企業におけるクラウドの普及が進む昨今、「XaaS」と総称されるさまざまなクラウドサービスが注目されています。本記事では、XaaSの概要や注目される理由、代表的なサービスの種類などについてご紹介します。併せて、XaaSを導入する際の注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
今注目のXaaSとは?
「XaaS」とは「X as a Service」の略で、システム構築用のコンピューター資源やソフトウェアなどをインターネット経由で提供するサービスの総称です。「SaaS」「IaaS」「PaaS」などをはじめ、「○aaS」と呼ばれるクラウドサービスは、これまでにたくさんの種類が登場しています。
「X」とは未知の値を示し、ほかのアルファベットを当てはめられるため、それら「〇aaS」系のクラウドサービスを総称して「XaaS」と呼ぶのです。なおXaaSの別称として、「すべての資源をクラウドサービスで賄う」という意味の「EaaS(Everything as a Service)」が使われることがあります。
XaaSが重要視されている理由
長らく続いたデフレーションの影響や、スマホ・インターネットなどの普及により、昨今ではモノを所有することを重視する「モノ消費」から、モノから得られる体験に価値を見出す「コト消費」へとシフトしてきています。これは個人だけの話に限らず、企業も例外ではありません。
従来、企業は高額なサーバー機器などを購入して自社で管理し、ITシステムを運用・利用していました。しかし昨今では、それらを購入(所有)する代わりに、クラウド上でサービスとして提供する「XaaS」を選ぶ企業が増えているのです。
XaaSであれば、サーバー機器などを購入する際の高額な初期コストが発生しません。サーバーやサーバーの稼働に必要なインフラ環境の運用管理は、事業者が行ってくれるため、企業側で人的リソースを割く必要もなく、浮いたリソースをコア業務に集中できます。
さらにXaaSであれば、自社の環境に合わせて、必要な機能だけをピックアップして契約・利用可能です。Microsoft 365をはじめ、日常業務を効率化するのに有効なクラウドサービスも数多く登場しており、企業がクラウド移行しやすい環境が整っているのです。
また、クラウドサービスならインターネット環境と端末さえあれば使えることから、企業がテレワークを導入する際の強い味方にもなります。従業員としても、クラウドサービスの導入によって柔軟な働き方が可能になるなど、メリットは大きいといえるでしょう。
これらの事情から、XaaSは多くの企業に支持・利用されています。
XaaSの代表的な4種類
クラウドサービスの普及により、XaaSの中でもIaaS・SaaS・PaaSといった種類がよく使われています。XaaSに該当するサービスは実に多く登場しており、ここで、そのすべてについては紹介できません。そこで以下では、XaaSのなかでもビジネス(製造・流通・金融など)に関連が深い代表的な4種類をご紹介します。
MaaS
「MaaS」と呼ばれるクラウドサービスには、以下に挙げる2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
Mobility as a Service
日本語で「サービスとしての移動」と訳します。電車・バス・タクシー・カーシェアなど、さまざまな移動手段を統合し、シンプルかつ適切に移動できるようにするサービスです。
たとえば、アプリで目的地を入力すると、そこまでの移動手段と料金が表示され、支払いまで完結できるサービスなどがあります。一般的に「MaaS」というときは、多くの場合、このMobility as a Serviceを指します。
Manufacturing as a Service
日本語で「サービスとしての製造」と訳します。文字通り、「製造」という行為を提供するサービスのことです。
昨今の製造業では、ただ商品を製造販売するだけでなく、アフターサービスや製品レンタルなどの付加価値も求められています。そうしたなかで、顧客へよりよい価値を提供する手段として、Manufacturing as a Serviceが注目されているのです。これはクラウド上の製造基盤を活用することで、従来までの製造工程にさまざまな改革をもたらします。
RaaS
「RaaS」と呼ばれるクラウドサービスにも、2種類のものが存在します。1つずつ見ていきましょう。
Robotics as a Service
日本語では「ロボットのサービス化」と訳します。昨今では、ロボットがさまざまな業種・シーンで活用されています。そうしたなかRobotics as a Serviceでは、ロボットとその制御システムをクラウドサービスとして提供します。利用者は、必要なときに必要なだけロボットを利用できるのです。
またRaaSでは、すでにサービスがクラウド上に用意されていることから、迅速にロボットを導入できるメリットもあります。従来、ロボットの導入に必要だった膨大な初期費用の投資も必要ありません。
Retail as a Service
日本語では「小売のサービス化」と訳します。小売業者がもつ店舗運営のノウハウ・データ・技術を、サービスとして提供するのがRetail as a Serviceです。
たとえば、メーカーがRetail as a Serviceを利用すれば、流通業者を通さずに製品販売ができます。また、RaaSによって商品の体験型ストアを展開し、消費者に広く商品を知ってもらうといった活用も可能です。
BaaS
「BaaS」には「Backend as a Service」や「Blockchain as a Service」など複数の種類がありますが、ここでは「Banking as a Service」をご紹介します。Banking as a Serviceとは、日本語では「銀行機能のサービス化」と訳されます。
本来、銀行以外の企業が融資・送金といった銀行サービスを直接提供することはありません。専門のノウハウや膨大なコストを要するうえに、法律的には銀行の営業免許も必要になるからです。しかしBanking as a Serviceを利用すれば、企業が自社サービスの一部として銀行機能を提供できます。そのうえで、自社サービスとしてローン融資などが行えるようになるわけです。
利用者側から見れば、企業の窓口で商品を買えるだけでなく、ローンの申し込みまで完結できます。これにより利用者の利便性が向上することから、企業としても商品販売のチャンスが広がるのです。
XaaS導入で注意すべきポイント
XaaSを導入する際は、新規事業を興すときと同様に、将来性やニーズにマッチしているかなどを検討する必要があります。とりわけ将来性に関していえば、各種XaaSは登場してまだ日が浅く、市場として拡大し始めた段階です。そのため、同業他社や同様のサービスを提供する他社との競争に敗北し、サービス終了に追い込まれることがないとも限りません。そうしたリスクを考慮し、1つのサービスに依存しすぎないよう、同様のサービスを併用するなどの対策が企業には求められます。
またXaaSは、インターネットを使ったサービスであることから、セキュリティに対する考慮も必要です。サービスがサイバー攻撃を受け、情報漏えいなどの損害を受ける可能性がないともいえません。提供元の事業者がしっかりしたセキュリティ対策をとっているか、事前に確認しておきましょう。
そのほか、XaaSの利用にあたっては、顧客情報をサービス側へ預ける必要が生じる可能性もあります。その場合、情報を他社へ預ける許諾を顧客にとっているかなどの確認も必要です。
これらの点をしっかりと押さえておけば、XaaS導入は企業の革新につながる光明となり得ます。XaaSは、今回ご紹介した以外にもさまざまな種類があるため、自社に合ったクラウドサービスがないか探してみてはいかがでしょうか。
まとめ
XaaSとは、さまざまなコンピューター資源・ソフトウェアを提供するクラウドサービスの総称です。ビジネスに役立つXaaSの種類としてはMaaSやRaaS、BaaSをはじめ、これまで数多く登場しています。一方、XaaSを適切に使うためには、サービスの将来性や事業者のセキュリティ対策などについて留意する必要があります。