近年、さまざまな分野でデジタル活用が重要な経営課題となっており、データ分析の重要性が高まっています。そこで本記事では、コールセンターにおけるデータ分析の重要性を解説するとともに、具体的な分析手法や押さえておきたいポイントをご紹介します。コールセンターの基盤強化や品質向上を目指す企業は、ぜひ参考にしてください。
コールセンターのデータ分析がなぜ重要か?
コールセンターは事業活動における顧客接点の窓口となる重要な部署です。コールセンターの役割は企業と顧客をつなぐ架け橋となることであり、オペレーターの対応によって顧客満足度が左右されるといっても過言ではありません。コールセンターにデータ分析を取り入れることで、以下のようなメリットを享受できます。
顧客満足度の向上
コールセンターは顧客が抱く疑問や不満といった「VOC(顧客の声)」が集まる部署です。顧客の声は企業の経営方針にも影響を与える重要な情報資産であり、コールセンターに集約されたVOCを分析することで応対品質の向上が期待できます。オペレーターの応対品質が高まれば顧客一人ひとりとの信頼関係が強化され、顧客満足度の向上につながります。
商品の質の向上
コールセンターには自社が提供する商品やサービスに対するクレームが届くことも少なくありません。しかし、顧客からのクレームは、改善点を把握するために欠かせない重要なデータです。コールセンターに寄せられたクレームを的確に分析することで、企業が気付けなかった問題点や課題が浮き彫りになり、商品やサービスの品質向上に寄与します。
パーソナライズされた顧客対応
オペレーターの役割は顧客が抱えている悩みや問題を受け止め、解決へと導くことにあります。テンプレート通りの対応では解決できないケースが多く、可能な限り顧客一人ひとりに寄り添ったフォローが必要です。コールセンターに蓄積された顧客情報や応対履歴を分析することで、顧客の属性や状況を正確に把握できるため、パーソナライズされた対応が可能です。
オペレーターの適切な評価
コールセンターにデータ分析を導入するメリットは、顧客の声を分析できるだけではありません。応対履歴や通話記録などを分析することで、定量的なデータに基づいてオペレーターの応対品質を評価できます。公正かつ公平な人事評価制度の確立に寄与し、オペレーター一人ひとりのモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。
生産性の向上
顧客の声やオペレーターの応対履歴など、さまざまなデータを分析することでコールセンターの生産性向上が見込めます。オペレーターの応答率や稼働率、平均処理時間などを定量的に分析できれば、オペレーション業務における課題や問題点を客観的な視点から把握可能です。コールセンターの運営体制における問題点も浮き彫りにできるため、データ分析を活用することで組織全体の生産性向上が見込めます。
データ分析の方法
コールセンターのデータ分析手法にはさまざまな種類がありますが、代表的な方法として挙げられるのは以下の3つです。
- KPI分析
- VOC分析
- 会話分析
KPI分析
KPIは最終目標に到達するために必要な中間目標の達成度合いを評価する指標です。KPI分析によって、ゴールに辿り着くまでに必要なプロセスが適切に実行されているかどうかを計測できます。具体的な課題や改善効果が数値でわかるので達成目標が立てやすく、その効果を可視化できるというメリットがあります。
VOC分析
VOC分析は収集された顧客の声を分析し、顧客満足度の最大化を目指す手法です。コールセンターに寄せられた顧客の要望や不満などを分析することで、オペレーターの対応品質向上や、商品・サービスの品質改善につながります。収集した情報を文書化することで、他の関連部署と情報共有がしやすくなるのもメリットです。
会話分析
会話分析は、顧客とオペレーターの通話記録や応対履歴を分析する手法です。音声認識システムを用いて会話を分析する手法もありますが、基本的には通話記録や応対履歴をテキスト化する分析手法が主流といえます。
分析によってわかりにくい表現や冗長表現の改善ができ、顧客満足度の向上につながります。また、正しい言い回しやわかりやすい表現のマニュアル作成なども可能です。
データ分析を効率化するには?
情報通信技術の進歩とともに企業が取り扱うデータ量は年々増加しており、デジタル技術の活用なくしてデータ分析の効率化は図れません。コールセンターのデータ分析を効率化する代表的なソリューションとして、以下の6つが挙げられます。
- KPI分析ツール
KPIの測定に特化したツールで、コールセンターやオペレーターの中間目標の達成度合いを定量的に分析できます。 - VOC分析ツール
顧客の声を分析することに特化したツールで、通話記録のテキスト化や感情解析などの分析ができます。 - CRM
顧客情報を統合管理するソリューションで、分析ツールとの連携によって顧客一人ひとりにパーソナライズされた対応が可能です。 - Excel
コールセンターに集約されたデータを、Excelの表やグラフに落とし込むことで分析を効率化できます。 - テキストマイニングツール
テキストデータから付加価値の高い情報を抽出するソリューションで、チャットやメールといったテキストデータの分析をサポートします。 - コールセンターシステム
コールセンター業務を総合的に支援するシステムの総称です。受電・架電の管理や通話録音装置、SMS送信サービスなど複数の機能が搭載されています。
データ分析をする前に押さえておきたいポイント
コールセンターにデータ分析を取り入れることで、応対品質や顧客満足度の向上、オペレーション体制の効率化など、さまざまなメリットを得られます。しかし、データは分析するだけでは不十分です。得られた知見をマネジメントやオペレーションに活用してこそ真価が発揮されます。データを適切に活用するためには、以下6つのポイント押さえましょう。
目的を明確にする
効率的なデータ分析を実行するために必要となるのが目的の明確化です。ゴールを明確化しなくては収集するデータや分析手法も曖昧になり、大幅に遠回りをしてしまう恐れがあります。
正しいデータを用意する
目的を明確化したなら、次のステップは正しいデータの取捨選択です。闇雲にデータを集めるだけでは分析に多大な時間を要するため、分析を実行する目的に沿った適切な情報を用意しなくてはなりません。
データはグラフ化する
データ分析を効率化するために欠かせない施策のひとつがデータの可視化です。数値データをグラフやフローチャートなどの図表に落とし込むことで、言語や数値だけでは把握しにくいデータの規則性や相関関係を俯瞰的な視点から分析できます。
計測期間は適切に設定する
データ分析を最適化するためには計測期間の設定も重要な要素です。短い計測期間ではデータの変動や傾向の要因を正しく判断できないため、最低でも3ヶ月から半年程度のデータを分析対象とするのが適切といえるでしょう。
データ間のバラつきに着目する
データ分析では指標の最高点や最低点だけではなく、データ間のバラつきにも着目しなくてはなりません。最高点と最低点にのみ着目した場合、平均値が判別基準となってしまうため、可能な限り偏りが小さく平均的に高水準であることが望ましいといえます。
複合的なKPIで判断する
データ分析から得た知見を最終的に判断する際は、複合的なKPIに基づいていなければなりません。応答率や稼働率、平均処理時間、平均応答速度、顧客満足度などさまざまな指標がありますが、ひとつの指標だけで優劣や正誤を判断せず、総合的な視点に基づく評価が必要です。
まとめ
コールセンターにデータ分析を導入できれば、応対品質の向上やオペレーション体制の効率化、顧客接点の強化など、さまざまなメリットを組織にもたらします。そのためには、高度なデジタル技術の導入が不可欠です。オペレーションを効率化するコールセンターシステムやCRM機能を備えたDynamics 365など、コールセンターの基盤強化に寄与するソリューションの導入をご検討ください。