UIデザインは、顧客体験の向上に深く影響することから、近年注目されている業務のひとつです。ただし、ときには紙資料やレガシーシステムのUIなどから情報を吸い上げる必要もあり、そのための時間や労力は無視できないものです。そこで、スピーディーにUIデザインを実装するためのヒントを紹介していきます。
UIデザインとは?重視される背景
まず、UIデザインの定義や概要、重視される背景を解説します。
UIデザインの定義
UI(ユーザーインタフェース)は、日本語で「境界線」「界面」「接点」などと翻訳される単語です。IT業界ではこうした単語の意味が転じて、「接続口」を指す言葉として使われてきました。そのため、UIデザインは「デバイス同士をつなぐ接続規格の仕様策定」や「接続ポイントの配置」という意味を持つこともあります。
これに対し、デザインの世界におけるUIデザインとは、ユーザーとWebサイト・アプリケーションの接点となる部分を指します。Webサイトで言えば、コンテンツの内容をまとめた目次の部分や、申し込みボタンの配置、CTAの大きさや位置などはUIデザインで決定することが多いでしょう。このようにユーザーが何らかの入力・意思決定を行うポイントのデザイン、配置、導線などを設計する仕事をUIデザインと呼びます。
近年注目されているUIデザインとは、主に後者を指します。装飾的な美を追求する面もありますが、一般的には機能性(=機能美)を重視することが多いようです。
UIデザインが重視される理由
近年、UIデザインはさまざまな理由からビジネスの成長につながる重要な施策と見なされるようになりました。その理由とは、主に以下のようなものです。
コト消費の一般化
2010年代の中ごろから、所有よりも使用のしやすさや体験を重視する「コト消費」がビジネストレンドの主流になりました。コト消費では、使い勝手や体験を重視した製品・サービス開発が重要になるため、ユーザーの使用感や体験に直結するUIデザインに注力する必要がでてきたのです。
ユーザーとITの距離が縮まった
スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの発達は、ユーザーと情報技術の距離を縮めました。ユーザーはいつでも自分の掌の上で、さまざまなデータ・コンテンツに触れることができます。そのため、UIのできがユーザーの記憶や体験に強く作用するようになり、UIデザインの重要性が高まったと考えられます。
UX(顧客体験)向上のため
「UX (User experience=顧客体験)」とは、Webサイトやアプリケーションを使用したときにユーザーが感じる使用感、もしくはそこから創出される体験を表します。良質なUXの提供は、利用率・契約率・購入率などに良い影響を与えます。良質なUXを提供するためには優れたUIデザインが必須であることから、UIデザインにも一定以上の質が求められるようになりました。
UIデザインの基礎的なステップ
UIデザインは、デザインである以上、センスや勘によって差が生ずるは事実です。しかし、機能美を追及するという特徴からもわかるように、根底にある基礎をおさえることで、ある程度の品質を保つことが可能です。UXのプロフェッショナルとして知られるスティーブ・クリュッグ氏によれば、優れたUIデザインとは「考えさせないもの」であるとのこと。具体的には「迷わせない」「考え込ませない」「探させない」ことを意識したデザインが、優れたUIデザインだと言えるようです。これらを実現するための具体的な手法としては、以下4つがあります。
近接
同じ意味を持つ、あるいは高い関連性を持つ情報をグループ化し、ユーザーの認知負荷を下げます。
整列
複数の情報を提示する場合、単に羅列するのではなく一定のルールに従って情報を整理することで、混乱を回避します。
対比
重要な情報は、重要度が目で見てわかるように強弱をつけます。文字装飾や色分けなどが典型例です。
反復
反復では、類似要素を似たようなパターンで繰り返します。ユーザーの中でパターンが出来上がると認知負荷が下がるため、迷ったり探したりといった行動を防ぐことができます。
UIデザインの課題
このようにUIデザインは、一定の法則に従うことが基本です。ただし、実際のUIデザインは、ただ基礎に忠実にデザインだけを進めれば良いというものではないでしょう。以下は、UIデザインの過程で生ずる課題の一例です。
リソースが無い
最もポピュラーな課題としては、「UIデザインに割けるリソースの少なさ」が挙げられるでしょう。一人情シスやエンジニア不在の環境では、UIデザインまで手が回らない場合も珍しくありません。もしITの知識を持たない人材がUIデザインを担当する場合には、プログラミング言語などの学習コストも考慮しなくてはいけません。また、人材採用や育成のコストも計算しておく必要があります。
レガシーのデザインに振り回される
また、使い勝手の良いUIデザインのためには、古い業務システムやプロセスの踏襲が必要になる場合もあります。使い勝手の良さ=ユーザーが使い慣れたデザインという判断が為されれば、レガシーシステムのUIを踏襲しつつ、紙資料のレイアウトも吸い上げたものになるかもしれません。こうした作業はすべての業務アプリケーションで発生することが想定されます。したがって、UIデザインを効率よく進めるための汎用的な方法論を確立しておきたいところです。
UIデザインを半自動化するPowerApps
ここでは、UIデザインを効率化する方法論として「業務アプリ作成ツールを用いた半自動化」を紹介します。Microsoftでは、業務アプリ作成をサポートするツール「PowerApps」を提供しています。PowerAppsに含まれるエクスプレスデザインという機能を活用することで、UIデザインの手間を大幅に削減することが可能です。
「エクスプレスデザイン」でUIデザインを瞬時に完結
PowerAppsは、ローコード開発に対応しています。コーディング作業を極力少なくしているため、直感的な操作によってUIデザインが進められます。さらに、エクスプレスデザイン機能は、手書きのデザイン画像からUIデザインを起こすことも可能です。紙資料のひな型や印刷したPDFファイルをもとにUIデザインを構築する場合でも、半自動的にUIの基礎部分が出来上がります。
PowerAppsは、PowerPoint の UI と Excel 関数の感覚でアプリケーションを作成できるツールです。既存の業務で得たスキルを活かしつつ、技術的な学習コストが最小化されるため、エンジニアやデザイナー以外の人材であってもUIデザインにアイディアを反映させやすくなります。
まとめ
今回は、UIデザインの基礎知識や課題、その解決方法としてのPowerApps(エクスプレスデザイン機能)を紹介してきました。UIデザインは基礎的なポイントをおさえることで、一定の品質を保つことができます。しかし、リソースが不足していたり、紙資料からの吸い上げが必要だったりといったケースでは、UIデザインの自動化を検討すべきかもしれません。