リモートワーク、ダイバシティ、タレントマネジメントなどなど、現在日本では多くの企業が“働き方改革”に取り組んでいます。従業員の職場環境を変化させることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか
主なメリットとしては従業員のモチベーション向上や人材の有効活用です。では、BYODはどうでしょうか日本は海外に比べてBYOD推進率が低い国ですが、BYODを取り入れることで、得られるメリットは多いでしょう。
今回はこのBYODについて、基礎と導入したば場合のメリットについて紹介します。
BYOD(Bring Your Own Device)とは
BYODとは日本語にする「私用端末の持ち込み」となり、そのままの意味の取り組みです。従業員に企業で用意した社用デバイスを使わせるのではなく、もともと所持している従業員自身のデバイスの使用を許可するものです。
ちなみにBYODが指すデバイスはノートPC・スマートフォン・タブレットといったものに限らず、USBフラッシュメモリ・SDカード・HDDなども含まれます。
このBYODは現在どの程度普及しているのでしょうかIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査結果で確認してみましょう。
IPAが行った「2015年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」によると、中小企業のBYOD導入率は全体の38.9(有効回答数1,056)と、1/3以上の企業が使用デバイスによる業務を認めているようです。
企業規模別に見ると、従業員数20人以下の小規模企業が50.3(有効回答数300)、100人以下の中小企業が38.9(有効回答数473)、100人以上の中小企業が26.9(有効回答数)と、企業規模が大きくなるにつれ、BYODの導入率が低くなっています。
小規模企業のBYOD導入率高い理由は、やはり社用デバイスを購入・維持するコストにあるかと思います。あるいは、経営スピードが求められるベンチャー企業において、BYODを採用する方が各々迅速に行動できるといった理由があるでしょう。
しかし一方では、小規模企業の私用デバイスへのパスワード設定実施率が56.7と、中小企業に比べ実施率が低い傾向にあります。
企業がBYODを導入するメリットとは
小規模企業や中小企業を中心に普及しているBYODには、主に次のようなメリットがあります。
- ITコストの削減
- 作業効率のアップ
- BCPの実現
- 多様なワークスタイルを提案できる
- シャドーITの防止
ITコストの削減
BYODを取り入れていない場合、企業は従業員数に応じてデバイス数を用意しなければなりません。そこにはデバイスを購入するコストはもちろん、それを管理・維持するためのコストもかかります。企業規模が小さくなるほどこのITコストがネックになる場合が多く、BYOD導入が進んでいる理由の一つです。
BYODを導入することでデバイス購入はもちろん、管理・維持コストの削減ができます。
作業効率のアップ
従業員からすれば、普段使い慣れたデバイスを業務で使用することになるので、やはり社用デバイスよりも使いやすさはあります。そのおかげで作業効率がアップすることもあり、ひいては企業利益につながります。
また、BYODを取り入れると時間や場所を選ばずに業務を行えるようになるので、さらに作業効率がアップします。
BCPの実現
BCP(事業継続計画)とは災害などの緊急時に備え、万が一にことがあっても事業を継続できるよう環境を整えることです。通常は自社サーバをデータセンターで保管したり、クラウドサービスを利用することでBCPを整えます。
実は、BYODはBCP対策にもなるということで注目されているのです。
BYODで私用デバイスを活用するということは、在宅での業務も可能にします。万が一災害が発生した際も、オフィスに集まることなく業務を行えるのでBCPを整えることができます。
多様なワークスタイルを提供できる
BYODを取り入れることで企業として従業員に提供できることは、多様なワークスタイルです。最近では家族との時間を大切にしたいという人が増え、リモートワークを望むビジネスマンが増えています。BYODによってリモートワークを実現すれば、従業員にとっても企業にとっても様々なメリットがあるでしょう。
シャドーITの防止
シャドーITとは企業が許可していないにも関わらず、業務に私用デバイスを取り入れているような状況です。企業が管理していないところで私用デバイスを活用しいているということは、セキュリティリスクがかなり高まってしまいます。
BYODを本格的に取り入れて、企業が私用デバイスを許可すればシャドーITの心配もなくなります。
BYODの課題
導入することで様々なメリットのあるBYODですが、導入するにあたって課題もあります。
第一に私用デバイスの管理です。BYODを導入して私用デバイスの持ち込みを許可したからといって、管理が無くなるわけではありません。私用デバイスですべての業務を許してしまうと、問題が発生してしまう可能性も多いのあるのです。
従って企業は従業員の私用デバイスを管理できるよう、管理ソリューションなどの導入が求められます。小規模企業であればこうしたソリューションの導入は必要ありませんが、従業員数がある程度多い場合は必要になるでしょう
第二の課題はセキュリティです。社用デバイスを利用したビジネスであれば、企業側で一元管理を行うことができます。しかし、私用デバイスとなるとサーバで管理するわけにはいきません。この場合心配なのがセキュリティでしょう。昨今サイバー攻撃に深刻になるにつれて、企業に求められるセキュリティ要件は年々厳しくなっています。
そんな中、何のセキュリティ対策も取らずにBYODを導入してしまうと、単にセキュリティリスクを上げているだけになります。また、私用デバイスともなるとプライベートでの利用を制限することができなくなってしまうので、難しい課題の一つでもあります。
そして最後に、費用申請に関する課題です。BYODを導入するということは、ノートPCやスマートフォンを業務で活用することになります。従業員が営業先にかけて通話の費用は、一体だれが持つのでしょうかもしもこの負担が従業員にかかるというのであれば、BYODは失敗に終わるでしょう。やはりそうした通話料も通信費も、企業が負担しなければなりません。
となると、どこからが業務でどこからがプライベートかという区切りも難しくなります。少なくとも使用デバイスによる通信費の費用申請を行うための、承認フローを整える必要があります。
まとめ
導入することで様々なメリットのあるBYODですが、課題が多いのもまた事実です。基本的にBYODのメリットを最大限に生かすためには、 ERP や CRM などのアプリケーションがMicrosoft Dynamicsなどのようにクラウド対応しているものであると展開が加速するでしょう。
戦略的に既存のアプリケーション環境を見直していくことも視野にBYODを成功させていただければ幸いです。