企業が保有する業務システムのクラウド化は着実と進んでいます。中でもメールシステムの導入率は高く、クラウドサービスを使用している企業の44.4%が メールシステムをクラウドで利用しています。
そして数あるクラウド型メールシステムの中でも人気が高いのが、Microsoftが提供するExchange Onlineです。Exchange Onlineは、Microsoftのクラウド型グループウェアサービスであるOffice 365に包括されているメールシステムであり、個別で利用(スタンドアロンサービス)することも可能です。
Exchange Onlineが人気の理由は、多くのビジネスマンが使い慣れたメールシステムであるExchange Serverのオンライン版という点であり、既にExchange Serverを利用している方は現況とほぼ変わらない環境で利用することができます。
また、他社メールシステムから移行することも可能であり、メールシステムの定番であるExchangeへクラウドサービスで容易に移行・導入することが可能です。
今回紹介するのは、そんなExchange Onlineへの移行する際の留意点です。移行手段についていくつかご紹介しながらポイントを解説していきます。料金プランについても説明していますので、ぜひ参考にしてください。
既存のExchange Serverからの移行
既にExchange Serverを導入していてExchange Onlineへ移行したいという場合、以下の3つの方法で移行することができます。システム環境や利用状況によって適切な移行方法が異なるので注意しましょう。
一括移行
組織内のメールボックスを一括で移行する方法ですが、まず以下の条件に当てはまっている必要があります。
- 現在オンプレミスのExchange Server 2003、Exchange Server 2007、Exchange Server 2010、Exchange Server 2013のいずれかを使用している
- 組織内のメールボックスが2,000未満である
移行作業は管理センターからできるため、比較的簡単にメールボックスをExchange Onlineへ移行することができます。
一つ注意すべきことは、「組織内のメールボックスが2,000未満である」という条件はあるものの、メールボックス数が多いと移行に時間がかかってしまうということです。
従って、Microsoftではメールボックス数150程度での移行を推奨しています。
段階的な移行
組織内のメールボックスを段階的に移行する方法であり、以下の条件に当てはまる場合段階的な移行をおすすめします。
- 現在オンプレミスのExchange Server 2003、またはExchange Server 2007を使用している
- 組織内のメールボックスが2,000を超えている
また、段階的移行では以下のようないくつかの注意点があります。
- Azure Active Directory同期を使用し、オンプレミスの Active Directoryドメインと Office 365間でアカウントを同期する必要がある
- 移行できるのはユーザーメールボックスとリソースメールボックスだけであり、配布グループや連絡先などはディレクトリの同期プロセスによって移行される
- 不在時返信メッセージは、メールボックスと一緒には移行されない
不在時返信メッセージが移行されないなど、直接業務に関わる事があるので十分に注意しましょう。
ハイブリッド
現状でオンプレミス(Exchange Server)とクラウド(Exchange Online)の2つを導入しており、以下の条件に当てはまる場合に推奨されている方法です。
- Exchange 2010を使用していてメールボックスが150~2,000以上ある
- Exchange 2010を使用していて時間をかけて小規模バッチで移行する
- Exchange 2013を使用している
以上がExchange ServerからExchange Onlineへ移行する方法になりますが、各移行方法では実行するべきプロセスが異なります。
Microsoftのウェブサイトで詳しい移行方法が記載されているので、移行を開始する前に確認しておきましょう。
他社メールシステムからの移行
他社メールシステムからも移行可能なExchange Onlineですが、移行にはIMAP(アイマップ)を使用します。
IMAPとは「Internet Message Access Protocol」と呼ばれる受信メールプロトコルであり、多くのメールシステムがこのIMAPに対応しています。
しかし、環境によってはIMAPで移行できない可能性もあるので、まずは自社環境を確認しIMAP対応かどうかを把握しておきましょう。
また、他社メールシステムからExchange Onlineへ移行する際は以下の点に注意する必要があります。
- ユーザーの受信トレイや他のメールフォルダーにある項目のみ移行可能であり、連作先/予定表の項目/タスクは移行されない
- ユーザーのメールボックスから移行できる項目数は最大50,000(新しいものから順に移行される)
- 移行できるメールの最大サイズは35MB
- メールシステムへの接続数を制限している場合は、移行パフォーマンスを高めるために数を増やすのが推奨されている
Exchange Onlineを使用する場合の料金
他社メールシステムからExchange Onlineへ移行する場合、利用料はどのように発生するのか?以下にプランごとの料金と概要を紹介します。
|
Exchange Online |
||
---|---|---|---|
プラン1 |
プラン2 |
||
月額料金 |
440円 |
870円 |
1,360円 |
50GBのメールボックス |
○ |
○ |
○ |
Outlook |
○ |
○ |
○ |
ドキュメントの共同作業 |
○ |
○ |
○ |
無限のアーカイブスペース |
- |
○ |
- |
データ損失防止 |
- |
○ |
- |
Officeアプリのサポート |
- |
- |
○ |
1TBのストレージ |
- |
- |
○ |
オンライン会議 |
- |
- |
○ |
社内SNS |
- |
- |
○ |
プロジェクト管理ツール |
- |
- |
○ |
Office 365 Business Premiumとは、Exchange Onlineを含めオンライン会議などのグループウェア機能、さらにExcelやPowerPointなどのOfficeアプリを利用できるサービスです。
上記のように、Exchange Onlineには2つのプランが存在し、プランごとに月額料金やサポートされている機能が異なります。
また、上述したOffice 365 Business Premiumなどの選択肢もあるので、移行時は自社ニーズに適したプランを選びましょう。
まとめ
Exchange OnlineはExchange Serverはもちろん、多くの他社メールサービスから移行できるサービスです。しかし、移行方法や現在の環境によっては移行でき項目数や容量などが異なるので十分に注意していただきたいと思います。
また、Exchange OnlineがサポートされているOffice 365を導入したいという場合は、6つのプランの違いを明確にし、自社に最適なサービスを利用しましょう。