕組みです。このBIを実現するソフトウェア・システムを、俗に「BIツール」「BIシステム」などと呼びます。
BIツールを使うことで、グラフやレポートなどによってデータをわかりやすく可視化できるため、専門家でなくてもビッグデータの有効活用が可能です。データドリブンに注目が集まる昨今では、このBIツールに対する注目も高まっています。
ERP
「ERP(Enterprise Resources Planning)」とは直訳で「経営資源計画」を意味し、企業が有するヒト・モノ・カネ・情報などの資源を一元的に管理する仕組みのことです。また、部門ごとに分かれたシステムを統合化する、「統合基幹業務システム」を指す語としても使われています。昨今では、前述のBIツールを内包するERPも少なくありません。
BIツールがあっても、データが適切に集約されていない状況では、リアルタイム性や精度に欠けます。リアルタイムな経営判断を行うためには、企業のあらゆるデータを速やかに活用することが重要です。その点、ERPは社内に分散された情報を一手にまとめ、データ分析に長けたBIツールの価値を押し上げてくれます。
顧客データの収集するCDP(カスタマーデータプラットフォーム)
「CDP」とは、既存顧客および見込み顧客のデータを集積するデータベースです。CDPにて集積されるのは、顧客の氏名・住所・電話番号といった情報だけでなく、企業のWebサイトやアプリ上での行動データなども含まれます。CDPは、顧客にパーソナライズしたマーケティングを行うために必要です。
まとめ
データドリブンとは、客観的なデータに基づき行われる意思決定プロセスのことです。顧客行動が多様化・複雑化し、目まぐるしくビジネス環境が変化する昨今では、このデータドリブンを企業経営に落とし込んだデータドリブン経営の重要性が高まっています。
企業がデータドリブンを実践するにはBIやERP、CDPなどのデータ収集・分析・統合・可視化に役立つツールの利用が欠かせません。Microsoft社提供のCRM・ERPソリューション「Microsoft Dynamics 365」なら、これらの業務を幅広くサポートできるためおすすめです。自社のデータドリブン経営を実現するためにも、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。