すべての企業にとっての至上命題である「業務改善」。より円滑な業務遂行のために、より多くの付加価値を生み出すために、今ある業務プロセスを見つめ直して改善を加えることで、企業は多くの効果を得ることができます。もちろんそのためには、適切な業務改善プロジェクトを進め、様々なリスクを管理し、しっかりと効果の出る業務改善を成し遂げなければいけません。
本稿では、これから業務改善プロジェクトに取り組もうとしている方に向けて、その進め方について解説します。
業務改善プロジェクト開始前の事前準備
業務改善の失敗例としてありがちなのが、場当たり的な施策を実行することで以前よりも業務プロセスが複雑になってしまうことや、大した効果が得られないということです。
業務改善プロジェクトでは社内リソースだけで実行したとしても、そこには当然コストがかかってします。そのコストを業務改善効果が上回り、かつ継続的に価値を生み出すような業務改善でないと成功とは言えません。
では、成功のために必要なこととは何か?それは業務改善に限らず、「事前準備」がとても重要になります。業務改善プロジェクトに必要な事前準備とは「目的と目標の明確化」、それと「問題と改善策の想定」です。
目的と目標の明確化
目的とは「なぜ業務改善を行うのか?」であり、目標とは「業務改善によって達成したいこと」です。目的と目標、この2つが明確になっていないまま業務改善プロジェクトをスタートしても、大方失敗します。
業務改善プロジェクトには様々な人が関わるため、全員が共通認識を持ってプロジェクトに取り組む必要があります。目的と目標は、関係者全員の共通認識として制定し、プロジェクトの指針として機能させます。
問題と改善策の想定
業務改善にあたって、具体的な問題点と改善策は後ほどのステップで固めていきますが、事前準備の段階で業務プロセスに存在する問題とそれに対する改善策を想定しておきます。
その理由は、問題と改善策を簡単にでも想定しておくことで、業務改善における行動スピードを多少なりともアップできるからです。要するに「心構え」のようなものであり、これがあるか無いかによって問題改善に向けた初動も変わります。
総合的な視点から現状把握を行う
次のステップとして、業務改善の対象となる範囲におき、「どういった業務プロセスがあるのか?」や「業務がどのように行われているか?」を把握していきます。業務改善プロジェクトへ取り組みむにあたって現状把握というステップを飛ばしてしまうケースがありますが、失敗原因の1つです。
「社内の業務プロセスについては熟知している」と考えている場合でも、しっかりと現状把握を行ってみると、今までは気付かなかった業務プロセス同士の繋がりなどを発見することができます。
では、現状把握のためには何を行えばよいのでしょうか?それは「現場でのヒアリング」と「業務フロー図の作成」」です。
現場でのヒアリング
業務改善対象となる業務範囲の現状把握としては、現場にてヒアリングを行うのが一番早い方法です。ただし、単純にヒアリングを行うといよりは「業務調査を行う」という意味合いが強く、実測法や実績記入方などの業務調査手法を使います。
実測法
実際の業務を観測して業務プロセスや業務量を調査する
実績記入法
担当者に、各業務にかかった時間を記入してもらう
推定比率法
1日の全体業務時間から逆算して業務量を推定する
合成法
複数の観測結果から業務プロセスの内容と業務量を予測する
業務フロー図の作成
業務フロー図とは、業務プロセスの流れや各業務における作業手順などを図形・線形を用いて表したものです。業務フロー図を見れば、業務プロセスに関する情報を直感的に理解できますし、関係者全員で共通ルールのもと作成された業務フロー図があれば、企業全体の業務プロセスを可視化できます。
ポイントは、関係者全員が共通ルールを持って業務フロー図を作成することです。各人が好きなように作成してしまうと、それを1つに統合するのに時間がかかりますし、認識のズレが発生する可能性もあります。
業務プロセスに潜む問題点を洗い出す
業務プロセスの現状把握が完了すれば、次は具体的な問題点を洗い出していきます。その際はまず、関係者全員でブレスト(ブレインストーミング)を行うのがポイントです。ブレストを行う際は、「結論を出さない」「自由に考える」「質より量を重視する」「考えを結合する」というのが、物事を深く考えるためのコツです。
さらに、問題に対いて「なぜ?」を繰り返していくことで、本質的な原因を探ることができます。
なぜなぜ分析
製造業における品質管理や労働安全管理では「なぜなぜ分析」という分析手法がよく用いられます。これは、現認できる問題に対して「なぜ?」を数回繰り返すことで、問題の本質的な原因を探るというものです。
たとえば「顧客の発注から見積書作成に時間がかかり、提出までに3日以上を有するのが通常であり、それによって顧客満足度を阻害している」という問題があった場合、以下のようになぜなぜ分析を行います。
なぜ?①
見積書の作成が遅いのはなぜ?
⇒営業が発注内容確認してから、それを別のテンプレートにまとめ、経理担当者に提出してから作成するというフローがあるから
なぜ?②
見積書作成のフローが遠回しなのはなぜ?
⇒顧客に提出する重要書類である見積書を正確に作成し、かつ自動的に2者確認がされるような仕組みを作りたいから
なぜ?③
この仕組みを効率的にできないのはなぜ?
⇒見積書作成はすべて手動で行われており、発注内容からテンプレートへ、テンプレートからシステムへといった具合に複数の転記を挟んでしますから
なぜ?④
複数の転記を挟んでしまうのはなぜ?
⇒営業が使用しているシステムと経理が使用しているシステムでの連携が取れておらず、システム上で情報のやり取りが行えず、やむを得ず手動で行われているから
なぜ?⑤
システム同士の連携が取れないのはなぜ?
⇒営業システムも経理システムも個別最適化のために大量のアドオン開発が加えられており、システム同士を連携した際の安定性の担保が取れていないから
このように、なぜなぜ分析では5つの「なぜ?」を繰り返していくことで、大抵の問題はその本質的な原因を探ることができると考えられています。もちろん、問題によってどこまで掘り下げればよいかは異なるので、考えながら分析していくことが大切です。
問題を改善し、業務改善を継続していく
問題の把握とその原因を追究することができたら、いよいよ改善策を考え、改善を実行していきます。改善策を考える際は「ECRS(イクルス)の法則」に従って「排除する(Eliminate)」「まとめる(Combine)」「組み替える(Rearrange)」「簡単にする(Simplify)」の順番で立案すると、より良い改善策が生まれるでしょう。
改善策が決まったら、それを実行するための計画を立てます。いつ実行するか?どこで実行するか?誰が実行するか?どうやって結果を測定するか?を4つのポイントとして計画すると、円滑な業務改善プロジェクトを推進できるでしょう。
そして最後に大切なのは、業務改善を継続していくことです。業務改善は1日にして成りません。何度も改善を継続していくことで、業務プロセスをより良いカタチへと変化させていくことができます。
まとめ
いかがでしょうか。業務の改善や生産性の向上は、地道な活動の積み上げで成果も徐々に上がっていきます。そのため、日々使用するツールや環境もストレスなく使用できることが望まれます。
マイクソフトが提供するOffice 365は、普段使い慣れたOffiecアプリケーションが常に最新の状態に保たれるばかりでなく、最大15台まで使用するデバイスで利用でき、オフィスや移動時のモバイル、自宅でのパソコンなど、あらゆる環境で安全にご利用いただけます。
ぜひ、この機会に現在使用しているICT環境も見直してみてはいかがでしょうか。