コールセンターで発生する「エスカレーション対応」。トラブルを最小限に抑えるためとはいえ、業務が滞りがちになるエスカレーション対応をなくしたいと考える管理者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、エスカレーション対応の発生率やルール整備の仕方、削減方法をご紹介します。
コールセンターにおけるエスカレーション対応とは
そもそもコールセンターにおけるエスカレーション対応とは、オペレーターがひとりで対応しきれない問い合わせを、上司や責任者に交代して対応することをいいます。「エスカレート」には、「ものごとが激しくなっていくこと」という意味があり、電話対応においても対応の規模が広がっていく様子を表しています。
よくあるエスカレーション対応は、クレーム対応で「上の立場の人間を出してほしい」と顧客側から提示されるケースです。また、電話の対応を上司に引き継ぐだけでなく、電話を保留にし、質問や相談を上司にすることもエスカレーション対応に含まれる場合があります。
エスカレーションはなぜ発生する?
エスカレーション対応は、サービスについての詳しい質問にオペレーターが対応しきれない場合や、クレームに関する電話で上司が対応することが好ましい場合などに発生します。エスカレーション対応が発生する原因は、オペレーターの知識不足や経験不足、応対中の不備や失言など、コールセンター側の落ち度がほとんどです。しかし場合によっては、初めから責任者と話したいと伝えられるなど、やむを得ないエスカレーション対応もあります。
エスカレーションの発生率はどのくらい?
では、一般的にエスカレーション対応はどのくらい発生するものなのでしょうか。SBI証券におけるエスカレーション率は、ベテランで0.12%、新人で0.61%とデータが出ています。やはり、知識や経験の浅い新人ではエスカレーション対応が発生しやすいといえるでしょう。しかしSBI証券では、トレーニングによって新人のエスカレーション率を0.61%から0.18%まで減少させることに成功したというデータも出ています。そのため、現状でエスカレーション対応が多くても、ルール整備やトレーニング次第では、発生率を下げることも可能といえます。
エスカレーション対応に関するルールとは
エスカレーション対応をスムーズに行うことは、顧客満足度の観点からしても欠かせません。そこで大切なのが、エスカレーション対応に関するルールを整備しておくことです。ここでは、エスカレーション対応において、押さえておくべき4つのルールを解説します。
1.レベル分けする
まずは、オペレーターがどの程度の内容でエスカレーション対応を行ってよいかを明確にするために、応対内容のレベル分けを行いましょう。レベル分けは、応対内容を重要度や緊急度に応じてカテゴライズします。カテゴリの例としては、「知識が必要な場合」「上司対応が必要な場合」「金額交渉が必要な場合」などが基本です。そのカテゴリを、重要度や緊急度によって、レベル1、レベル2と振り分けます。
次に、どのレベルの対応をどの責任者が行うかも明確にしておきましょう。レベル1ならオペレーター、レベル2なら係長など、誰に対応を任せるかを決めておくことで、顧客を待たせたり、エスカレーション対応が責任者に集中したりすることを避けられます。
2.フローを決める
エスカレーション対応が必要な電話を受けたときは、どうしても焦ってしまいがちです。そうした状況でも慌てず、スムーズに対応できるよう、あらかじめプロセスやフローを決めておきましょう。フローでは、レベル分けで決めた担当者に基づき、いつ・誰が・どの担当者にエスカレーション対応を引き継ぐのかを定めます。また、担当者不在の場合も考えて、何パターンかフローを用意しておくとよいでしょう。フロー図を準備しておくと、誰もが一目でわかります。
エスカレーション対応をよりスムーズに行うには、どの連絡手段で担当者に連絡をするかも明確にしておくことが大切です。担当者がよく確認する連絡手段や、エスカレーション対応専用のチャットなどを用意して、すぐに連絡が取れる状態を整備しておきましょう。
3.情報を共有する
エスカレーションが完了したら、今回の問い合わせ内容・対応内容をそれぞれ社内FAQに記録しましょう。社内FAQを充実させることで、センター内で情報共有がなされます。知識の蓄積・共有を積み重ねることで、今後、同様の問い合わせがあった際にはエスカレーションなしで対応することが可能です。
こうした取り組みは、オペレーターがスキルアップするだけにとどまらず、業務効率化にもつながるでしょう。また、エスカレーションが減少することでオペレーターが自信を身に付ければ、モチベーションの向上や離職防止にも効果が期待できます。
4.定期的にルールを更新する
最後に、一定期間ごとに既存のルールやフローを見直し、更新することも重要です。上記手順で作成したルールやフローは、エスカレーション対応を効率化するため、理論的に考えた枠組みに過ぎません。
実際、業務に取り入れて運用していく中で、現場に合っていなかったり、当初定めたルールでは対応できない問題が発生したりすることもあるでしょう。エスカレーション対応すべき事案ではないものの、オペレーターだけでは対応が難しい問い合わせもあるかもしれません。
そうした予定外、ルール外の出来事が起こった際に、ルールの側を柔軟に変更していくのがエスカレーション対応を機能させるコツです。ルールやフローに不備がなくとも、フローに組み込まれていた担当者の変更があった際なども、担当者情報を更新する必要があります。
エスカレーション対応を削減するには
トラブルを最小限に抑えるうえで重要なエスカレーション対応ですが、できることなら減らしたいと考える方も多いのではないでしょうか。そこで、エスレーション対応を減らすためにできることを2点ご紹介します。
FAQの整備
エスカレーションの件数を減らすには、オペレーターがひとりでも問い合わせに対応できるような枠組みを整備するのが重要です。先ほど、情報共有の項目でもお伝えした通り、社内FAQを充実させることで、おのずとエスカレーションの件数が減少します。エスカレーションにつながった問い合わせは、必ず社内FAQに都度反映していきましょう。
また、オペレーターが対応中に素早く社内FAQにアクセスできるようにすることも、応対スピードを向上させるうえでは大切です。社内FAQ内に「よくある質問(FAQ)」というカテゴリを作成し、頻度の高い問い合わせは即座に調べられる環境を整えましょう。
コールセンターシステムの活用
直接的にエスカレーションを減らすアイデアではありませんが、コールセンターシステムを導入するのもおすすめです。コールセンターシステムとは、コールセンター向けの業務支援システムのことです。電話とコンピューターを連携させることで、入電時のオペレーターの自動振り分けや通話内容の記録、エスカレーション先の登録などができます。
コールセンターシステムの導入によって、顧客を待たせたことによるクレームが減少したり、通話内容を記録するための事務作業を減少できたりします。また、エスカレーション先の事前登録ができれば、エスカレーションの件数が変わらずとも、1回あたりの対応にかかる時間が減少するでしょう。
まとめ
コールセンターでのエスカレーションとは、オペレーターが対応しきれない問い合わせを、担当者が代わって対応するフローのことです。トラブルを未然に防ぐうえで大事な作業ですが、あまりに多いと担当者の負担になってしまいます。ルールやフローを整備して効率化するとともに、なるべくエスカレーションが減らせる仕組みを構築しましょう。
「Microsoft Dynamics 365」には、問い合わせ内容の一元管理でコールセンター業務を支援する「Dynamics 365 Customer Service(旧:Dynamics 365 CRM)が搭載されています。エスカレーションの削減を考えている方は、サービスの導入をご検討ください。