近年DXが加速する中、チャットボットの利用が注目されています。AIチャットボットは問合せ対応を自動化する接客ツールとして、ECサイトや顧客対応、社内FAQ等で広く使われていますが、実は製薬業でも活用されています。本記事では、製薬業においてAIチャットボットを構築するポイントや導入事例について解説します。
AIチャットボットの仕組みとは
チャットボットとは、英語で会話を意味する「チャット」と「ロボット」を組み合わせた合成語です。IT関係でチャットと言えば、リアルタイムに相手と文章でやりとりできるコミュニケーションツールを指しますが、チャットボットは人間の代わりにコンピュータープログラムがチャットの相手を務めてくれます。
従来のチャットボットは、人間があらかじめプログラムで入力したパターン通りにしかユーザーの言葉に答えられなかったため、汎用性の低いものでした。しかしAI(人工知能)の進化、とりわけ「ディープラーニング」という新たな機械学習の開発や、それに伴うAIの自然言語処理能力の向上により、今では様々な質問に柔軟に答えてくれる「AIチャットボット」が実用化されています。AIチャットボットは日常的な話し言葉も理解でき、あいまいな質問にも適切に回答可能なため、従来のチャットボットに比べてより自然な会話を実現できるのです。
たとえばECサイトやコンタクトセンターなどでAIチャットボットを活用すれば、顧客からの定型的な質問を人間の代わりにAIに自動応答してもらうことが可能です。AIチャットボットを使えば、人的コストを削減しつつ顧客からの問い合わせに24時間対応できるため、顧客サービスの向上と業務効率化の両面で有用な方法として現在注目を集めています。
AIチャットボットの動向
ユーザーの言葉に自動で応答してくれるAIチャットボットは、ビジネスの現場に留まらず、すでに私達の日常生活の中にも浸透しつつあり、その市場規模は拡大の一途を辿っています。
たとえば矢野経済研究所が2018年に報告した「AIシステム市場調査」においては、2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックなどによるインバウンド需要の後押しを受けて、2017年には11億円だったチャットボットの市場規模が、2022年には10倍以上の132億円にまで上昇する見通しだと予測されています。
実際、AIチャットボットないしは対話型AIはスマートフォンやスマート家電などの普及・発展とともに、利用機会が増えつつあります。たとえば、Amazonの「Alexa」やiOSの「Siri」、Googleの「OK Google」などを利用している人はとても多いのではないでしょうか。実はこれらの音声アシスタント機能も、AIチャットボットの一種(音声チャットボット)なのです。
今後少子高齢化が深刻化していく日本において、各企業は働き手不足に備えなければなりません。しかし、同時に顧客活動が多様化し、企業間競争が激化する中で、ユーザーエクスペリエンスの向上もますます重要になってきています。こうした状況を受けて、顧客へのカスタマーサービスや社内のFAQ対応などに関する働き方改革の一環として、AIチャットボットを導入する企業が増えつつあるのです。このためチャットボット市場は、今後もますます成長していくことが予想されます。
製薬業においてAIチャットボットを構築するポイント
ここまではAIチャットボット全体の概要について説明してきました。それでは、製薬業においてAIチャットボットを構築・運用する上では、どのようなポイントが重要になるのでしょうか。
回答精度向上のポイント
AIチャットボットを顧客からの問い合わせ対応などに活用する上では、当然ながらその回答精度の高さが重要になってきます。まず、AIチャットボットには「機械学習型」と「ルール型」の2つの種類があります。
機械学習型においては、最初に膨大な学習データ(教師データ)をインポートすることで、AIはそこから自動的に機械学習を進め、質問への回答精度を向上させていくことが可能です。他方で、こうしたAIの自律学習が裏目に出ることもあり、AIが予期せぬ返答をしてしまうことが懸念されます。対して、ルール型においては、事前にプログラムされたルール外の質問には回答しないため、機械学習型に比べて汎用性こそ劣るものの、回答精度の質を保ちやすくなります。
AIチャットボットの回答精度を高めるためには、この両者の特性の良いところを組み合わせるのが理想です。また、たとえば、ユーザーの質問に対して敢えて複数の選択肢を返すように設定するのも効果的です。AIが提示する複数の選択肢の中から、ユーザー自身に1つを選ばせていくことで、ユーザーのニーズに最も近い回答を提供することが可能になります。
会話ログデータを活用したガイドライン対策
AIチャットボットをフル活用するためには、「最初だけ細かな設定をして後は放置」という仕方はもったいない使い方です。
AIチャットボットには、会話ログデータが蓄積されており、そこから特定事項の抽出などを効率的に行うこともできます。たとえば、どんな問い合わせ内容が多いのかチャットボットの会話ログを基に分析することで、医療関係者を含む顧客の潜在的ニーズを発見することもできるでしょう。
このように、会話ログデータを活用したガイドラインをあらかじめ設定し、運用していくことで、AIチャットボットの導入効果を飛躍的に高めることが可能です。
AIチャットの導入事例
一部の製薬会社はすでにAIチャットボットを導入し、大きな成果を挙げることに成功しています。そこで以下では、中外製薬株式会社におけるAIチャットボットの導入事例をご紹介します。
中外製薬株式会社のチャットボット導入事例
「タミフル」などの医薬品で有名な中外製薬株式会社は、医療関係者などの顧客から寄せられる大量の問い合わせに対し、正確かつタイムリーな情報提供を行うため、2019年にチャットボット「MI chat(エムアイチャット)」を導入しました。
MI chatを利用することで24時間365日対応可能な医薬品情報提供の体制を整備し、顧客サービスの利便性を向上させることができました。
JMAS社のAIチャットボット構築サービス
JMAS社では製薬会社にとって有用なAIチャットボット構築サービスを提供しています。
JMAS社はMicrosoft Azure が持つ機能を最大限に引き出すことで、AIによる高度な回答精度を実現しました。同時に、今まで培ってきたノウハウをフル活用することで、ヘルプデスクなどの社内FAQ業務、コールセンターの問い合わせ対応、EサイトなどにおけるWeb接客など、ユーザー企業の多様なニーズに最適化したAIチャットボットの提供が可能です。
JMAS社のAIチャットボットでは、AIによる自動チャットから有人チャットへスムーズに切り替えることも可能です。これによって定型的な質問はAIチャットボットに任せて、人は特殊性の高い個別的問い合わせに集中して対応できます。
JMAS社のAIチャットボットはLINEなどの外部ツールとの連携も可能であり、会話データのメンテナンスや分析も簡単に行えるなど、利用者と管理者双方に対する優れたユーザビリティを有しています。JMAS社のAIチャットボットを活用することで、ユーザー企業は業務の様々な面で効果的なDXを実現できるでしょう。
まとめ
中外製薬株式会社の例に見られるように、AIチャットボットを活用することで、企業は定型的な問い合わせ対応などの自動化が可能になります。進歩したテクノロジーを積極的に活用し、サービスを充実させることで、新たなビジネス展開が生じてくる可能性もあるでしょう。ぜひAIチャットボットの導入をご検討ください。