「Microsoft Teams」の導入により、チームの情報共有を図る企業は増加しています。そのなかで、Teamsの利用に課題を抱えている企業も多いでしょう。
そこで注目されているのが、「Microsoft Power Platform」です。TeamsとPower Platformを連携することで、Teamsの課題解決が期待できます。しかし、Power Platformは2018年にリリースされた新しいサービスであるため、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、TeamsやPower Platformの基礎知識から、それらを連携する利点までご紹介します。
Microsoft Teamsのメリットと課題
「Microsoft Teams」は、マイクロソフト社が2017年に提供を開始したITツールです。比較的新しいツールながら、世界では1日あたり1億人を超えるユーザーが利用しています。
Teamsにはメリットが多いものの、利用には課題もあります。Teamsを有効活用するためには、これらの課題についても把握することが重要です。まずは、Teamsの主な機能やメリット、課題について解説します。
Teamsの主な機能
Teamsはその名の通り、チームにおける情報共有・コミュニケーションをサポートしてくれます。主な機能は、下記の3つです。
- チャット
- ビデオ会議/通話
- 共同作業
チャット機能では、メッセージによるチームメイトとの情報共有が行えます。1対1のやり取りも、複数チームメイトとグループでのやり取りも可能です。グループで発言する際に、特定の相手だけにメッセージを強調する「メンション」など、豊富なオプション機能が利用できます。
また、お互いの音声や映像をリアルタイムに共有するビデオ会議/通話機能も備わっています。ビデオ会議では、最大300人(2021年9月時点)のメンバーが同時参加可能です。会議前の出席依頼から会議後の議事録展開まで、会議のプロセス全体をオンラインで完結できます。
さらに共同作業機能を使うことで、WordやExcelなどの同一ファイルを複数人で共同編集可能です。チーム内でファイル共有する場合は、ドラッグアンドドロップで簡単にアップロードが行えます。
Teamsのメリット
Teamsを利用する4つのメリットについて、順番に解説します。
1.「Microsoft 365」に契約していれば、追加料金なしで使える
「Microsoft 365」は、WordやExcelなどのマイクロソフト社製品を利用できるサブスクリプション方式のサービスです。Microsoft 365の一般法人向けプランには、基本的にTeamsが含まれています。そのためMicrosoft 365をお使いの企業であれば、追加料金なしで利用可能です。
2.Microsoft 365アプリとの連携が容易となる
Microsoft 365の一部として提供されているTeamsは、Microsoft 365アプリとの連携が容易です。ビデオ会議中のスムーズなファイル共有や、会議の出席依頼にあわせたOutlookスケジュールの自動更新などが行えます。また、前述した共同作業機能では、リアルタイムに1つのファイルを共同編集できます。
3.シャドーITを抑止できる
Teamsには2段階認証や保存・転送データの暗号化など、豊富なセキュリティ対策が施されています。また、シングルサインオンを適用しているため、1組のアカウント・パスワードだけで全ての機能が利用可能です。充実したセキュリティ・ユーザビリティがチーム全体への利用を促進し、結果としてシャドーITの抑止につながります。
4.社内外のコミュニケーション活性化につながる
Teamsさえあればチャットや通話、ビデオ会議を全て実現できます。これらの切り替えもスムーズに行えるため、コミュニケーションの活性化につながります。また、Microsoft 365を利用している他社とも、Teamsでコミュニケーションが可能です。Teamsだけで社内外問わず多くのビジネスパーソンとやり取りが行えるといった魅力があります。
Teamsの課題とは
Teamsの利用における大きな課題は、「チームの乱立によるIT部門の負担増加」です。
Teamsでは、部署やプロジェクトごとにチームを作成し、それぞれのチーム内だけで情報共有が行えます。情報共有する範囲を細分化できる便利な機能ですが、チームが増えすぎると問題も発生します。
Microsoftアカウントさえ持っていれば、チームの作成は可能です。しかし現場の社員が自由にチームを作成できるため、場当たり的にチームが作られてしまうケースも少なくありません。その結果、1人の社員が複数のチームに所属するような状況も生まれやすいのです。
それぞれのチームを並行しての情報共有では見落としも発生しやすく、チームのスムーズな連携は難しくなります。さらに、多くのチームを管理しなければならないIT部門の負担も大きくなります。Teamsは業務効率化を目的としたITツールですが、運用の仕方を誤るとかえって業務効率の低下を引き起こしてしまうのです。
Power Platformの主なサービス
チームの乱立による業務効率低下やIT部門の負担増加を防ぐ有力な手段が、「Microsoft Power Platform」です。Power Platformもマイクロソフト社が提供しているプラットフォームで、高度なIT技術により各チーム・IT部門の業務効率化を可能にします。Power Platformの主なサービス4つについて、順番に解説します。
1.Power Apps
「Power Apps」を使うと、業務効率化するためのアプリを独自に作成できます。アプリの作成にはプログラミングスキルを必要としないため、IT部門以外でも利用可能です。チームのニーズに応じた業務効率化が容易となることで、IT部門の負担軽減につながるでしょう。
2.Power Automate
「Power Automate」は、定型作業を自動化する「RPA」の1種です。メールの送受信やファイル操作など、繰り返し行うパソコン操作を記録・再現できます。定型作業をPower Automateにより自動化することで、IT部門が他の業務に専念できるようになります。
3.Power BI
「Power BI」は、膨大なデータの収集や分析をサポートする機能です。ExcelやSalesforceなど、さまざまな形式に対応可能で、グラフやダッシュボードによりデータを可視化します。IT部門に限らず全チームのデータ活用を促進し、データに基づいた合理的な意思決定を実現できます。
4.Power Virtual Agents
「Power Virtual Agents」を使うと、AIが受け答えを行う「チャットボット」を独自に作成できます。専用のインターフェースにより作成するため、プログラミングスキルがなくても利用可能です。問い合わせをチャットボットにより自動化することで、IT部門の負担を軽減できます。
Power PlatformとTeamsを連携する利点
IT部門や各チームがPower PlatformとTeamsを連携させることで、飛躍的な業務効率の向上が期待できます。Power PlatformとTeamsの連携による利点を、具体例を交えて3つ紹介します。
1.Power Appsで作成したワークフローシステムをTeams上で操作
申請手続きをワークフローシステムにて行う場合、メールで承認者へ通知するのが一般的です。しかし、Teamsがコミュニケーションの主流となっている職場では、メールとTeamsの両方をチェックする負担が生じます。
こうしたケースでは、「Power Apps」によりワークフローシステムを独自に作成すると良いでしょう。そうすることで、申請内容の通知から承認結果の確認までを、Teamsだけで行うことが可能です。社員の負担を減らせるだけでなく、メールの見落とし防止によりチームの連携強化にもつながります。
2.Power Automateのテンプレート活用により、Teamsのチャット見落としを防止
Teamsのチャット機能は、メールよりも手軽に使えるのがメリットです。その一方で、多くのメッセージが届くと見落としてしまうリスクも高まります。この場合は、「Power Automate」で配布されているテンプレートを活用するのが効果的です。
Power Automateのテンプレートを活用すれば、いくつかの設定を行うだけで簡単に業務を自動化できます。具体的には、不在着信したメッセージを通知するリマインダーの構築も可能です。そうすることで、Teamsのメッセージを見落とすリスクの低減につながります。
3.Power Automateで記録した内容を、Teamsのトリガーにより自動実行
Power Automateでは、パソコン操作の記録・再現も可能です。記録した内容(フロー)は、事前に設定した「トリガー」の条件を満たした時に、自動実行できます。トリガーには「新しいメッセージが追加された時」など、Teams上におけるイベントの設定も行えます。
実行時間や繰り返し間隔を設定して、定期的にTeams上でフローを実行することも可能です。たとえば、「毎日17:00に日報の作成を促すメッセージを自動投稿」といったことが実現できます。繰り返し行う作業を自動化することで、業務時間の有効活用につながります。
まとめ
今回はTeamsやPower Platformの基礎知識から、連携する利点までお伝えしました。
Teamsはチームにとってメリットの多いITツールですが、課題も存在します。こうした課題の解決には、Power Platformの併用が効果的です。そうすることで、Teamsのメリットを最大限に享受できるでしょう。
「業務効率が上がらない」「IT部門の負担が大きい」などの課題を抱えている方は、Power Platformの導入を考えてみてはいかがでしょうか。