次期OfficeであるOffice 2019のリリースが近づいてきました。昨年9月に開催されたマイクロソフトのカンファレンス「Ignite(イグナイト)」にて発表されたOffice 2019ですが、今年4月にはプレビュー版も登場し、すでに試している企業の方もいらっしゃるでしょう。
ちなみにプレビュー版である「Office 2019 Commercial Preview」を利用できるのは、Office 2019のボリュームライセンスを購入検討している企業のみです。そうした企業にはOffice 2019をお試しできるチャンスでしょう。
今回お話するのは、Office 2019で提供されるExcelがどう変わるかについてです。表計算ソフトウェアとしてビジネススタンダードになっているExcelは、Office 2019によって何が変わるのでしょうか?
※リリース前の情報ですので、リリース時には内容が変更になる場合がありますのでご了承ください。
ExcelとAIの関係とは
現在マイクロソフトが提供しているクラウドサービスではAIの活用が進んでいます。マイクロソフトに限らずIT業界において今最もホットなトピックは「AI(人工知能)」でしょう。各分野で研究が進められ、現在では様々なシーンでAIが力を発揮しています。昨年のIgniteにてOffice製品のゼネラルマネージャーのJared Spataro氏と、Office 365のエコシステム・マーケティング担当ディレクターのRob Howardが語ったところによると、次期バージョンにてExcelはユーザーが入力したデータを的確に理解して、それに関連する情報を提供するAIを統合するようです。
たとえば、ある企業名を入力するとExcelはそれが企業名であると認識するようになります。さらにExcelはAPIを利用してBingにてインターネット検索をし、株価や時価総額などの情報を付加してくれます。国名を入力すればその国の人口、領土、指導者、経度、都市名などの情報を自動的に取得します。任意の情報を選択することでセル内にその情報が記入されます。
こうしたAIを搭載することで、Excelの利便性はより高度になるでしょう。
Excelに追加される新機能
Office 2019のExcelには、AI連携以外にも様々な機能が追加されるという情報が発表されています。たとえば新しい数式やグラフの追加です。ただしこれはOffice 365にて提供されているOffice 2016に既に実装されているものなので、まったく新しい機能というわけではありません。
もう一つ注目の機能はVBA以外のプログラミング言語の追加です。VBAとはExcel内で使用できるプログラミング言語であり、マクロ機能で記録した作業を細かく調整するときなどに使用します。追加されるプログラミング言語として濃厚なので「Python(パイソン)」です。
AI研究分野でも使用されることが多いPythonは、ここ最近人気を集めているプログラミング言語の一つです。その理由になっているのがPythonの成長性でしょう。
実はExcel VBAというプロうミング言語はここ20年間、実質的なアップデートがされていません。対してPythonはオープンソースプログラミング言語なので新しいライブラリがどんどん追加されていきます。Pythonを実装していればマイクロソフトは手間をかけなくても機能が追加されているので、Pythonが統合されるのではないかと考えられます。
Office 2019を利用するために必要なライセンス
Office 2019で提供されるExcel 2019では色々な機能が追加されたり、AI連携などの情報が発表されています。では、肝心のOffice 2019はどのようにすれば利用できるのか?
シンプルな方法としてはボリュームライセンスを購入することでしょう。企業が一定数以上のOfficeライセンスをを購入する場合、ボリュームライセンスとして購入するとディスカウントを受けられたり、様々なサポートを受けることができます。
もう一つの方法はOffice 365を契約することです。Office 365はマイクロソフトが提供するクラウドサービスの一つであり、契約することでOfficeライセンスが付帯します。Office 365が提供するプランは次の7つです。
プラン |
価格(1ユーザーあたりの月額料金) |
---|---|
Office 365 Business Essentials |
540円 |
Office 365 Business |
900円 |
1,360円 |
|
Office 365 ProPlus |
1,310円 |
Office 365 Enterprise E1 |
870円 |
Office 365 Enterprise E3 |
2,180円 |
Office 365 Enterprise E5 |
3,810円 |
このうちOfficeライセンスが付帯するのはセルが赤くなっている、Office 365 Business、Office 365 Business Premium、Office 365 ProPlus、Office 365 Enterprise E3、Office 365 Enterprise E5の5つです。Office 365 Business EssentialsとOffice 365 Enterprise E1に関してはコラボレーションツールは提供していますがOfficeライセンスは付帯しません。
ここではOffice 365 Business Premiumを例にその機能を確認してみると、次のような機能を提供しています。
- Exchange Online ビジネスメール
- SharePoint Online ファイル共有スペース&サイト作成
- Skype for Business 無料の音声・ビデオ通話
- OneDrive for Business ユーザーあたり1TBのクラウドストレージ
- Yammer 社内SNS
- Teams チームごとに情報とコミュニケーションを集約するスペース
- Outlook Customer Manager 顧客との関係性を構築
- Bookings ビジネス管理の効率化
- Planner タスクとチーム作業を管理する
細かい機能でいえば他にもたくさんありますので、単純にOffice 2019を利用できるだけでなく組織全体のコミュニケーションを促進する効果があります。
Office 365 Business Premiumは1ユーザーあたり月額1,360円で利用できるので、年間コストにすると1ユーザーあたり1万6,320円です。
Office 2019のボリュームライセンスが前バージョンのOffice 2016と同じ価格だとすると、基本価格は4万9,000円になります。つまりOffice 365 Business Premiumを丸々3年間利用するとボリュームライセンスと同等の費用になるという計算です。これを安く見るか高く見るかは企業によって違うと思います。
もしもOffice新バージョンが出る度に買い替えているような企業ならば、Office 365を契約する方が圧倒的にお得です。そうではない環境でも Office 365にはOfficeライセンス以外の様々なアプリケーションが付帯するため、やはりお得でしょう。
Office 2019のボリュームライセンスを購入するか、Office 365を契約するかによって新しいOfficeの展開方法は変わってきます。これまでOffice 365に踏み出せなかった企業は、Office 2019のリリースを機にOffice 365への移行を検討してみてはいかがでしょうか?