1990年代後半から国内普及がスタートしたグループウェア。十数年経過した現在では既に半数以上の企業が導入してると言えます。普及開始当時はトップダウン型指揮系統を実現するために導入する企業が多かったものの、現在では形を変え“組織内の情報交換やコミュニケーションを活発化するため”に導入している企業がほとんどです。
しかし、中にはグループウェアのニーズがありつつも未だ導入していない企業が多く存在します。その原因の一つでもあるのが「社内提案書(稟議)が通らない」です。
現場社員からすれば業務効率が悪いのは明らかで、グループウェアを導入すれば多くの課題が解決される。にも関わらず上層部は提案を承認せずいつまで経っても導入の目処が立たない。このような問題に頭を抱えている管理者は多いと思います。
もしかするとその原因は、決裁者ではなく“提案書”にあるかもしれません。
今回はどのような社内提案書を作成すればグループウェア導入が承認されるのか?その7ポイントを解説していきたいと思います。
グループウェア導入は理解されにくい
社内提案書作成ポイントの前に知っておいて欲しいのが「グループウェア導入は理解されにくいことが多い」ということです。
例えば営業支援システム(SFA)や顧客管理システム(CRM)といったソリューションは売上げに直結するシステムなので、メリットを分かりやすく明示すことができます。しかしグループウェアは直接的に売上げに関わるシステムではないため、決裁者の理解を得ることが難しいのです。
提案者もまずはこの点をしっかりと考慮しなければ、グループウェアで通る提案書を作成することはできません。
現状整理、自社の課題を洗い出す
まずは基本中の基本。自社の課題を洗い出すことから始まります。
一口に課題を言っても企業や部署、個人により様々な課題が存在します。また、グループウェアで解決できる課題は業務効率化だけではなく、実は様々な課題を解決することが可能です。
ですので、まず考え得る限りの課題を洗い出してください。現場社員に「非効率的に感じる業務や作業は何か?」とアンケートを取ってもいいでしょう。(匿名で収集すれば有効回答が集まりやすく提案書にも活用できる)
課題を洗い出せたら、解決の重要度が高い順に並べ替えます。「現場ではこんなにも課題を抱えています」と全てを伝えても決裁者の心には響かないので、必ず複数に絞ってください。3~5つ程度もあれば十分訴求に使えます。
現状どれだけのコストがかかっているかを算出する
課題があるということは、そこにはそれ相応のコストがかかっているということでもあります。
例えば「ちょっとしたミーティングでも会議室を押さえなければならないため、無駄な時間を多く生んでしまっている」という課題があれば、そこには“会議室を押さえる”や“会議室まで行く”といった業務(コスト)が発生しています。
グループウェアを導入すればWeb会議機能で会議室を押さえる必要もなく、ちょっとしたミーティングならばデスクから離れずに行うことが可能です。また、ファイル共有機能を使用すれば共同編集も可能で議事録として使用することができます。
このように、各課題がどれだけのコストを生んでいるかに対し、グループウェアならどれだけコストダウンに繋げられるかを整理するのです。
この時必ず「かかっているコスト」と「削減できるコスト」を数値化しましょう。
「業務効率化」はNG、「コスト削減」で訴求を
グループウェアの社内提案で通らない原因の一つが、「現場視点で提案してしまっていること」です。管理者からすれば現場社員の業務効率化が目的だったとしても、決裁者視点で考えなければ通る提案書を作ることはできません。
つまり「業務効率化」ではなくあくまで「コスト削減」という観点から提案書を作成するのです。決裁者である経営者や役員からすれば結局のところ気になるのは「コスト増加になるのではないか?」という点です。(もちろんそうでない決裁者もいます)
このような決裁者に対し「グループウェアを導入することで現場社員の大幅な業務効率化に繋がります」と訴求しても、「でもコスト上がるんでしょ?」「現場の頑張りが足りないんじゃないの?」となります。特にIT関連に疎い方だとこの傾向が顕著に表れるでしょう。
このためグループウェアを提案する際は「業務効率化」ではなく「コスト削減」の方が決裁者に響くのです。
また、「顧客ロイヤリティの向上」という観点で訴求するのもありです。
例えば情報共有基盤がないため顧客情報を適切に管理できず、いつも対応が後手に回ってしまうという課題がある場合は顧客ロイヤリティが低下していると考えられます。グループウェアを導入して適切な情報共有が実現し、その結果顧客ロイヤリティが向上すれば売上げ増加に繋がるからです。
他にも訴求できるポイントはいくつかあるので、あくまで決裁者視点で考えていきましょう。
提案書を1枚にまとめる
「提案書を1枚にまとめる」と聞くと、TOYOTAのA3シートで作る“1枚提案書”を思い浮かべる方が多いと思います。
そもそも提案書を作成する目的を考えてみると「できるだけ少ない情報で提案内容をダイレクトに伝える」ということではないでしょうか。つまり5枚も6枚もあるような提案書だとその分煩雑化し、提案内容が決裁者に伝わりづらくなってしまいます。
一方“1枚提案書”では1枚のシートの情報を納めなければならないという制約があるため、情報を選りすぐらなければなりません。結果、余計な情報を省き必要な情報だけで提案内容を伝えることができるので訴求力が高まります。
また、1枚のシートにまとめることで上部から下部に向かって論理的かつストーリーを持たせた提案が可能になります。このため提案書はできる限り1枚にまとめた方がいいのです。
インフォグラフィックにして分かりやすくするのもいいでしょう。
専門用語はできるだけ避ける
以前通らなかった提案書があるという方は、一度見返してみてください。もしかしすると専門用語を多用してはいませんか?
「Office 365ならインターフェースは常に最新に保たれ、かつフレキシブルにシステムを構築できるのでユーザー数の増減に対応できる。」
もしも上記のような内容が提案書に書かれていたら、頭に「?」が浮かぶ決裁者は少なくないと思います。提案書は誰に向けたものなのか?当然決裁者です。しかし肝心の決裁者が提案書に書かれている文の意味を理解できなければ承認には繋がりません。
このため決裁者が読んでも分かりやすいよう、できるだけで専門用語を避けてください。
「Office 365ならシステムは自動更新されるので、常に最新の画面を使用できる。また、拡張性に優れてるので自由に利用者数を増減できる。」
普段から専門用語をつ使い慣れている方からすれば回りくどい言い方と感じるかもしれませんが、提案書にするならばこれくらいわかりやすく書くことが大切です。
気になるセキュリティ面の情報も忘れない
近年グループウェアで主流となっているのは「Office 365」のようなクラウド型であり、オンプレミスのユーザー数は年々減少傾向にあります。このため多くの企業でクラウド型グループウェアでの導入を検討しているかと思います。
ここで決裁者が気になるのは「セキュリティ的な心配はないか?」です。グループウェアは組織内のデータが集約されるシステムであるため、ベンダーが保有するサーバに保管するという点に不安を覚える決裁者が多いのです。
従って、グループウェア提案書を作成する際はセキュリティ面における情報を明記することも忘れてはいけません。
ちなみに自社でセキュリティ対策を取るよりクラウドサービスの方が堅牢なケースが多いので、きちんと伝えることができればさほど問題にはならないかと思います。「Office 365」のセキュリティ面に関して別の記事でまとめているので、是非参考にしてみてください。
必ず数値化した分析データを取り入れる
提案書を作成する際は、分析データを必ず数値で取り入れてください。理由は情報を短縮して訴求できることと、数値化することで分かりやすく伝えることができるからです。
例えば「現状課題が原因でかかっている無駄なコストが○○円に対し、グループウェアを導入することで80%のコストカットが可能になる」など、分析データを数値化することで訴求力が高まります。
まとめ
最後に今回の要点を改めてまとめておきます。
- 現状課題を洗い出し、優先度を付けて3~5つに絞る
- 課題に対しどれだけのコストがかかっているか?グループウェアでどれだけコスト削減になるか?を算出する
- 「コスト削減」や「顧客ロイヤリティの向上」などあくまで決裁者視点に立った訴求をする
- 提案書をできる限り1枚にまとめ短時間で分かりやすく提案内容を伝える
- 専門用語はできるだけ避けて分かりやすい表現を使う
- セキュリティ面の安全性もしっかりと伝える
- 訴求性を高めるために分析データは必ず数値化して取り入れる
グループウェアは多くの課題を解決するコミュニケーションソリューションです。しかし、導入が実現しなければその恩恵を受けることができません。
以前社内提案が通らなかった方、これから社内提案をするという方は今回のポイントを押さえつつ提案書を作成してみてください。多くの企業でグループウェアに対するニーズは必ずあるので、決裁者にとって魅力的な提案書を作成できれば必ず提案は通ります。
本稿がきっかけで少しでも多くのグループウェア社内提案が通り、現場社員の皆さんの業務効率化に繋がれば幸いです。